■ 年末年始だぞ、双頭会全員集合!







ゴスッと音がして目の前のおれを襲おうとした男の顔が痛みらしき表情に歪んだ
俺の襟首を掴んでいた手が離れて打たれたらしい後頭部を押さえて振り返る
その時に見えた顔が、
ご忠告いただいたあの人だと霞がかる思考で理解した

「お前何やってんの?」
「暇つぶし」
「は?つかそれ俺が狙ってたんだけど?」
「だから先に手、出してみた」
「ぶっ殺すぞ、こら」

低い声が何やら不穏な言葉を吐いている
はいているんだろうなと言う変な感覚でそれを聞いていた
だんだんと思考が曖昧になってくる

「そこどけ葉月、俺が食う」
「・・・・お前、酒臭い」
「俺は生臭くない」
「言ってねーよ、そんな事」
「そう、聞こえたそしてお前は死臭がする」
「しねーよ」
「だったら加齢臭がs」
「しねーって!」

失礼かつ不名誉なことを言おうとした語尾が攫われた
でもさっきのキスじゃそんな臭いはしなかったなー
なんて暢気に考える
考えてむしろ良い匂いだったと思い当たる
思い当たったら確かめたくなって
せっかく離れた距離を近づけるために男の少し上にある首筋に鼻先を近づけた

「・・・・・・」
「あ、やっぱ良い匂い」
「何それ、俺それで遊びたい!」
「・・・・・殺されるぞ」
「大丈夫、やり返すから」
「そう言う問題じゃねー」

もう一つの声が聞こえて俺に手を伸ばそうとした腕を払い落とした
そしてなにやら嬉々としている男の襟首を掴んで押さえ込んでいる

「おら絢辻っテメー離れねーとべろちゅーかますぞ!」
「お前にキスされるくらいなら舌噛み切る」
「んじゃ噛み切れ、その前にさせろ」
「だからしねーよ、つーか誰だよコレに酒を飲ましたの」

ジタジタと暴れて自分にもとばっちりが来ようとしている状況に軽く眉間を顰めた絢辻と言う男が
ため息を吐きながらそう言うと、
押さえ込まれた男・・・・久保田があっさりと言ってくれた

「京介」
「「あの人か」」

葉月と言われた俺が未だ首筋に噛り付いている声が重なった
んーこの匂い好きかもー
何て3人の声を聞きながら思った

「厄介なことしてくれるぜアノ人は・・・・」
「前回もそうだったな・・・・そういえば」
「つーか毎回だr・・・・・ってオイ」

甘い匂いに思わずべろりと舌を這わした俺に、
葉月・・・さん?て言うべきか?
が、身を引いた

「何?」
「・・・・・さっきの嫌がり具合はどうした?」
「気が変わった・・・・アンタ良い匂いなんだもん」
「はぁ?」
「葉月ーーそれを俺によこせー!」

っぎゃーー!!って軽く悲鳴を上げながら俺に手を伸ばす久保田さん
それを軽く引き止めている絢辻、さん?は呆れて俺を見ている
何か変なことでもしたのだろうか?
分からない

「って言うか考えるのメンドイ」
「は?」
「独り言です」

良い匂いーーー
何か凄く良い気分になってくるから
その身体に擦り寄る

「何だそれ」
「俺に聞くな」
「遊ばせろっ遊ばせるんだ葉月!」
「落ち着けバカ」
「してられるかー!」

押さえ込んだ腕を振り切った久保田さんが葉月さんごと巻き込んで抱きついてくる
かと思うと徐に頬にチュッと音を立てて口付けられる
それを横目に視線を合わせた
俺の右目と久保田さんの左目の視線が重なる

「思ったより好みの顔してるっ可愛い!」
「目、腐ってますよ」
「コイツのは目じゃなくって脳から腐ってる」
「お前は人間が腐ってる」
「やったな葉月、全体的に腐ってるそうだ」
「絢辻、お前は神経が腐ってる」

4人が4人貶しあう
それぞれに嘲うかのように笑みを浮かべあった
くるりと反転して葉月と言う人物に背を預けながら俺を見詰める久保田に視線を向ける
あの時も思ったけど
目の前の人物はそうとうキレイな顔をしている
艶やかに鮮やかに笑った
笑いながら俺の首に腕を回す

「名前は?」
「・・・・・桂木」

耳にかかる髪を撫でるようにかき上げられて
くすぐったさに目を細める
久保田さんは何だかとても目を奪われる笑みを浮かべ続けている

「下は?」
「明治」
「菓子会社と一緒だったりするか?」
「どうでしょう?」

後ろの葉月さんが目の前に近づく久保田さんの顔をデコで押さえつけた
それに不満顔で見上げる

「タラシ、モード入ってる」
「今回ばかりは自分でスイッチ入れてみた」
「厄介なことすんな」
「これいいね、欲しいよ、すっごく」
「人のモンだろ」
「お前が言うなよ」

後ろの絢辻さんが葉月さんの後頭部を叩くと、
呆れたように久保田さんも続く

「そうだぞ、葉月ー俺だって人のモンなのにコトあるごとに襲ってきてんじゃんか」

それはとても嫌な人ですね
うん、
と言うか貴方もそうとうに同じことをしてるんじゃなかろうか?
俺だって認めたくはないけれど
誰かのモノだと言う印が背中にあるんですよ
見せたいけど露出狂ではないので見せないですけどね
まー頼まれれば見せるかもしれませんけどね

「お前は良いんだよそう簡単には抱かせてくれねーから」
「お前に突っ込まれるぐらいなら、絢辻につkk」
「しねーから心配スンナ」
「例えですから」
「例えでも俺の名前を出すな」

心底嫌そうに言われてる
それが不満らしい
例えじゃなかったのか?

「じゃーなんですか、久保田さんは俺に何がしたいんですか?」
「え?うーーんとねー・・・・・」
「聞くと碌な事いわねーぞ」
「しかも際限なく欲求を口にするぞ」

バカなこと口にするなと窘められる口調に、

「まー聞くだけはタダですから」

そう聞くだけならタダだ
やるかやらないかは俺が決められるはずだ
だぶん、きっと
しかしその俺の返しに

「「言うだけじゃ治まる相手じゃねーよ」」

ハモって返された
その言葉でまさかーとは思えなかった
だって凄く実感がこもられているから
どうやら早まったらしい
うん、

「後の祭り?」
「気が済むまでキスされまくれ」
「健闘を祈る」

無常にも突き放された

「まー取り敢えず」

ブツブツと何をするか一人呟いていた久保田さんがようやっと何をするのか一応だが決まったらしい
取り敢えずと言ってる辺りが欲求の多さを物語っている

「ちゅーだけさせろ」

べろりと唇を舐められて
目を見開けば、
あっと言う間に唇は重なった








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スイッチが入った明治と久保ちゃんです
次で漸く終わります・・・・!!