く ら げ













憂鬱な
むしろ面倒な接待
受けても受けなくてどっちでも構わないけれど、
余りのしつこさに
一度だけ会うことにした
とある建設会社の社長
お供に専務と美人な女性秘書
そこはかとなく取り入ろうとするのが分かる
そこはかとなくと言うか、
分かるって言うか、
見え見えすぎて笑う気すら起きない
そりゃ〜そうだろう、
かの双頭会でも一目置かれている【西園組】の組長と酌を交わしたと言えば、
箔が付くからな
けれども、
どんなに取り入ろうとしても無駄だ
それが意味を成さないことにすら分かりすぎて笑えない
酒を酌み交わし、
酌をしたくて堪らない相手は
ただ一人にしか意識を向けていない
この人物から想像もできないほどの甲斐甲斐しさ
美味い物を目の前に、
酒が減れば酌をしている

アナタ気づいていますか?
美人な秘書さんがと〜〜ってもウズウズって言うか
アナタに気に入ってもらおうと、
自分を見てもらおうとアピールしてるのを
ま〜
気づいていませんよね?
むしろ存在すら気づく所か気にしてすらいませんよね?

思わず苦笑が漏れた
分かり切っていたが、
まさかここまであからさまにするとは自分でも予想外だった

『やり過ぎたか・・・・・』

ビールのなみなみと注がれたコップに口を付けて、
軽く煽りながら先ほどのことを思い出す

暗くなり始めた料亭の玄関先で、
あまりにも可笑しなことを言う桂木に笑いと
少なからず欲情して
ふらつく身体を貪った
近頃働きすぎ身体は思ったよりも溜まってたようで、
からかうつもりで仕掛けた事に本気になってしまった
と言うか、
さすがあの人を虜にするだけあってか何だか、
桂木は何かを引き出すような、
煽るような奴だった

驚いて眼鏡のガラスの奥で見開く瞳
煽られ続けて濡れた唇と、
欲情を滲ませてる目を見ているだけでこのままなだれ込んでしまいたい気分にもなった

ま〜なっただけで、
本当にそうなるとはさすがの俺も命が惜しいのでできない
むしろ、
たったあれだけの事で何がくるか分かったモンじゃない
それほどにアノ人は桂木にご執心だ

しかも俺が手を出したのを知ってる様子だし、
むしろ見られていたようだし?
担いであの部屋に連れて行ったときのアノ人の恐ろしいほどに冷えた瞳に
久しぶりに震えが走った

何年ぶりかね〜?
昔ほど感情を表さなくなったアノ人に
昔よりもその心ウチに俺を受けて入れてるアノ人に
あんな目で見られたのは?
そんなの、
遠い昔の記憶すぎて覚えてすらない

綺麗に整いすぎた顔から笑みが消えると恐怖が芽生える
萎縮し、
震えが走る
怖いと
殺されると
そう思わされる瞳

そんなアノ人の暗い部分を久しぶりに垣間見て物思いに耽っていたら、
遠くでガシャンと派手な音が立つ
意識を浮上して隣に目をやれば
徳利の口を倒して減っていなかった中身を全部自分の足に零して濡れたズボンを見詰める西園と、
それを慌てて拭こうとする桂木
屈んだ頭の向こうで無言で何かを訴える西園の視線を捕らえる

『はいはいはいはい、分かりましたよ』

無言の訴えに苦笑しか浮かばず
心の中で愚痴をこぼしながら

「あ〜・・・・カツラギ、組長連れて向こうの部屋に行け、着替えて来い」

布巾で濡れた部分を拭く桂木の肩を軽く叩いて止めさせ、
音を聞きつけて静かに現れた仲居に目配せをする

「え、あ・・・・はい」

はっと頭を上げて立ち上がろうとするのを、
一歩早く西園が立ち上がり腕を引いてさっさと行ってしまった
あっと言う間に消えた西園と桂木の背中を見送って、
それを何も言えずにボー然と見ていた相手側に、
営業スマイル一つ

「申し訳ありませんね、この侘びは後ほど致しますので」

ニコリと微笑んでビール瓶を差し出せば、
漸く意識を取り戻した、
どっかの建設会社の社長は意識的に豪快に笑いながら空になりつつあったコップをこちらに向けてきた
見え見えだよ、
心の中で嘲り、
顔には笑みを張り付かせて
何やらかにやらと言ってるその話しに気前良く頷いてやる
となりの美人な秘書さんも、
いなくなってしまってはどーすることも出来ずに、
諦めと切り換え早く今度は俺に愛想と媚を振りまく
それに応えるように微笑んでやると、
軽く頬を染めた

『ま〜今日はこのまま消えておくか』

さっきのさっきだし、
きっと邪魔すれば今度はこんな押し付けだけでは済まされないだろうし
それに、
仕事のし過ぎは身体によくない
そして、
性欲のため過ぎも身体によくない
良くない良くない
ちょうど良く目の前には顔も身体つきも申し分ない美人な秘書
きっと程よく遊び慣れ、
そしてこういう場面で身体を開くのに慣れているであろう女
お膳立てされたのだ
見返りを返すつもりはなくとも貰っておいても良いだろう



『ご馳走様』





酒に口を付けながら


媚を押し続ける女に煽るように笑みを向けてやった









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スイマセン
何だか思ったよりも途切れなかったのでいったん切ります
明日、
続きをUPします

今回は斉藤さん目線
やはり部下もヒドイ男の代名詞でした(笑)
いや、
寧ろ斉藤さんはヒドイ男です
きっと好きになった人は痛い目というか
落ち着いたような恋愛はできないでしょうね〜
ぐふふふ・・・・・・・そういう人、
近頃けっこう好きさーvv