く ら げ












翌朝
ホテルの一室で目を覚ます
隣には意識を失って眠る昨日の女
ヤリ殺さない程度に性欲を発散させてもらった
そりゃ〜も〜
ココ何年ぶりかのスッキリでサッパリの爽快さ
久しぶりの爽快感ったら無いぐらいだ
コレもアレも昨夜の桂木のお陰かその桂木の所為なのか、
ヤればヤる程に治まり効かなくて悪いと思ってはいても女が気を失ってもヤらせて頂きました
ご馳走様です
久しぶりの快感をどーも

「ふぁ・・・・・・・っふ、」

ベッドから出て
大きく腕を伸ばして適度にダルイ身体を解す
何も纏わずにバスルームへ足を運んで、
軽くシャワーを浴びる
備え付けされたシェーバーで髭をそって、
歯を磨いて
うがいして
乱れた髪を水に濡れた手でなおす
昨日のままのワイシャツを羽織って
女を起こさずに出た

朝早いフロントで手続きを済ませ
一応女が残っていることを告げて了承した男に軽く金を握らせて外へと出る
空は晴れていて快晴
日の光が眩しい
一般的に休みな土曜
さすがに人は少ない
玄関先に控えていた迎えの車の前に男が立っていた

「おはようございます、若頭」
「あぁ・・・・・・組長は事務所か?」
「いえ、お戻りにはなっておりません」

その言葉に未だあそこにいるであろう事を知る
予想範囲内のことに頷いて
車へと乗り込む
ドアを閉めた男が運転席へと乗り込んだ

「そうか・・・・・何か代わったことはあるか?」
「いえ、特には」
「分かった、一度事務所へ戻れ」
「はい」

音も振動もなく走り出した車は通りを走り出した
朝の事務的な書類に目を通しながら、
一つ一つ報告を耳にする
戻った事務所には下っ端の組員が眠そうにしながら掃除をしていた
俺があらわれると慌ててシャキっとしながら勢い良く頭を下げて挨拶してきた

「おはようございます!」
「おはようございます、若頭!」

正直、
朝からは辛い大声
二日酔いが酷い日には遠慮ナシに頭をブッ叩いてるところだ
一人一人に笑って挨拶を返し、
中へ入る
奥のクローゼットに仕舞われている真新しいワイシャツの袋を出して着替える
ネクタイを軽く締めながら
いつもはダルそうに座っている西園の椅子に俺が座る
むしろ殆どの使用者は俺だ
置かれたパソコンを起動して
メールなど時事的なことをチェック
何事もなく時間は過ぎていった

軽く仕事をこなし昼近くなると携帯が着信を告げる
表示された名前は菅の文字
そう言えば姿を見なかった事に今頃になって気づく

「どうした?」
『あ〜おはよーございまっすぅ』
「そんな挨拶って時間でもねーぞ?」
『あ〜そうっすね〜〜・・・・って、そんな事じゃないですってー』

間延びした菅の声を聞きながらパソコンに目を通していると、
急に困ったような声音で話し始めた

『いやー・・・・今ですね、昨日のあの店に宮の若連れてったんですよー』
「・・・・・何、風女(かざめ)をか?」
『うぃっすー』

その言葉にキーを叩く手を止める
宮 風女 -みや かざめ-の顔を思い浮かべる
遊び人で有名な御爺が孫だろう少女を孕ませて産ませた子供
たった一人だけを認知して
跡取りと決めたあの彫師
そう、
一般人のましてやあのサラリーマンしかしたことありません
ってツラの桂木には無縁を手に職をしている
あの、風女を

「あの人か?」
『えぇ・・・・・俺おん出されましたけど、現在お絵かき実行中っす』
「・・・・・・直ぐ行く」
『そーしてくんさい』

ふざけたような菅の言葉を最後に電話を切る
ソファーの背もたれに用意されたジャケットを羽織って外へと出た
扉の前に先ほど運転してくれた男がコーヒー缶をを片手に立っていた

「お出かけですか?」
「あぁ」
「出ますか?」
「いや、キーを」
「ガレージ奥の黒のレクサスです」

差し出されたキーで言われた車に向かってロックを解除し乗り込んだ
近頃新しくした車は俺の急く気持ちを忠実に表すように走り出す
車通りの少ない道路を法定速度を無視して突っ走る
遅い車を煽り追い抜かし
信号を無視して
普段かかる時間を大幅に縮めて目的地へと到着した
車を止めると中から関係者が出てきてその男に鍵を渡す
断りもなく上がりこんで廊下を奥へ奥へと足音なく進んで行くと、
襖の前で所在無さげに菅が立っていた
見れば昨日と同じ出で立ち
俺の姿を見るや否やくしゃりと表情が歪む

「サイトウさ〜ん」
「組長は?」
「中です」

その菅の声に重なるように中からうめき声が聞こえた
聞き覚えのある声
奥で行われている事が本当であったのが知られる
軽く襖を叩いてから静かに引いた
部屋の中に身体を滑り込ませて下を視界に入れながら、
その脇でドコから持ってきたのかこの部屋にそぐわない椅子に足を組んで座る男へと顔を向ける

「おはようございます、組長」
「おはよーサイトウ」

西園は俺ににっこりと笑みを向けてきた
今のこの状態にきっと心から楽しさを感じているのだろう
その表情から汲み取れる
内心の気持ちを表に出さずに笑みを返した
そうして、
もう一人の男にも視線を向けた

「風女、久しぶりだな」
「おっす、しかし・・・・・相変わらず喰えねーツラしてんなサイトウ」
「お前ほどじゃないさ」

風女は俺に顔を見せずに組み敷いた男の背中に向けたまま、
口の端を吊り上げた
その視線がチラリと俺に向けられた

「で、どう言う事ですかねコレは?」
「ん、コレって?」
「この、今の現状ですよ」
「ふふふふ・・・・・・どうなんだろうね?」

ニコニコと苦しげに呻く桂木の顔を見下ろしながら、
西園は笑みを深くした

「カツラギは、コレを了承したのですか?」

分かりきった事を尋ねると、
よりいっそうに笑みを深くしながら

「まさか、俺が決めたんだよ」
「・・・・・そうでしょうね、カツラギは了承する筈がないでしょうから」
「そ〜だよね〜」
「・・・・・・・・」

他人事のように笑って頷いた
その顔を見詰めていると

「でも、この肌に浮かぶ蝶が見たかったんだよ」
「・・・・・・」
「俺と同じ色をしたあの綺麗な蝶が見たかったんだ」
「・・・・・・【西園組】を・・・・いえ、【双頭】を背負わせるのですか?」

蝶は双頭の人間であると言う証
そして、
決して抜け出すことを許されない契約の印
俺にも、
そして目の前で楽しげに笑う男の背にも描かれている蝶
幹部は必ず身体の何処かしらにその蝶が彫られている

「違うよ」
「・・・・・違うと言いますと?」

しかし、間髪入れずに西園が首を振った
訝しげに問い返せば

「身体に蝶を彫らせるのは、その人間が自分のものだと言う印なんだよ」

その言葉に軽く驚いた
初めて知った事実に
俺の表情に西園が目を細める

「赤は【西園】の色、黒は【蓮見】の色、青は【氷企】の色とね・・・・あぁ【威堂】は紫だ」
「そう・・・・・ですか、」
「そうだよ、だからお前も俺のモノだ」
「・・・・・・・」

西園の細めた瞳の奥の色合いが変わる
澄んだ色に
凍るように透き通ったものへと変貌する

「だから、蝶を彫らせる時は『宮』の人間を呼ぶんだよ」
「そう、専属でな・・・・・代々跡継ぎはその蝶の図柄を受け継ぐんだ」
「・・・・・・・・」

風女が初めて顔を上げて俺を見た
唯一認められた
『宮』の名前を受け継ぐ人間

「メイジはね・・・・・・逃がさない為に、この身体は俺の物だという証に」

屈んで足下へと手を伸ばして、
呻き続ける桂木の黒い髪をさらりと梳く

優しげに
愛しげに
目を細めて

「誰をも触れさせないために」




暗い言葉を
その正反対の声と表情で口にする男に



言い知れない震えが走った









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続きです
思った方へと進んではいないのですが、
コレもアリかな?
と微妙に納得いく(自分的に)内容に仕上がったと思います
思っただけであって、
そうだとは言い切れないのですけどね・・・・・!!

西園さんは
独占欲の塊だと
証明されたかと思います


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