く ら げ














バタン

車から降りた背中が早歩きで遠ざかって行くのを
少し呆然としたまま見送った
開いたドアとは反対側に背中を預け、
昼間の格好には程遠いままに

「・・・・・え?」

何が何だか分からなくて
身支度を整えるのも忘れて
そのまま固まる

中途半端に投げ出されたような感覚のダルイ身体を
漸く起き上がらせた頃には、
今までそこに座ってたはずの男の変わりに斉藤が膝をついて俺を見ていた

「動けるか?」
「え・・・・あ、はい」

俺が何もしないで斉藤を見上げていると、
慣れた手つきで俺の衣服を整え始める
それを遠い意識で見やりながらネクタイが結ばれた

「まぁ・・・・・気にするな、」
「はぁ」
「つーかお前ホントに・・・・・凄い奴だよ」

呆れとも称賛ともに似た苦笑いが斉藤の顔に広がり
車から引っ張り出された
薄暗くなった外は
仄明るい街灯に照らされて、
そこがどこか隠れ家的料亭だと知らしめる

「何が・・・・ですか?」

何がそんなに凄いと言うのか分からなくて、
気を抜けば震えてしまう足に力を入れて斉藤を見やれば、
火のないタバコを口に咥えたところだった

「・・・・・良くもまーあの人にアレだけ奉仕されてイかなかったな、と」
「っ・・・・!」
「腰、ダルイだろう?」
「・・・・・・・ぁっ」

スルリと撫でられて思わず声を漏らせば、
斉藤がニヤリといやらしく笑った

「俺は知らねーけど、噂には凄いって聞いてる・・・・・そんなあの人のテクに短時間ながらも我慢したよ、」
「我慢・・・・って、別に・・・・」
「別に?」
「いや・・・・あの、」

つい数分前の車の中での出来事を鮮明に思い出す
あの宣言通りに西園に咥えられた下半身
目的地には後十数分で着くといわれ、
その数十分の間に幾度となく上り詰める寸前の快感を施された
頭を抱え、
時には髪を強く握り上り詰めるその一瞬を堪えた
そのたびに西園は俺を上目に見上げ、
笑みを深くしながら愛撫を激しくし
けれど、
一度たりとも絶頂には届かずに
車は目的地に到着し、
斉藤の面白がるような『着きました』の声に、
無言で西園は俺から離れて
何事もなかったように髪をかき上げたかと思うとさっさと出て行ってしまったのだ
それが冒頭、
そこまで思い出して・・・・・
率直な意見が、

「・・・・・そこまで、言うほどかな・・・・っと?」
「・・・・・・・・」

それは、まー気持ち良かった
確かに気持ちよかった
久しぶりにしてもらった所為もあると思う
倒錯的なシチュエーションだった所為もあると思う
そして他人がいる前での行為だったせいもあると思う
その要素すべてがあったから・・・・こそ、
気持ち良かったと俺は思うのだ
イクかなっと、
イケるかなっと
でも・・・・・ただ、
ただそれだけ、

「ぶふっ!」
「!?」

呆気にとられていた間抜けな顔の斉藤が、
咥えていた火のないタバコを吹き飛ばすほど噴出し
身体を半分に折って笑い出した

「あっはっはっはっはっはっはっはっ!!!」
「さ、斉藤さん!?」

声の大きさと笑い声にびっくりして思わず軽く飛び上がる
その元凶を見れば
こんな閑静な場所で上げる笑い方ではない声で、
折った足をバシバシ叩きながら笑っていた
もう見事なくらいの大爆笑
思わず辺りを見渡して斉藤を窘めるもその笑いは収まることを知らず

「っは・・・・!あっはははっひは!」
「っちょ、ホントもーいい加減に笑うの止めてください!」
「いや、あっはっは!いや、うん、ははっは!」
「斉藤さん!」
「す、すまん・・・・けど、お前・・・・・はっはは・・・・ホント、最高だよっ」

目の端に浮かんだ涙を手の内側の付け根でぐりぐりと拭いながら
そんな言葉をはく
何が最高なのか、
訝しげに斉藤を見れば

「あの人・・・・・それ聞いたら落ち込むだけじゃスマねーよ、ましてやお前を落とそうと必死になってんのになぁ」
「はぁ?」

落ち込む?
落とす?
必死になる?
誰が?
何で?
誰を?

ますます意味が分からなくて眉間による皺が深くなる
その顔のままに
『あー久しぶりに笑った』と言いながら乱れた髪を整えていた斉藤が、
俺の腰を引いて至近距離で見つめてきた

「っちょ、なっ何ですか!?」
「お前、不感症かなんかか?」
「ち、違いますよ!」

そりゃー人よりはどちらかと言うと淡白な方ではあるけれど、
不感症でもましてや勃たないわけでもない
気持ち良い事は人並みには好きだ

「斉藤さん・・・・す、少し離れてくれませんか?」
「・・・・・・・」

あまりの近さに上半身だけ離れようと仰け反れば、
そのまま覆い被さるように、
俺の顔を覗きこんできて

「あの人じゃないけれど・・・・・俺もお前に興味が湧いたよ、」
「え?」
「早く落ちてしまえ、カツラギ」
「さ・・・・ぅんっ!」

あっと思った瞬間には、
斉藤の口が俺を飲み込むように口付けてきた
噛み付くように
全てを食らい尽くすように
西園の煽るだけ煽って落としていくようなものとは違い、
直接的な快楽を与えるキスで、
眩暈がするほど
今までの経験にはない、
意識が吹っ飛びそうなそれに

膝が落ちて
覆い被さる斉藤のスーツの肩にすがり付いて
受け入れさせられた




って言うか、

意識は




ブっ飛びました



→ 6





+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++

・・・・・・・・えっと・・・・・あは(汗)
何でかココで斉藤×桂木・・・・・・・
あは、
あはははは・・・・・


西園さ〜ん
貴方の部下が貴方のモノに手を出しちゃいましたよー!

ま、
こう言う事もあるってことで!


→サイトTOPへ