く ら げ











背中が痛い

目が覚めて
起き上がった一番の感想

背中が痛い
ただそれだけ、
どこかで刺青を彫って痛みを感じないとか
今の技術ではそれほど痛みはないとか聞いたけど
あれは嘘だと
身をもって実感
・・・・まぁ
人それぞれだとも聞いていたのもあるけれど
ぼんやりとする頭で
辺りを見渡した
薄明るい部屋
明け方だと分かる

あれから丸一日がすぎたのだろう・・・・か?
それともそれ以上か、
混濁しているらしい意識では
どうしても確実な認識ができない

「咽・・・・かわ、いた・・・・」

口の中がからからとしている
ずっと布を入れられて
叫べずに声を出していた所為だろう
あと、
何も口にしていなかった所為もあるだろう
ぼんやりする頭で、
もう一度辺りを見渡す
視線が水差しを見つける
手を伸ばしても届かないけれど
這って数歩動けば届く場所

「・・・・・・・・」

けれど、
今の俺にはその数歩も辛い
だってこうやって座ってるだけでも辛いのだから
動こう何てもっての外だ
けれど
一度水の存在を認めてしまえば
のどの渇きは増す一方で
動けば手の届くそれに渇望してしまう

「・・・・・・・・は・・・・」

一度息を吸って
大きく吐き出す
それだけでものどは痛い
口は渇く
背中の痛みは治まらない

「・・・・・っふ、」

息を止めて前に屈んで手を付いた
全体重が腕にかかる
カクリと力が抜けそうになって倒れこむのを踏ん張って留まる
力を込めると
皮膚が引きつって
痛みが増した

「っい・・・・・」

眉をしかめて、
どうにかその痛みがすぎるのを待つ
数分とも思える長さ
けれど実際は数十秒ともかかってないその時間
やり過ごし一歩一歩と
ゆっくり前に進む
傍から見れば馬鹿みたいな俺の動き
赤子じゃあるまいし
ハイハイだなんて
誰にも見られたくない
けれどこうでもしないと動けなくって
そうまでして水が飲みたくって
ゆっくりと前に進む
やっと手を伸ばせば届く所まできた
力の入らない腕を動かし
水差しに触れる
けれど・・・・・
両手で支えるのが精一杯の己の重さ
片手でなんて支えるはずも無く
水差し諸共その場へ倒れこんだ

がしゃっ

倒れる音
割れる音
零れる音

それら総てを痛みの遠くで聞きながら
畳の上に転がる

「メイジ?」

からりと開かれた戸
聞きたくない声が
己を痛めつけた最たる本人が立っていた
足を戸も立てずに近づいて
抱き起こされる

「何してるの、危ないよ」

触れてほしくなくって
触られたくなくって
抗おうにも力は出ず
拒否の言葉を言おうにも声は出ず

「・・・・取り敢えず、寝かせるから」

けれど、
目の前の人間いはそれは空気と言うか気配と言うか
俺のその意思を感じ取って
困ったように
けれど有無を言わさずに
抱えられてうつ伏せに寝かされる

「水が飲みたかった?」

聞かれても答えられず
いや、むいろ答えたくも無いけれど
答えは無くとも分かること
零れたそれをそのままに一度部屋を出て
また戻ってきた

「水よりこっちのが良いだろうから」

そう言って口元に近づかれたそれ
柑橘系の香り
属に言うスポーツ飲料が乾ききった唇に付けられる

「飲んで」

ゆっくりと起こされて
コップには言ったそれを飲めと寄せられる
水への渇望は相手の拒否を上回り
それを傾けた
けれど
口は思ったよりも動かせず
力は出ず
口に入る前にボタボタと零れ
自分の胸やら足やらを濡らす

「・・・・・・・ま、仕方ないか」

そんな呟きとともにコップは取り上げられ
その手を追うように向けた先の
綺麗な顔を睨みつける

「我慢して」

傲慢とも取れる言葉
誰の所為だ
そう言う意味を込めて力の入らない身体を鞭打って
視線に意思を込めた
睨まれた相手、
西園はフワリと笑みを浮かべる
場違いなほど優しげに
睨みつける俺に笑みを浮かべたまま視線を合わせ
大きくコップの中の物を口に含み
俺に唇を合わせてきた

「っ」

驚いて顎を引くけれど
後頭部を押さえ込まれて引き寄せられる
コップを離した指で顎を押され口を開けば、
口の中に少し温くなった水分が流し込まれた
乾いた口にそれは少々に痛みとともに潤いを与え
夢中でそれを飲み込んだ

「っは・・・・・・」
「まだ、いる?」
「・・・・い、る・・・・」

問いかけに頷いて、
黒いシャツの襟を引き寄せる
また口に含んだそれを押し付けられ
ゴクリと何度も何度も飲み込んだ
与えられる水は、
体中をめぐり
意識を取り戻させる
はっきりとしだした思考で
閉じていた目蓋を開く

「・・・・・・・・」

目の前には強い視線
近い距離で俺を見詰める西園の顔
飲み込むはずの物がなくなったのにまだ唇は合わさり
薄く開いた俺の中にそろりと舌が入り込むんでいた

「っふ・・・・う、」

何度も何度も舌を吸われて噛まれて
上顎を、
歯を、
咽を舐められて
別の意味で霞み始める脳を厭らしく響く音が埋め尽くす
眇めて見詰める先には
いまだに強い視線
ふっと離された唇
息継ぎに大きく息を吸えば
また合わさって
先ほどと同じ水分とともに何かが口の中に流し込まれた
舌がそれを押し込んできて
眉を顰めて相手を見詰める

「・・・・・っく、」

ゴクリと飲み込んで
口を離す

「・・・・なに、」
「鎮静剤」

簡潔な言葉が返ってくる
その言葉の意味を考えて、認識する

「少しは痛みが和らぐよ、あとは炎症止めも混じり」
「・・・・・・・」
「プラス睡眠剤入り」

次々と言葉が並べられて
意味を一つ一つ理解するのに時間をかけた
さらりと項の少し上のほうに寄せられた手が
梳くように髪を撫で、
俺を落ち着かせるようにする
段々と眠気が襲ってきて
とろりと目蓋が落ちた

「もう少し眠っておいで」

耳元で囁かれながら舌が這い
耳朶が食まれる
その少しばかりの快感の中で
意識は段々と眠りの縁へと落ちていく

「おやすみ・・・・メイジ」





小さくそう囁かれて
ぷつりと
意識は途絶えた







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とってもお久しぶりの【くらげ】ですっ
暗いかな、
少し?ね・・・・・!
次はどう動かしていこうかなーーー
なんて考えながら打っています

う〜〜む、
ちょうど今ですね、綺香の『三日月』を聞きながら打っているんですけど
このメロディーと言うか歌詞の意味とかじゃなくて、
勝手に【くらげ】のイメージ・・・・かな、
あと、加藤ミリヤ loves m-flo の『ONE DAY 〜夜空 Remix〜』とかね、
イヤ・・・ちょうど聞いてるときに打ってるからなんですけどねー
特に【ONE DAY】は好きな曲だしさ(苦笑)
良い曲です、m-floのアルバムのが良い
お勧め!