05:宣誓









「ふぅ・・・・・あぁ・・・・・あふ・・・・・ねみー」

人目憚らず、デッカイ欠伸を零す。
そんな自分を目にした通行人は、
目を見張らしたり、
くすくすと笑ったり、
感心しめさなかったり、
そんな感じ。
俺?
俺は何だっていんだよ、
中途半端じゃなかったらなー
中途半端なくしゃみと欠伸ほど嫌いなものはない。
あの何ともいえない不快感と、失敗間を味わいたくないのだ。
よって、
邪魔さへされなかったら、
万事おーけー

携帯を見る、
午後8時10分前、
駅前通り、
人、人、人の洪水、
学生、サラリーマン、OL、フリーター
と、まー何でもござれな職業の男と女が溢れ返る。
見知った顔があれば声を掛けられ、
逆ナン目的の女の声をそれとなく交わして目的地へ、

「あ、榛原さん!うぃーっす!」

ガードレールにの所でたむろってる奴らが俺の姿を認めて声を掛けてきた。
見たことあるのがチラホラ、
【アルゴ】常連者もチラホラ、

「おぅ」
「珍しいですねーこんな時間に歩いてるなんて!」
「あー」

そん中の一人が近づいてきた言われる、
まさしくその通りで、

「帰って寝てたらこんな時間だったんだよ」
「あははっらしいっすね!」
「うっせー・・・・・お前らは?どーすんだ、一緒に行くか?」
「お供しま〜す!カズっヤスシっ行くぞ!」

まだガードレール脇に残ってた中の2人に声を掛けて、
その三人を従えて目的地へ、

「つーか、聞きました?」
「あ?」

火は付けずに煙草を咥えて、
隣を歩く・・・・・たしか名前はオダ?とか言う奴が俺を見上げてくる。

「【レッド】狩りしてるアレ、今度は上の奴やっちゃったらしいっすよ?」
「・・・・・・・・・誰?」
「たしか・・・・・なんつったっけ?」

オダは後ろを歩く男を振り返って聞くと、
ニットを被った奴が、

「あーーーー・・・・・マエダ?だっけか?」
「マエジマ」

もう一人の金パをツンツンに立てた奴が訂正する。
オダはうんうん頷きながら、

「そう、マエジママエジマ!そのマエジマを全治2ヶ月で病院送りにしちゃったらしいっすよー」
「・・・・・ほーん・・・・・」

マエジマは聞いたことがある。
俺よりは2個上。
近くの工業の頭張ってるとか言われてる・・・・・・って言うか今時に頭とかって
どうかと思う、以前にそんな制度が生きてること自体に疑問を抱く。
そのマエジマって言ったら、
何でも柔道部で有段者でケンカっつったら強い?
なんて言われちゃってる・・・・・・

「ありえねーだろ・・・・・」

思い出す。
2.3日前の華奢な男を。
そんな男が、あのマエジマを?

「ありえねー」
「イヤ、マジなんですって!」
「あーあー・・・・お前の事じゃないって」

信じてくださいよー!
とかぶーたれるオダを小突いて黙らせて、
目に掛かった前髪をかき上げる。

「でもホント、ありえねーっちゃありえねーっすよね?」
「・・・・・ん?」

後ろの金パがそう言う。

「俺、実は見たんですよ【レッド狩り】してる奴が、まさしくしてるその場面」
「「マジで!?」」

俺以外の2人が食いつく。

「これ大マジ、たまたまだったんだけど、女と歩いてる時に公園でやったるのを丁度ね、」
「うっそ!どうだった?どんな奴だった!?」
「あー・・・・・あんま見えなかった、つーか連れいたもんだからジッとは見てなかったけど・・・・・・」

食いつく2人に気圧されながら金パが先を続けるのを、
俺が代わりに口にする。

「そんな事、出来そーにないくらいに小っさくて華奢な奴だったろ?」
「「え・・・??」」
「・・・・・・榛原さんも見たんすか?」
「まーな」

煙草を咥えなおして、
先を歩く。
やはりこの前のは見間違いではなかったらしい、

「でも・・・・スゲー怖かった、俺・・・・コエーとかマジに思った」
「ヤスシ・・・・・」
「オイオイ・・・・・マジかよ・・・・・ビビッたんか?」
「ビビったとか、マジでそんなんじゃねーんだって!お前も見たら分かるって、すげーコエーよ・・・・アレ・・・・」

ヤスシが心なしか顔を青褪めさせて言うモンで、
他の2人がそれ以上何も言えずに黙ってしまった。

「まーな・・・・そうかもしんねーな・・・・・お前らもそいつに出くわしたら、興味本位で近づくな」
「榛原さん・・・・・」
「あー・・・ワリー先に行ってて、俺コンビによってくわ」
「あ、じゃー・・・・」

目に入って、
咥えた煙草が最後の一本だったのを思い出して、
ドアに手をかけながらそう言うと、
3人は軽く頭を下げながら歩いて行った。

レジの前のケースからラッキーを2個とって店員に渡す、
メンドイことに女で、
何か話したげにチラチラと俺に視線を送ってくる。
ウザイので合わすことなく目線は窓の外、
人通りに目を向ける、
そこに見えた赤、
噂の【レッド】が10数人群れを作ってゾロゾロと歩くのが見えた、

「おつりですぅ」
「・・・・・・」

無言でそれを受け取って、
わざとらしく触れてくる手に眉を顰めながら煙草をポケットにしまって、
その後を追った、
イヤ・・・・・・

その後を追う、
パーカーを目深に被った華奢な男を追った。




夜の公園、
人がいないかと言うワケじゃなく、
大通りの横に面してるソコは人も多くいた、
いちゃこくカップルやら、
騒ぐなり上がり中坊、
酔っ払ったオッサン、
外人のネーちゃん

ソコを【レッド】が威嚇しながら歩いて行く、
それに気付いた何人かはそそくさと逃げて行く、
気付かないモノは標的だ、
今日はたむろってた中坊で、
十数人で5人を囲んでいる、

それに近づく黒いパーカーの男、
真っ直ぐに赤い服に近づく、
赤い服の男が気付いて、
何かいった次の瞬間には地に伏せていた。
走ってい近づいた時にはすでに半数は潰されている、

「オイっ!!」

駆け寄って、
パーカー男の肩を掴んだ・・・・・筈が・・・・・・

「っぐぁ!」

目の前には、
公園の木と、星のない夜空と、ネオン
それと、
腹の鈍痛と首の圧迫

「・・・・・・・・・・・・何、誰?」
「っぐ・・・・・ぅ・・・・・!」

苦しさに呻きながら視線を横ズラすと、
先ほどまでの全員が、地に伏せって呻き声を上げていた、
中坊は逃げたらしい。
それを確認して、
もう一度、俺を押さえつける男を見る。
俺の半分もないような細い腕でどんだけの力があるのか、
その手を振り払えずに押さえ込まれる。

顔は・・・・・見えない、
暗い中で、外灯も意味を成さず、
フードの中の表情は伺えなかった、
けれど声は・・・・少し高めの声、
ただ感情は一切篭っていない、

「・・・・・・・ねぇ・・・・・アンタ誰?アンタもあの赤いのと同じ?」
「ぐ、ぅ・・・・・・」
「言え・・・・誰?」
「っの・・・ま、にっ・・・・・は、っせよ・・・・・!」

謀ったように血管の上に指を食い込ませ、
親指は喉仏を圧迫している、
それで何か言えと言うのがおかしいだろうが!

そうおぼろげになりつつある意識の中で目線で訴えると、
男は少しだけ力を抜く、
とたん送り込まれてくる空気に咽りながらも、おもいっきり吸い込む。

「げっほ・・・・げほ!」
「・・・・・・・・・で、誰よ?」
「おめ、こそ・・・・何だよ!」
「俺?俺は・・・・・・名乗るほどのモノでもない、むしろ空気と思え」
「空気が空気を奪いやがんのかっ」
「そう、もったいなから吸うな、このノビてんは余計吸わせたくないね、」
「・・・・・・・・・」

しらっとドギツイことを口にして、
起き上がりかけた奴に手加減なく踵を落としてもう一度地に沈めた、

「何、俺を邪魔する人?」
「・・・・・あ?」
「邪魔するんだったら、潰すよ?これらと関係なくっても潰すよ?」
「・・・・・・・・・・・・・・」

そんな言葉と共に、
パーカーのフードを外して顔を曝け出す。
天然であろう焦げ茶色の髪と、
色白の肌、
まだ幼さを残すキレイな顔、
けれど、
冷たい瞳、

「邪魔は許さない、もし・・・・・俺の邪魔をするなら、取り敢えずしばらく起き上がれないくらいに潰すから、ね?」

冷たい瞳のまま笑って、
俺の上からどく、

「お前らも・・・・・・聞いてんだろ?」

呻くそいつらを見下ろして、

「一人一人・・・・・・順番に潰してくからな・・・・・・・覚悟しとけよ?」



それが初めての接点




06