04:調和









ドゥッっと鈍い音ともに何か重いものが叩きつけられる音がする。
それは動いて、
暖かく、
口から赤い液体を吐き出す、
何か言葉を零している、

耳障りな音、



助けて

痛い

怖い




赦して

赦して

赦して








赦せるなんてできやしない!!






「・・・・・・・・」

目の前には、痙攣するだけで動かなくなった物体。
最後に突っ伏した男の胸倉を掴んで、無理矢理立たせて目と目を見合わせる。
そこにあるのは、
自分に対しての絶対的な恐怖。
ガチガチと音を立てて震える歯が何とも滑稽で、
神経を苛立たせる。
その音を止めたたくて、壁に身体を押し付けて胸倉にあった手で喉を押すと、その音が止んだ。
代わりに空気が不自然に漏れる音がする。

気に入らない、
耳障り、
イラつかせる

こんなイラつかせるだけの相手で時間を無駄にしたくない。
何度となくした質問を口にした。

「お前らのボスって・・・・誰?」

でも、決まって・・・・

「し、しらなっ・・・・・!」

そんな声だけ。
前に聞いたのは『俺は関係ない』『レッドじゃない』『助けて』だった・・・気がする。
曖昧なのは、下らなさ過ぎて覚えるのも面倒だったから。
だから、今回も同じ。
収穫はない。
また次も同じことを繰り返すだけ。
だって赤いねずみは潰しても潰しても、どこからともなく湧いているから。

「はぁ・・・・・・・」

溜息が零れる。
小さく息を吐いたところで、何か視線を感じた。
自分を見ている視線の先に顔を向ければ、こちらを驚いた表情で見詰める九つの目。
今までとは感じが違う。

ジッと見返す。

背が高いのが2人、
そのうちの一人に乗っかってる小さい奴。
人目で手ごたえが有りそうには感じた。
こんな集団で行動して暴力を振るう奴らとは全然違うだろう。
強さを勘違いしていない。
視線を受けて固まってはいるが・・・・・



何か分かるかな?



そう心内で呟いて、
知らず笑みが浮かんだ。

そしてら目の前の奴も転がった奴にも興味も価値もなくなる。
握っていた男のシャツを離して落とし、
路地の奥へと足を進める。
まだ視線は俺に向いてる。
ネオンが届かない暗闇に入ったところで、その視線は逸らされた。
それと同時に、後ろのポケットに入れておいあた携帯を開く。

時刻は、真夜中昼を後5分で迎える時刻。

「・・・・・・今日は帰ろっかな・・・・・」

少しだけ襲ってきた眠気に、小さく欠伸をして。
目深に被っていたキャップを外す。
変に形づいた髪をぐしゃぐしゃとかき混ぜて、大きく伸びをした。



月は見えない、
星も見えない、


見えるのは、
空を覆い隠すほど高いビルと、
淡い光を遮る毒々しいほどのネオンの光、


そんな自分とは無縁だったものを、
路地裏の暗がりから眺める。
馴染めない色、
馴染めない空気、

早く、
家に帰りたくなる。

「あ〜・・・・宿題やってなかった・・・・・メンドイな・・・・」

まいっか・・・・薊か兎沙希に写させてもらおう。
そう呟いて、
人通りの多い大通りに出て歩き出した。



自分の心と環境の調和など、

こんな所にありはしない。

矛盾だらけの夜の街、

何が楽しくて、

こんな耳障りな場所を好むのか・・・・・・


何を好きこのんでこの街に出ると言うのか・・・・




今の和泉には


理解できなかった。



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