圧倒








そんな言葉だけが、頭の中でデデンと鎮座なさっている。
何をどう言ったらいいのか分からない。
言葉が少ないとかの問題でもなさそうだ。
だって!!
天蓋付きのベッドなんてアタクシ生まれて15年経ちますが、一度も見た事ありませんのことよ!?
てか先程まで寝てましたから!
現在はど真ん中で正座です。
アタクシがあと、10人くらいは寝そべれそうです。
無駄に広いような気がします・・・・・寝るまでに寝る場所探しそう。
まぁ・・・・取り敢えず、
スイマセンが誰でも良いので今の状況の説明してくれませんかいの?

ぐるりと見渡す限り、品の良い(良すぎる?)家具や調度品が嫌味にならない配置で置かれている。
茶色を基調としているようで壁紙や椅子今現在座っているベッド、
カーテンに絨毯にその他細々とその色でまとめられている。
もう、芸術的センスだ。
自分のモノトーン基調の部屋なんかと比べたら比較にならない。
寧ろする方がおかしいと怒られそうである。

「自分の部屋を思うと・・・・味気なくな〜い??」

誰に言うまでもなく呟く。
ってか、突っ込み待ちだ。
そこである重大なことを忘れているような気がして、腕を組んで胡坐をかいて首を傾げる。
物足りない何か・・・・
何か・・・物足りない・・・・

「・・・・ん?」

腕を組んだ手を見る。
腕を見るというより、下を見る。

「・・・・・・・」

物足りない・・・・・??

「・・・・・・・あり?」

無いに等しいが、取り敢えずあったものがない・・・・・・・

組んでいた腕を外して、ぺたりと自分の両手を胸に当てる。
薄っぺらな胸。
関東平野も真っ青だ!と、良く州先輩に言われたものである・・・・
それでも、ふにゃりとした柔らかさは気を失うちょっと前まではあった。
あった・・・・はずだ。
いや、女の子なら大きさの比はあれど、必ずあるもののはず・・・・が!!

「ないーーーーーーーーーーーーーーーーっ!?」

制服のシャツの中から自分の胸を見る。
お子様下着のお世話になっている自分のお胸が見えない・・・・ましてやへそが見える・・・・・!!

「My胸っ何処へ行かれた!?カムバック!!」

ぎょあーーーーーーーー!
っと意味不明な悲鳴を上げて【Oh!ジーザス!!】なポーズ。
はっ!と、とある事に気付いて・・・・・

「じじじじ・・・・自分の身体!」

そう言い聞かせながら・・・・・スカートをめくって見る。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

取り敢えず、捲るのを止めて下ろす。
いや、待てそんな筈はない。
見間違い見間違い!!
もう一度捲る。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

う〜〜〜〜んと・・・・・・
これって、あれですよね?
女の子には縁のない、

「こんもりとした小丘??」

アタシってこんなの付いてたっけか??
女の子ですよ?
歴史とした、純粋な生物学的上、間違うことなく女の子!!
女の子でした!!
それが、それが、それが、それがっそーーーれーーーが!!

「何でついてんのよーーーー!?!?」

先ほどの比にならないくらいの大声を上げて、絶叫&もがく!
な〜〜んて、数分間暴れていたら、
一人で大騒ぎをしている自分の目の前に黒い物体いきなり現れた。

『・・・・・・・・・・・・・・・・』
「・・・・・・・・・・・・・・・・わお、ゴージャス系美形発見!」

ついつい見入って、ぴたりと動きを止める。
美人さん慣れはしていたつもりでしたが、外人の美人さんは初めてお目にかかる。
こちらを見つめている人に、人差し指さして大変失礼な行動をとってしまった。
しかし、目の前のゴージャスさんはそんな事気になさらないのかニコニコしながら口を開いた。

『******??』
「・・・・・・・は?」

聞き取れなかったのかと思い、耳に手を当てて古典的な聞き返し方をしてしまった自分から座布団一枚持って行ってやっちゃって下さい。
そんな心の中で突っ込みを入れつつ、美形さんを見る。

『*****、***、****??』
「・・・・・・つーーか、何語??」

日本語もうまく語れないと大変好評なアタクシに、英語ふっ飛ばしてドイツ圏ですか?イタリア圏?それともボンジュールなフランス語圏ですか??

「いずれにせよ、じゃぱにーずおんりーおーけー??」

めっさくそ日本語発音で言うと、目の前の美人さんは苦笑を浮かべるように小さく肩をすくめて笑った。
わお、苦笑いでも絵になりますの〜美人さんだと。
歪めてるって言うより、表情を崩してるって言った方が似合う顔だ。
まして、どこも歪んだ所なんてないのだし。

『*****??』
「分かりません。」
『****?』
「ソレも分かりません。」
『*****』
「違うと思います。」

微妙に会話成立?
いや、受け答えになってるかと言われればなってないだろうけど。

『******』
「〜〜〜〜〜〜〜っ!!」

もうっ
もう、もう、もう、も〜〜〜〜〜〜〜〜う!!

「何が何だか分からないーーーーーー!!!」

混乱の極みについに達して、癇癪を起こした子供のようにジタジタと手を振って暴れる。

「日本語喋って!!ここドコ!?つーかあたしの胸は!?どこ隠したのよ!!」

ひどい八つ当たりだ。
むしろ隠せるもんなら、隠し方を教わりたい。

「アンタいったいだっ―――!!」
『***』
『!?』

いきなり後頭部おもいっくそ、角で殴られる。
わ〜〜いお星様〜〜〜〜〜★★



ばたり



「エドーーーーーーー!!」
「煩かったから、黙らしただけだ。」
「だっだからってそんな本の角で殴ることないだろう!?」
「安心しろ、殴った事によって弱そうな頭がよくなるかもしれねーぞ?」

そう言ってエドガーが見せた本の背表紙に書かれた文字は、語学に関する本だった。
だから余計にである!
そんな硬く重く分厚い本で殴られて、良い訳がない。
リージェイドの心配をよそに、殴った本人はその本を開いてそ知らぬ顔だ。

「で、どこで拾ってきたんだ?お母さん認めませんよ?」
「誰が母だ・・・・」
「アラ嫌だ、反抗期かしらこの子。」
「・・・・・・・・・女神の奥神殿の近くだ。」

ヒヨヒヨと頭の周りにお星様が飛んでそうな顔で気を失う目の前の子供の髪を撫でる。
見た目の色に反して、とてつもなく柔らかい髪をしている。
指の間からすり抜けるように落ちる髪をもう一度手にする。
そんなリージェイドの行動を、文字を追う目の端に捉えながらエドガーが問いかける。

「どーするんだ?」
「何が?」
「何がってお前な・・・・・得体の知れないガキを、どーする他に何を聞くってんだよ。」
「あぁ・・・・この子の事か、言わなくても分かると思ってたんだが?」
「分かってて聞いてんだよ、俺の考えが間違いだと願ってな。」

少しイラついた声。
しかし、それに反してリージェイドの声は嬉しげに弾む。

「間違うはずないだろう、エド。俺とお前の仲じゃないか?」
「縁を切りたくなってきた。」

はぁ・・・・と、息を吐いて本を閉じる。

「何があっても俺は知らないからな?」
「何もないさ。」




だって、この子は・・・・・・・




月の王子の導きの下



太陽の女神の裡で見つけたのだから