■ 虹色サイクロン-------4












寂しいなんて気持ち

もう

とっくの昔に

消えて

泡になって

溶けて

失くなってしまった













名前を呼ばれた
ココに来るきっかけになった声じゃないけれど
僕の名前を誰かが呼んだ
振り返ると、
記憶の何かに引っかかる、
そんな僕と同じくらいの子が立っていた

「・・・・・・・」
「・・・・・・・」
「・・・・・どっかで会った事ある?」
「一昔前の落とし文句か何か?」
「つーかどこの世界でもその落とし文句って通用すんの!?」
「あったからには通用するんじゃない?」
「わお!」

新たなる発見!!
っていうかこの人、
僕の言葉にちゃんと打ち返してきたよ!!

「すっげ!!」
「ありがとうv」
「いやじゃなくて、いやソレも大事なんだけど!」
「な〜に?」
「お宅様は僕とどこかでお会いしたのかなと?」
「・・・・どうして?」
「あ〜いや〜〜ん〜〜何か、記憶の片隅に小骨のように引っかかるような?」
「気になるよね、それ」
「めっさ!こう、もどかしいっちゅーか、なんちゅーか、スッキリしねーって言うか、むずむずする!」
「分かるよ、そのやるせなさ」
「じゃ教えて!!」
「い・やv」
「・・・・・・・・・」

何この人!!
新たな敵!?
こう、微妙なところに微妙な感じでカチンとくるよ!?
しかも極上に笑ってるし!!

「・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・」
「で、何か御用で?」
「たっぷり」
「たっぷり!?」
「えぇたっぷりと・・・・・・(ニヤ)」
「っひーーーーーーーーーーーー(汗)!!」

何!?
何、何、何、何だこの人ーーーーー!?
こえーーーーっ超コワイっすよーーーーーー!

僕が背筋に悪寒を走らせて跳び下がれば、
よりいっそう笑みは深くなって、

「ま、お遊びはこのくらいしておかないと、ジジ達が癇癪起こしそうだから止めておくね?」
「・・・・・・はぁ・・・・」

周りをぐるりと見渡してから、
その人はニッコリと笑った

しかも、
この人お遊びとか言いやがったし、
僕で遊んでたみたいだしっ

「じぇら、あまりかかわるとよくないぞ」
「そうじゃこんなよわいあたまじゃ、じぇらにもわるいのがうつるぞえ?」
「そうじゃそうじゃあまりこどもとかかわるな」
「つーかよ、さっきから人を捕まえて頭弱い弱いって・・・・さすがの有梨須ちんもキレまっせ?」

カチーンどころか、ブチーンて血管キレまっせ!?
僕、脱ぐと凄いんでってなるぞ!?
って脱いだって絶壁だって言いたいんだろ!!?

「ちきっしょーー・・・・世の中巨乳だけが天下取れんじゃねーんじゃぼけぇぇ」
「また低次元なことで落ち込まないで」
「て、低次元っておっしゃいまして!?アンタ低次元って!!」
「はいはい」
「うわ〜〜〜〜〜んっこの人僕んこと苛めるーーーーーー!」

何かエドよりヤな感じ!!
ぐっさり心に突き刺さるーーーーー!!

「まぁまぁ落ち着いて、絶壁は嘆いたって絶壁のままだし、今となっては必要ないんだし結果オーライでしょ、ね?」
「・・・・・・・え、何ソレ、フォロー?フォローなの?」
「一応?」
「しかも疑問系だし!全然フォローになってねーし!!」

うわーーーーーん!!
何度も絶壁って言われたーーーーーー!!

「僕のハートブレイクな傷みなんて分かってもらえなんいだーーー!」
「うん、ちょっとね」
「はっきり言われたし!!」
「ま、その話しは置いといて本題と言うかお願いがあるの」

そんなごみをゴミ箱に入れるような動作で物事置かれると、
さすがの僕も泣きたいかな
・・・・・ぐすっ・・・・・

「・・・・・・・なんざましょ?」
「アリスは動物好き?」
「好きですよ?自慢じゃございませんが、ココに来る前の家じゃー猫5匹の犬2匹でキツネとリスと兎とイグアナとブルーアイスドラゴンとかいましたけど?」
「・・・・いすぎじゃない?」
「文句は僕のママンまでお願い申しあげます、しかも猫以外は全部拾ってくるか、貰ってくるかです」

さすがの僕もですね?
『拾ってきた』とか言われて、ブルーアイスドラゴンの赤ちゃん連れてこられた日にゃー
疑いもしましたよ?
ドコの世界にソレが捨てられているんだっちゅーの!
ねぇ!?

「あ、あとカメ子さんとカメ男くんね?御年いくつになられているのか甚だ疑問ではありますが、」

勿論ママンが拾ってきたんですけどね?
いや、明らかに獲ってきた、だろうな〜
泥だらけだったし?
さすが僕のママンだよね??

「・・・・相変わらずだね・・・・」

自分のママンの荒行事について思いを馳せていれば、
目の前の小さな呟きを聞き零してしまった

「んえ?」
「何でもないよ」

聞き返しても笑って誤魔化される
何なんだこの人?

「そう、なら大丈夫だね?」
「だ、大丈夫?大丈夫って何が?」
「嫌いじゃなければ良いってことだよ」
「ふ、ふ〜〜ん・・・・でどんな動物なの?」
「見れば分かるけど、まだ起きないの」
「起きない?」
「そう・・・・・・・まだ、」

先ほどまでの勢いが一瞬だけ潜められ、
少し悲しみを浮かべた瞳が眇められ笑みが模られる

「それに、アリスとなら仲良くなれるよ」
「そう?」
「うん、だって面倒見は良いし忍耐力もあるし、」
「・・・・・僕ってば幼稚園児扱いですか?」
「年が行ってる分、性質が今のほうが悪いけどね」
「・・・・・・・」

うーーーわーーー
さり気に嫌味言いやがったし!!
言い返そうとしたら、

「信じてあげてね?いつまでも仲良くしてあげてね?一緒にいてあげて、何があっても・・・・・」
「・・・・・・?」
「ソレだけを約束して欲しい」
「そんな事、何で言われなきゃなんないの?」
「・・・・・・・」

何を言ってんだか僕には理解で来ませんよ?
何でそんなこと言われなきゃならないのか?
意味分からない

「言われてそんな事するものじゃないと思うんだけど、違う?」
「・・・・・・・」
「僕は僕がそう思ったらそれは何にも変えられないモノだもの、言われなくたって分かってるよ」
「・・・・・そう・・・・・」
「そうですーそんなことまで僕を幼稚園児扱いだなんて・・・・・」

カチーンってきますよ、カチーンって!!
むしろブチーン?みたいな?
けっけっけ、
いいんだもんね〜〜

「やっぱりアリスだね・・・・・うん、そうだ君の言うとおりだ・・・・ジジ達も文句は無いね?」

呆気に取られていたような表情が、
満面の笑みに変わって上に声を張り上げる
そうすると先ほど僕を頭の弱い子扱いしていたジジィ共が、
渋々みたいな感じで頷いていた

「しかたあるまい・・・・じぇらはもうきめたのであろう?」
「決めたよ、って言うか決まってたと言うべきだね」
「ならわしらはしたがうまでじゃ」
「じぇらがいうならな」

ザワザワと声が広がって、
ジジィ達だけではない小さな声も同意を示すように微かに聞こえた

っぎゃ!
幽霊屋敷じゃーーーーーー!!
コエーーーーーー!!

「アリス、君のその心の強さを見込んでこの子を大切にしてね?」
「・・・・・?」

両手に包んでいたソレを僕の前に差し出される
手の広を上にして揃えれば、
その上に黒い小さなモノがふわりと下ろされた
小さくて、
軽くて、
モコモコとした黒い物体
触れたそこから暖かさを伝えてきて、
それがちゃんと生きているものだと解かった

「まだ眠っているんだ、もう少ししたら目覚めるから・・・・そのときに名前も聞いてね?」
「付けるんじゃなくって?」
「うん」
「だって動物なんでしょ?」
「そうだけど、アリスなら聞こえると思うから・・・・だからその声を聞いてその名前を聞いて」
「??」
「ね?」
「いいよ、分かった」

頷いてソレを目の高さに上げる
黒い生き物越しに見えた目の前の人物がふわりと笑って、
それがやっぱりどこかで見たことがあって
首を傾げれば、

「そろそろお別れだね・・・・・」
「ん?」
「戻ったらさ・・・・・・リージェイドにヨロシクと伝えて?」
「リズに?」
「うん、大丈夫だよって・・・・・・そう、伝えて」
「・・・・解かった、って言うか名前を教えて?」

先ほどの事があったから、
教えてくれないのかと思ったけれど、

「ルーンジェライドだよ」
「るーん?」
「はは・・・・・君はそう呼ぶの?」
「え?」
「時間だ、また遊びにおいで」

意味不明なことを言いながら、
声が遠のいていく
って言うか、
薄れてる!?

「ルーン!?」
「バイバイ、アリスまた遊ぼうね?」

その声を最後に、
当たり一帯に強い光が破裂して、
咄嗟に目を閉じる
一瞬後に目を開いたら、
目の前には何でだかリズの顔

「うお!?」
「っ!!」

驚いて声を上げれば、
リズも驚いてビクッと身体を震わした

「ア、リス・・・・・??」
「え、え、え〜〜〜〜???」

バッと辺りをぐるぐる見渡したら、
見知った場所と見知った顔がいっぱいあった

「アリス様!??」
「おーーわーーニトさんだ〜〜って言うか糞エドまでいやがるし」
「こっちのセリフだ・・・・って言うか今までお前何してたんだ!!?」
「え、は?何が?」
「アリス様ーーーーーーー!!」
「のわっ!!」

大号泣のニトさんが僕にタックルしてきた
あまりの勢いに座っていたリズの執務机から落っこちそうになるのをどうにか堪えて目の前のリズに説明を請うと、
苦笑を浮かべながら

「実はねアリス」
「ん?」
「あの時、この部屋から去って丸三日経ってるんだよ?」
「ふ〜〜ん・・・・・・・・・・え゛っ!?」
「うわ〜〜〜〜〜〜んっアリス様ーーーーーご、ご、ごぶじでーーーー!!」

ぎゅーぎゅー抱きついて泣き叫ぶニトさん
よく見ると涙で濡れた目の下にはクマができていた

え、うそ・・・・マジで??
そんなに時間が・・・・・!!
うっそーーーーー!!!??!

「何でだ・・・・??」
「何でだろうね?」
「ね?」
「ところで手に何を持ってるんだい?」
「あ、これ?」

手に力を入れないようにしていたのを目ざとく見つけたリズが、
覗き込みながら聞いてきた
聞かれるがままソレを開いてみせる

「?」
「あのね、いた場所でくれたの」
「人形、か何か?」
「ううん、生き物だって、でも今はまだ眠ったままなんだってさ」
「そうか・・・・・・・で、楽しかったかい?」

咎めることもせずに、
にっこり笑うリズに・・・・・誰かと重なって、
首を傾げながら、
でも大きく頷いた

「楽しかったよ、ちょっと色々とムカつくこと言われ捲くったけどさ」
「ムカつくこと?」
「そーーー!人の事、面と向かって頭弱い弱いって・・・・失礼しちゃうよね!?」
「当たってるじゃねーかよ・・・・おら、ニト泣いてないで起きろ」
「何じゃとうらーーーーー!」
「うっさ・・・・・・・ほら、ニト!」
「うぅ・・・・ア゛リ゛ズじゃま゛ーーーーっグスっ」

ニトさん・・・・さすがにですね?
涙と鼻水まみれでは擦り寄って欲しくないかな?
むしろ擦り付けられたくないかな?
うん。
ちょっと申しワケ無いけど、
迷惑かな、うん。

そう思いながら、
エドに引き摺られて涙を拭われてる姿を横目に見ながら、
目の前でやんわり笑ってるリズを見詰める

「あ」
「ん?」
「あのね、そこで会った人に伝言頼まれたんだ」
「・・・・・誰かに会ったのか?」
「会った」
「・・・・・・・」
「リズ?」

僕の言葉に、
リズの顔に一瞬だけ緊張が走ったのが解かった

「何か・・・・危険な事は?」
「何もないよ、さっき言ったムカつくことぐらいしか」
「そうか・・・なら・・・・・・」
「??」
「それで、伝言と言うのは?」
「うん、リズにね『ヨロシク』だって、あと『大丈夫だよ』だって・・・・・伝えてって言われた」

僕の言葉を聞くたびに
リズの表情は固まり、
強張っていく

「・・・・・・名は・・・・名は聞いたのか?」
「聞いた・・・・・けど、リズ?大丈夫?」
「あ?あ、あぁ・・・・・大丈夫だよ、アリス。何て言っていたの?」
「教えてくんないかと思ったけど、あっさり教えてくれたよ、【ルーンジェライド】って言うんだっ・・・・・・・て、」

その名前を口にすると、
リズは辛そうに瞳を閉じた
そして大きく息をつくと・・・・・・徐に僕のお腹に抱きついてくる

「り、ず?」
「・・・・・・・・少しだけ・・・・・このままでいさせて、アリス・・・・・」

その小さな呟きに、
何も言えずにされるがままにした、
微かに息をつく以外に何も動きの無いリズ、
背中ではエドとニトが場所もわきまえずに何だか言い争っていたけど、
それよりもリズの方が気になって、




そのキレイな髪をずっと撫で続けた