■ 虹色サイクロン−−− 1















ソレは突然現れた













暗い暗い

そして冷たい何もない世界に

光をまとって

嵐の如く

駆けてきて

わだかまった全てのモノを吹き飛ばして

笑って

手を伸ばす


この何もない世界から


全てを奪われた


私に


手を差し伸べて


微笑を向けて




「さぁっ行こう!!」





笑ってくれる





笑って・・・・・・


















「お待ちなさーーーーーーーーーーーーーーーーーーーい!!」
「逃げてるものに対して『待て』と言われて待つ人がいたら見てみたいと思いま〜〜す!!」
「屁理屈言わないで下さい!!」
「やっだも〜〜〜ん!!」

今日も昨日と同じく城を駆け回る僕!
後ろでは怒りに顔を染めて追いかけてくるニトさん!

頑張って!!

「どこへ行くと言うんですか!?やるべき事が今の貴方にはたくさんあるんですよ!!」
「それはまた明日やるってー!」
「そう言いながら昨日も消えたのはどこの誰ですか!?」
「僕でしたーーー!」

てへっ
って、顔だけ後ろに向けて笑えば・・・・・・
ぎゅんっと走るスピードを上げたニト

やっべ!!

「お待ちなさい!!」
「やだーーーー!!僕は今からリズの所に行くんだーーーー!!」

僕も走るスピードを上げて目的地に向かう!
でも行き先は行き当たりばったり!
だめじゃん!!

「だったら何故そこで左に曲がろうとするんですか!?執務室はそっちじゃなくて右です!!」
「おっと!」

言われて慌てて方向転換する、僕。
律儀に間違いを正してくるニト。

「上じゃやりませんっ下!!あーーーー違うでしょうっそっちじゃなくて真っ直ぐです!曲がらない!!」

と、何度も何度も間違いを正すニトさん・・・・・・
結構・・・・馬鹿でしょう??

「その真っ直ぐ行った突き当りの部屋が執務室です!!」

きっと分かってないよね?
自分で自分の首絞めてるって??
僕に道教えてどーすんのさ!

言われたように突き当たった部屋に飛び込んで鍵を閉めた。

どんどんっどんっどんっどん!!

「開けなさーーーーーーいっっ!!!」
「だからー閉めた人に『開けろ』と言われて開ける奴が存在しないっしょー」

ふーと一息ついて前を見れば、大きな窓を背に配置された机に向かって座ったリズが目を見開いて僕を見ていた。
隣には憎きエドガーではな別の秘書官数人が同じように固まって僕を見ている。

その気持ち分かりますぜ〜
びっくりしますわなー

「アリス・・・・・??」
「ちゃーーーっすリズ!!」

元気に手を突き出して僕なりのご挨拶をしてみせる。
手をグッパーしてね。

そんな僕の様子に苦笑して、傍にいた人たちを下がらせて二人きりにしてくれた。
外では意地でもドアを開けようとニトがギャースカと騒いでドアノブを回している。
ガチャガチャと煩いが、このさい無視してリズに駆け寄る。

「またニトを困らせているな?」
「イヤー心外だな〜〜僕との追いかけっこでストレス発散してもらってるんだよ?」

抱きついてきた僕を受け止めて、軽々と抱き上げては膝に乗せる。
近くなった顔に笑みが浮かんでいて、嬉しくなって僕も笑った。

「で、今日はドコへ行こうと言うんだい?そんなに荷物持って?」
「う〜〜ん・・・・行き先は教えて差し上げたいんですが〜止められそうなので教えては上げませ〜ん」
「・・・・・ソレを聞いたら、普通は止めるとは思わないか?」
「逃げるも〜ん」
「後を付けさすよ?」
「撒けますよ?」
「・・・・・・・・・・・」
「それに〜〜そんな事、言っててもリズはしないって知ってるも〜ん」

なはは〜〜と笑えば、呆れたような疲れたような溜息をこぼして笑った。
笑いながら僕の髪を梳いてくる。

「分かってるね?」
「もちろんさ〜!!」
「でも・・・・あまり危険なことはしないようにな?」
「できるだけねー」
「城の外に行くわけじゃないのだろう?」
「中ですよー」
「じゃーいいよ、楽しんでおいで」
「やいやいさーーーー!!」

元気よく返事を返して、リズの膝の上から飛び降りる。

「そうだ・・・・・これをしていなさい」
「ん?」

呼び止められて、振り返ればリズが首にしていたモノが僕にかけられた。
黒いチェーンに赤と青の小さな石が付いたモノで、

「ん、何?」
「お守り、何かあったら石を握って?私がすぐに迎えに行けるから」
「・・・・・・・・・・分かった〜」
「よし・・・・・じゃー行ってらっしゃい」
「行ってきまーーす!!」


石を手の平に乗せて見詰めてから、
パッと顔を上げると、
また、
リズが髪を梳きながら撫でてきて、

送ってくれる言葉に

笑みを返して、

別の扉から外へと飛び出した