■ エメラルドのは魔法使い ■











こんな時に限ってまた騙された!!













駆け抜けろ僕!
駆け抜けろ青春!!
未来はどっちだ!?
むしろ、行き着きたい部屋はどっちだ!?
だだだだだだだだっだだだだっだ!!
っと酷い足音を立てて、広く長くどこまでも続くような廊下を駆け抜ける。
隣に併走してこの前運動会した相手、てか相手?である幽霊さんがいる!

「お願いだからこっち向きながら付いて来ないでくんさい!!」

怖いですから!!
恐ろしすぎですから!!
そう懇願を込めて叫ぶが、幽霊さんは聞いてか聞かずか・・・・またもやにた〜りと笑った。

「うおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉおおっ(恐怖)!!」

怖いよ〜〜〜〜〜〜ぅ!!
お願いだから助けてよ〜!!
何でこんな時に限って誰も廊下を歩いてないのさ!!?
広すぎる廊下は不気味なほど無人である。

「助けて〜〜!!」
「楽しそうね、アリス?」

叫んで通り過ぎようとした窓枠に、黒いワンピースを着た美少女が座っていた。

キキーーーーーーーっ!!
靴底に悲鳴を上げさせて急ブレーキ。
振り返ってその少女の顔を見ると、先日知り合ったばかりの。

「リリカちゅわ〜〜〜〜ん!!」

恥も外聞もかなぐり捨ててリリカに抱きつく。

「ココどこですかよ〜〜??」
「また迷子なの?」
「わたとか言わんといて下さい!」
「はいはい・・・・・・お前は引きなさい。」

泣いて縋りつく僕に苦笑を漏らし、ふいに目線を上げてフヨフヨ浮いていた幽霊さんに強く言い放つと、それはしゅんと消えてなくなった。
およ?
とか、思ってリリカを見上げると笑みを向けられた。

「アリス、顔ぐちゃぐちゃよ?」
「汁で溢れてると言ってくれませんかいの?」
「そっちのがイヤじゃない、普通?」

ぐちゃぐちゃしてるとか言われると、顔が不細工に聞こえるんですもの!
特に顔がいい人に言われると、余計そう思うので!

「で、どこに戻りたいの?」
「・・・・・どこだろう?分かんない!!」

そう言えば、ドコに集まるって言ってたっけ!?
何だか説明されたけど、覚えてないやっ・・・・・非常にマズクなかろうか?
いや、マズイって自分。

「アリス・・・・・」
「いや、待って思い出すから!!」

ドコって言ったっけ?
え〜っと・・・・え〜〜〜っと・・・・え〜〜〜〜〜っと・・・・・・!!

「スイマセン、分かりません・・・・・」
「もう・・・・いいわ、分かってるから。」
「え、分かってんの?」
「分かるわよ。」

当然じゃない?
何て感じに言われても、え〜?ですよ??
え、リリカちゅわんって超能力少女?エスパー??あのエスパー?てか、何のエスパーさ??
いや、違うか・・・・死神さんか!!

「そうね〜・・・・・ちょっと目を瞑って?」
「やいやいさ〜!」

言われるがまま目を瞑ると、額に何かが触れた・・・・それがリリカちゅわんの指先だと思った瞬間に足元が浮かんだような感覚に捕らわれる。
うわ!
とか思った次の瞬間には、脚は地面に付いた。

「目を開けて良いわ。」
「・・・・・・・・おぉっ!!」

目を開けば、目的地である部屋の前のドアじゃありませんか!!

「うお〜〜リリカちゅわんありがとう!!」
「いいえ・・・・・さ、早く入んなさいな。」
「おう!じゃまた後で遊ぼうね〜!」

手を振ってドアを開ける。
遅刻者がそろ〜〜りと、気付かれないように入るかのように・・・・てか、こんな所でもオイラって遅刻ですか?
ちょいと、情けないでやんす・・・・ぐすん。
忍び足で部屋に入って顔を上げると、そこには仁王立ちのニトさん・・・・
わ〜お怒った顔も素敵ですよ?

「アリス様・・・・・」
「スイマセン、寝坊しました。」

思わず何時もの癖で遅刻したときのこと言ってしまった!
通じるわけ無いのに・・・・恥かしい!!

「すすすっすすいません・・・・」
「アナタって人は。」

ニトのちょっと呆れた声に項垂れていると、くすくすと小さな笑い声を聞いた。
あれ・・・・??
何か、聞いたことある声だ。
そう思って項垂れた顔を上げると、ソファーが並ぶその一角に見知った顔があった。

「・・・・・・・」
「お前は相変わらずだな?」

ウソ・・・・ウソ!!

「洲先輩っ!!」

会えないかもしれないと思っていた人が、笑ってそこにいた。
椅子から立ち上がって、近づいてくるその前に駆け出して抱きつく。

「洲先輩っ洲先輩〜〜〜〜!!」
「元気そうで良かった・・・・心配したぞ?」
「っふ・・・・ぅえ〜〜〜」

ぎゅううっと抱きつくと、その倍の力で抱きすくめられた。
約半月振りの再会でも、見知らぬ土地での半月は相当な時間に感じる。
嬉しさのあまり溢れてくる涙を洲先輩の服に押し付ける。
いつもだったら怒るのに今回ばかりは、髪を撫でて宥めてくる。

「怪我とかしてないな?」
「うんっ」
「変わったこともないな?」
「ん!」
「なら、イイ・・・・・・アリスが世話になりましたね。」
「いや・・・・・アナタが、アリスの言っていた人なんですね?」

リズが驚いたように目を見開いて、僕たちを見ている。
その横では、エドもちょっと固まっていた。

「シュウ」
「あぁ・・・そうだったな。アリス、紹介しよう、今俺が世話になっている人だ。」

そう言われ示された手の先に、灰色の長い髪を無造作に横に流した淡いグリーンの瞳を持つ超美形がいた。
よった眉が気難しいそうだけど、

「あ、もしかして人間嫌いの賢者って人?」
「そう。」
「・・・・・・」

僕の言葉に、否定も無く即答で頷く洲先輩。
その受け答えに、目の前の人は相好を崩す。

「クラリス・エンティアムだ・・・・君の事はシュウから聞いている。」
「何て言われてるか、想像できます。」
「まさしく、アリスの想像通りに話して聞かせているさ。」

どうせ良いこと言ってないでしょ!!
面白おかしく言ってんでしょ!?
洲先輩のこれまた即答に今度は僕が食って掛かる。

「ちょっとは良いじょと言ってるんでしょうね!?」
「ちょっとね?」
「ちょっとって?」
「ん〜・・・・・これくらい。」

そういって示された指先には隙間は無い。

「先輩、隙間ないから!!」
「あ、ホントだ。」
「んきーーーーーーー!」
「あはははっは〜」

高い洲先輩の笑い声が響く。







やっと会えた!

あ、そうだ・・・・・
州先輩に言わなきゃ!
男の子になっちゃったって!!