それだけで幸せ









外は雪が降りそうとまで言われるほど冷えた空気
窓は室内の温度差を思わせるように、
薄く白く曇っている

それを
部屋の暖かな場所から
ソファーに身を沈めて横目でチラリ、

部屋は薄着でも暖かく、
グレーのパーカーにブラックのジーンズだけ
手には携帯、


ここは?


ここは、
とある高級億ションの最上階のリヴィング
どんだけ広いんだって位に広い広い部屋、
その、
広い部屋の窓際に置かれたチョコレート色のソファーに寝そべって、
携帯を弄っている
弄っているって言うか・・・・・・

【マジ寒いんですけどーーーー!!
何なわけ!?
何だって言うわけ (`Д´) ムキー!
何でこんな寒空に俺一人立ってなきゃなんないわけ!?】

そんなメールが届く
相手は勿論、
尚で・・・・・

【ご苦労なこって、
って言うか今日はデートって言ってなかったか?】

送れば、
速攻で返事が返ってくる

【えぇ!デートですわよ!
デートなんです!!なーんーだーけーど!!
来ないんだよーーー 。゜゜(´□`。)°゜。ワーン!!
寒いよー来ないよームカつくんだよーーー 。・゚゚ '゜(*/□\*) '゜゚゚・。 ウワァーン!!】

・・・・・・泣き文字多すぎだよ尚・・・・

【家近いだろ?
何で待ち合わせなんかしてんだよ?
いつもは迎えだろ?】

一区画しか違わないはずだ、
何してんだか?

【いやさー何でか知んねーけどぉ
待ち合わせのデートがしたいとか言いやがって・・・
今に至るわけよ (ノ_-;)ハア…】

成る程・・・・・
あいつの考えそうなことだわ。
尚の相手の顔を思い出して苦笑が浮かぶ

【一色の考えそうなことだよ ナクナヨ (o・_・)ノ”(ノ_<。)】

【うぅ・・・・・・って言うかたまちゃんは何してんの (・・。)ん?】

【俺?俺は〜〜・・・・・・】

言って良いものか?
まー・・・・
いっかー

【彼氏ん家でぬくぬく暖かく寛いでます ☆^(o≧▽゚)oニパッ】

ニパって何だ俺、
キモイぞ!

【何だとーーーーー!!
俺が寒い思いしてんのにぬくぬくだと ヾ(。`Д´。)ノ彡☆ブーブーッ!!!?】

お?
普通な反応だ。
何か言ってくると思ったのにな〜
ちょっと期待はずれだ。

【こんな寒い日に外に出るお前が悪い ヾ(-д-;)ぉぃぉぃ】

そう送ったら、
返事が来なくなった。

「お、やっと来たのかな?」

何て口に出したら、
今度は携帯が着信を告げた。
勿論、相手は

「・・・・・・何だよ?」
『何だよじゃありませんよーーーーー!!ちょっちょっとたまちゃんっ今のマジ!?マジでマジもん!?』

マジでマジもん?
何だそりゃ?

「そうだけど?」
『っかーーーー!水クセーじゃねーかよっ何で言ってくんなかったの!?』
「えーー聞かれなかったし?」
「いや、普通は聞かないでしょう!!」

そう言うもんか?
・・・・そう言うもんか・・・・そうだな・・・・

「あはっは」
『誤魔化さないの!えーーーでも、マジで?マジでたまちゃんも彼氏もちなのかーーーへーーーvv』
「・・・・尚、何でお前そんなに楽しそうなの?」
『そんな事なかとですよー!って言うかどんな人!?年上とは聞いてたけど!!』
「えーー・・・・良いじゃん別に、そんな事ー」
『聞かせろよこのヤロー!!』

耳元で怒鳴るな・・・・
うるせーなー・・・・

「じゃー・・・・知りたいこと二者選択、AとBどっちが知りたい?」
『何で選択よ!?』
「いーじゃん、別に・・・・・・で、どっち?」
『えーーー?じゃーーーーーBで!』
「Bはね・・・・都内の高級億ションの最上階に住んじゃうような人と付き合ってます。」

くるんと仰向けになって、
高い天井と、
横目にもう一度、
夜になったら夜景が素晴らしい景色となる窓の外に目をやると、

『なっ何それ!?う、え、えーーーーーーー!!?!??!』

大混乱ですなー
何言ってるのかわからないよ??

『さっき、彼氏ん家っていってたよね!?じゃ、今まさにその億ションにいるの!?』
「いるよー最上階だから景色が素晴らしいねぇ」
『ぎょあーーーー!何々!?たまちゃんもセレブの仲間入り!?』
「・・・・・いや、別に仲間にはなっては・・・・」
『なってるザマスわよ!!』

ザマス・・・・
てか、よくもまー人通りの多い場所でそんなにテンション高く声張り上げてられるなー
恥かしくないのか、尚?

『で、でで!その彼氏さんは一緒なの!?』
「いやー今はいない」
『・・・・何でさ!?』
「何でって・・・・・朝一で一度会社に行った、お昼には帰ってくるとは言ってたけど」

時計を見れば、
言ってた通りに帰ってくるのならそろそろだろうな・・・・
そう思いながらもう一度くるりと反転する
ふかふかのチョコレート色のソファーは俺のお気に入りだ
肌触りの良いそこに顎をつける
目の前には見下ろす位置にあるビル街

「一色はまだなの?」
『こにゃいのー』
「・・・・・・・寂しい?」
『そりゃ勿論ですわー』

本音を包み隠さず言える尚はいつも凄いと思う
思ったことを素直に言える、
まー言い過ぎるのも玉に瑕だとは良く言われてるけど、
でも尚のそんな所が凄い

『たまちゃんはどうよ?』
「俺?」
『そーちゃんと会いたいって言ったから今そこにいるんでしょ?』
「んー・・・・・・うん」
『ちゃんと言えよー?』
「んーーーー・・・・・せっかく来たのに一人にするなんて、薄情者だよね?」
『ホントよね!?俺なんてこんな寒空に待たされてるし!?』

ホントだよ、
せっかく来たのに、
仕事って・・・・・
そう思ったらちょっと面白くなくなった、

「一人にしないでよ」
「それはスミマセンでした」
「・・・・・・・・・・・・」

え?

「・・・・・・・・」
『たまちゃん?』

耳元の尚とは違う
低く落ち着いた声が背後で聞こえた、
でも、

『お〜〜〜い、たまちゃ〜〜ん?』

まだ帰ってくるには早い、
黙ってしまった俺を心配するかのように、
耳元では尚が何度も俺の名前を呼んでいる

「早く帰ってきてみるものですね?」
「・・・・・・・おー・・・・すけ、さん・・・・・??」
「はい、ただ今帰りました」

恐る恐る振り返れば、
背後にいつの間に近寄ったのか、
背中を覆い被さるかのようにした格好で俺を見下ろしてくる欧丞さんの顔

『・・・・・たまちゃん、誰かいるの?』
「何で・・・・だって、まだ・・・・時間・・・・・・」
『たまちゃん?』
「はい、だってせっかく環さんが来てくださってるのに仕事なんてしてられませんからね」
「・・・・・・」

俺の手から携帯をゆっくりと取り上げて、
まだ繋がったままのそれに耳を当て

「申し訳ありませんが、切らせていただきます」
『!!』

ピっと言う音ともに電源ごと切られる
それを目を見開いて見ていれば、
笑った顔が近づいてきて、
振り返らせただけの俺の唇に軽く触れてきた

「寂しかったですか?」
「・・・・・・」
「環さん?」

肩を引かれて、
仰向けにさせられて、
真上には、
凄く嬉しそうで、
楽しそうな欧丞さんの顔

何も言えずに見上げてる俺に
啄ばむように何度も何度も口づけてくる

「・・・・っん」

それがいつの間にか長く触れ合わせるようになり、
深くなりに、
熱を孕むような激しいものになっていく、

「・・・・・・・んぁ・・・・・・」
「やった会えた・・・・・」

キスの合間にそんな言葉が唇の上で呟かれ、
吐息と一緒に
そんな欧丞さんの気持ちも伝わってきて、
俺も、
素直になれるような感じがして、
ゆっくり首に腕を回して、

「さびし・・・・かった、よ・・・・・」
「・・・・・環」
「すご、く・・・・さびし、かった」



でも、
今は・・・・・・・



この腕の届く所に貴方がいるから



寂しかったけれど、




でも、
それ以上に幸せで




寂しくない