■ 脱出不可能

















好きになるきっかけなんて
簡単なもので、
人それぞれ
その人の意外なところを見ただけで恋が芽生えちゃったりするものだ

それは認めたくないと思っても簡単に抗えるものではなくって、
見て見ない振りしたって
心の中でパンク寸前になるまで想いが膨れ上がる

認めざる負えなくなって、
自覚したら
押さえきれなくなって
想いが、
どんどん、どんどん、どんどんと
溢れてくる
蓋なんてそんなモノで仕舞い込めなくなる

好きで好きで
好きすぎる







でも、
想いは一方通行って事もある






始業ベルがつい先ほど鳴り終わって、
廊下を歩く者なんて俺以外なくなってしまった

俺の名は、水守 玄
こんな昔の人みたいな男前の漢字で【しずか】なんて女みたいな名前、
でも自分的には結構気に入ってたりする
小学生の頃はよく名前でからかわれたけれど、
高校生になってからは恵まれたクラスメートのお陰か、
名前でからかわれることもなく、
寧ろ信頼されて委員長なんて役職まで持っている、
根っからの真面目人間だと思っているから別に押し付けられたとかも思ってはいない、
そんな真面目な優等生(自分で言うなって感じだけど、仕方ない)な俺が授業しているはずなのに廊下で歩いているかと言うと、
答えは簡単、
担任にいらん仕事を頼まれて遅くなっただけだ、
そんな事を思いながら足早に移動教室の場であるドアを開けた、

ガラガラガラっ

「スイマセン、遅くなりました」

声を掛けながら中に入ると、
先生がチョークを持ったまま俺を見た

「どうした?」
「品川先生の用事で少し遅くなりました」
「そうか・・・・空いてる席に座れ」
「はい」

自分のペースで授業を進め、
妨害されることはなかったら注意も何もしないこの先生は、
黒板に向かったら終わるまで向かいっぱなしだ

席と席の合間を縫って後ろから二番目の席に着く
前のクラスメートが振り返った

属に言う問題児です!
と前面に出し捲くってる男
茶髪でピアス開けに開けて制服を着崩した違反だらけ
そいつは俺に向かって人懐っこい笑みを浮かべた


「ごっくろうさん!」
「どうも・・・・・そうだ中山、数学の補習今日受けろってさ」
「うっそ、マジ?」
「大マジ、品川先生が太田先生に伝言預かったんだってさ」

教科書を開きながらそう言うと、
目の前の違反男、もとい中山は心底嫌な顔を作る

「ぎぃえーーー・・・・最悪!」
「ま、赤点取った君が悪いね」
「うっわーー水守ちょーツメテー!!」
「当たり前の事だよ、中山君」
「清水の言うとおりだよ中山君」

もう一人がニヤニヤ笑って振り返り、
俺に笑いかけた
それに同調するようにふざけた口調を真似ると、
中山は机に突っ伏した

「大田のババーぜってー一日じゃ終わらねープリント出しやがんだもんよ!」
「君の頭の出来を悔やむことだね」
「てめー清水!お前にだけは言われたくねーぞ!!」

まさしくその通りだ
清水も人の事言えた義理ではない成績、
しかし、

「しかしだね、赤点は取ってないのだよ」
「中山の負け、観念して補習受けなよ」
「水守・・・・冷たい」
「うっしっしっし」

ぐしっと泣きまねをしながら前を向いた中山に苦笑を零して、
その寂しさ漂う背中に、

「明日の朝、手伝ってあげるから」
「・・・・さんきゅー」
「いいえ」

振り返られることなく言われて、
清水と2人声に出さなく笑みを交わし黒板へと意識を向けた

彼らは、
こんな成りをしてても気のイイ奴らばっかりで、
無理に押し付けることなく話しを聞いてちゃんと向き合えば、
ちゃんと返してくれる、
見た目だけで判断しない事だよね

それから数十分、
滞りなく授業は進む、
まー黒板の文字をしっかり取っている者なんて極一部で、
大半は寝ているんだけどね、
まー特に今日は天気も良くって寒い冬なのに日差しが暖かいから仕方ないのかもねー
俺も微妙に睡魔が襲ってくるし、
早く終わらないかな
そんな思いを込めてまだまだ終わりの時間まで指してない時計をボーっと見上げた、
そして何の前触れもなく勢いよくドアが開けられる

ガラガラガラッ!

寝ていた物が一斉にビクついて起き上がった、
例に漏れず俺も驚いて手の平に乗せていた顔がガクンっと落ちる
ついでに身体もビクッとなっちゃって、
変に動く心臓に焦りながら前を見た、

「あ、」

その人物の姿を認めて、
思わずそんな言葉を言ってしまうと、

「めっずらしー・・・・君塚だ、」

前の中山がその人物の名前を口にした
そう、先生に何やら言っているのは、
この学校で最も名の知れた有名人・・・・・君塚 眸(きみづか ひとみ)だ。
何がそんなに有名かって?
一言で言うならば・・・・・・泣く子も黙る?
そんな感じ、
猛禽類を思わせるような鋭い眼差しと整った顔立ち、くすんだ金に近い茶色の髪、
ドアをくぐってじゃないとは入れない身長の高さに比例したほぼ出来上がった大人の身体、
それに見合って荒っぽいこと荒っぽいこと、
停学なんてしょっちゅうの男だ。
その君塚が、こちらへと歩いてきた、

「よー珍しいじゃんお前がこんな時間に出勤だなんてよ」

そう中山が声を掛けると、
隣の清水もうんうん頷きながら俺の後ろに着いた君塚を笑って見ている、

「こんな日もあるさ」

ニヤッと笑いながら低い声が2人に返す
それを聞きながら俺はと言うと、
入って来た人物を認めてからは別に何も思うことなくまたもや時計を見続けた、
三人の会話を聞くより、
早く終わるという事が最重要なんでね、
後ろの君塚が怖い存在だってのは知ってても別に自分に害があるわけじゃないし、
何か言われたとかされたとかでもないし、
何てボーっとしながら時計を見ていると、
三人の会話が途切れて、
またもや清水と中山は机に突っ伏していた
それを見て、
俺も寝ようかな〜
何て、できもしないことを考える
当然、
それは起こった
俺は後ろの男に無防備に背後を晒してるワケで、
だからと言って構えるとか警戒するなんて、
何でたかだかクラスメートにしなくちゃならない・・・・・・?
でも、
この時から俺は、
この男に背後を見せまいと誓う事となる、

ふっと、
耳に何かが触れた・・・・・・でも眠気で働いてない脳みそはそれを意識しなく、
次の瞬間、

べろっ

「!?!??!?!?!??!」

首筋、
項に濡れた感触
それを認識して一歩遅れて、

「ひぃあっ!??!?!??」

叫んで立ち上がって、
ノートに手を滑らせて思いっきし中山の背中に突っ込んだ

どがっ

「んがっ!!」
「み、み、水守!?」
「・・・・・何だーうるさいぞー水守ー」

急な攻撃に間抜けな声を出す中山、
その声に驚いたような声を上げて飛び上がる清水、
そしてなんとも気の抜けた教師の叱咤する声(しかし身体は黒板にむいたまま)

その三人三様の声を聞いた後に、
何かが触れた項を押さえ込んで勢いよく振り返った、
そこに見たものは・・・・・・
肘を突いた手の上に顎を乗せてニヤニヤとした笑みを浮かべた君塚

「な、な、なっ!!」

情けなくも顔を真っ赤にして、
言葉が思うように出ないまま君塚を睨みつける

「わりー・・・・何かスッゲー上手そうに見えたもんで、つい?」
「うまそ・・・・・ついって・・・・!!」

悪気なんて微塵も思ってないであろう・・・・そんな感じ、
って言うか、つい!?

「ついでお前っ・・・・!!」

相手が君塚である事と今が授業中である事を意識から吹っ飛ばして思わず、

「ふざけるな!!」

怒鳴りつけてしまった、
次の瞬間に後頭部に鋭い痛み

「った!」

見ると真新しい白いチョークが折れて落ちている

「うるさい水守」
「・・・・・すいませんっ・・・・・・!!」

状況を思い出して、
怒りに顔を染めながら椅子に座る、
目の前では目をぱちくりしてる清水と開いた口が塞がらない様子の中山、
で、
チラリと後ろを振り返れば・・・・・
おもいっくそ肩を震わして笑いを堪える君塚の頭、
そこでもう一度ブチ切れた俺は、
中山の制止の言葉が声になる前に、
教科書を振りかざして

ばこっ

「って・・・・・・・ぇぇ・・・・・」
「ひぎゃっ・・・・・みずもっ!!」
「みみみみ水守っ」

慌てたような清水と中山、
そりゃーそうだろう・・・・・不良の中の不良、
問題児中の問題児で教師からも敬遠されているあの君塚を殴ったのだから・・・・
命と平和が惜しかったら出来ない行為

「・・・・いい度胸してんじゃん・・・・・」
「っふん!」

不敵に笑いながら俺を睨むその目に怯むことなく、
鼻息荒く俺は前に視線を戻す、
そこには顔を真っ青にした清水と中山、
その2人にも八つ当たり込みで睨みつける、
それと同時に鳴る授業終了のベル
気が治まらないまま立ち上がりかけたところで、
ぐいっと後ろ右脇腹から手を差し込まれた腕に身体を引かれて、
目隠しされるように額を押さえ込まれ、
首筋に相当な痛みを感じた

「いっっっつぅ!?」

手の隙間から見えたのは金に近い茶色の髪、
振り払えない力の差、
見なくても分かる・・・・・君塚に噛まれた
それも歯形が残る勢いで、






そして次には

「気に入った」







そんな言葉を貰って、
それが俺の悪夢の始まり・・・・・・・!!






++++++++++++++++++++++++++++++++++++

急遽のバレンタイン記念としてUP★
書いててスッゴク楽しかった小説です!

キスマークとかって、それを痕を残すってシチュ好きなんですけど・・・・・
これ書いてて思った、
噛み痕って良くね!?
みたいな、ねっ!!
一人大興奮だったよ(馬鹿)
しかもーあの後ろから目隠しして噛む!
歯型のこるんだよ、激しいよねぇ(コラっ)
ちょっと血が滲んじゃったりさ、
ソレ舐めちゃったり・・・・・!!
ぐはっ!
ゴメン、一人暴走してる・・・・・・!!
ではっ
楽しんで貰えたら幸いです(礼)