「Believe」〜眼鏡〜











「・・・けぇじ・・?」

俺が敬二の寝室に顔を出すと、敬二はパソコンに
向かう時だけかけるメガネをして、振り返った。

メガネをかけてると、本当に零次兄ちゃんに
そっくりだと思う。

中身は全然似てないけど・・。

振り向いた敬二がにっこり笑って。

「・・どうした、槙」

「・・・・夕飯、できたよ」

そう言うと、敬二は笑って。
ぎっと椅子を回した。敬二が手招きをするのを見て
俺は嬉しくなって、ぱたぱたと敬二の所に向かう。

じっと敬二の顔を見ると、いつもよりずっと化学の先生って
感じがする。

メガネをかけてるせいかな。とも思うけど。

「・・・ま〜き〜・・」

「・・・わっ・・何・・・?」

いきなり腰を抱かれて驚いて敬二を見ると、
敬二はにっこり笑って俺を見上げてた。

にっこりと微笑んだその顔が妙に可愛くて、
つい頬を染めてしまう。

なんでだろう・・。

いつもは可愛いよりもかっこよくて、生徒からの人気のある
大人な先生なのに。
どうして、こんなに・・・。


「・・・槙?」

「・・・・・・・・」

不思議そうに名前を呼ぶ敬二に抱きつくと、ふんわりと
体があったまった。

大きくて、あったかくて、優しい体。

「・・眼鏡かけてると、零次兄ちゃんに似てるよね・・・・
なんだか、可愛い」

にこにこ笑ってそう言いながら敬二に抱きつく手を強めたら、敬二が
ふっと笑ったような気がして、体を離した。
首を傾げて敬二を見ると、敬二は俺を見上げて、にっこりと笑ってた。

「・・・槙はメガネしてるほうがいいのか?」

敬二の言ってる意味がよく分からなくて、俺の思考は一瞬止まった。

「・・・・なんで、そんな事聞くの・・?」

意味がわからない。

メガネしてるほうが?
確かに、メガネしてるとどこか可愛いけど。

してるほうがいいとかは全然関係ないと思う。
敬二は敬二だし、メガネだっていつだって取り外しできるんだし・・。

不思議と首を傾げてると、敬二が笑いながらもう一回
俺の腰を抱きしめてくる。


「・・・けぇじ?」

「・・そうだよなぁ・・槙はそういう奴だよなぁ・・・」

クスクス笑って何をいってるんだ?

「・・・敬二、俺意味わかんないんだけど」

むっとしながらそう言うと、敬二はますます俺の腰を抱きしめた。

「・・分かんなくていんだよ、槙は・・・そのままで、十分」

「・・・ますます意味わかんないし」

十分って何だよ。

意味はまったく分かんないけど、敬二が疲れを忘れるように
笑ってるのがなんだかくすぐったくて、怒るのはやめた。








後日。

「・・・と言う事があったんだけど、零次兄ちゃんはどう思う?」

電話越しにそう言うと、向こうからなんだか笑った気配がして
思わず顔を顰めた。

零次兄ちゃんまで!

「・・・なんで笑うの?」

むかむかして言うと、向こうから謝罪の言葉がきて、
ますます意味が分からない。

あやまるんじゃなくて、笑ってる意味を教えて欲しいのに。

そう、零次兄ちゃんに伝えると、零次兄ちゃんはいつもの冷静な声で


「・・・・メガネをかけると、敬二が零次兄ちゃんに似てるから?
・・・・・それがなんで、メガネかけてるほうがいいって事になるの?」

全然理解できなくて、零次兄ちゃんに聞くと、零次兄ちゃんは
意地悪そうに、これ以上は教えられないと言った。

本当に意味がわからない。

敬二がメガネをかけると零次兄ちゃんに似てて、それでどうして
掛けてるほうがいいかって聞かれるんだ?

敬二は敬二で、零次兄ちゃんは零次兄ちゃん、
似てるからって、何にも変わんないと思うんだけど・・。
まったく意味が分からなかったけど、忙しい零次兄ちゃんの時間を
これ以上取るわけにも行かなくて、しょうがなくお礼をいって
電話を切った。


「・・・・わけわかんない」


そう呟いた時、敬二の。


『・・分かんなくていんだよ、槙は・・・そのままで、十分』

その言葉が聞こえてきた気がして、俺はますます顔をしかめた。
十分って。

・・・・・・。

やっぱり意味がわかんない。

もやもやする感じが嫌で、しょうがない、と俺はそろそろお風呂
からあがってくるだろう、敬二を待つことにした。

絶対納得する理由を言ってもらうからね!

心の中でそう宣言した時、敬二がお風呂からあがったという
声が聞こえてきて、俺は決意を新たに、声の主の下へと
走った。




次の日の朝。

真っ赤な顔で胸を殴る俺を、にこにこと笑いながら
抱きしめてくる敬二にむっと顔が歪む。









こんなことなら聞かなきゃ良かった。


心の中で呟いた言葉がベッドの上で抱き合う2人の陰に
ぽつんと落ちた。




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自慢!!

貰ってしまった・・・・・!!貰ってしまいました!!
いや、押し付けたモノのお礼ナンですけどね・・・・!!
嬉しいっスッゴく嬉しくて貰って読んで終わった瞬間、小躍りしたのは秘密です(ぇー)
本当に、本当にありがとうございます!
大好きだ〜〜〜vv