■ 寸止めがお好き















からの雨。
止む様子もなく静かにシトシトと降っている。
幼稚園からの付き合いのあるメグ(真館)とタケ(大江)と雨が降っているので帰りもしないで教室で喋りながらカードゲームをしていた。

校舎内で無意味な筋トレをする運動部の声を聞きながらの賭けポーカー。
優勝商品はミスドのドーナッツ喰い放題。
もち、負けた奴の全額負担。
笑みの下ではそうとうな知能勝負。

「へいっ!スペのスト(レート)!!」
「ぐはっスリーカード!やばい俺!」

勝ち誇ったようなメグと青い顔のタケ
・・・・・っふ・・・・・

「甘いなっメグ!スト(レート)フラ(ッシュ)!!カードの女神は俺の手元!ミスドは俺の腹じゃ!!」
「っげ!」
「マジで!?何だよ〜何で今日に限って潤そんなに強運なん?」

うあ〜っと頭を抱えるタケの横でノートに勝敗の正の字を書き込む。
このままではタケの惨敗は目に見えている。むしろソコに一直線である。

「ご〜めんあそばせ〜占いで『今日の勝負運絶好調!賭けをするなら今日を逃すな!』って書いてあったものですから〜勝たせていただきます★」

ピースを目にやってウィンク1つ。
やってる事は古いが絶好調に現代っ子よアタクシv
花の高校生!
賭け花札賭けポーカー大好きっ子★
よいこの皆は真似しないようにね(似非笑)

「さ〜次で勝負が決まっちまうぜ!?覚悟はよろしくって、タケちゃん?」
「あ〜・・・・あ!ヤバイ俺今日家事当番の日だった!」
「お手伝いさんのいる家の子が何を言いますか!」
「・・・・・・・」
「腹割れって・・・な、タケ?」
「割ったら死にます。括るんです。」
「何で括る?ゴム?縄?ロープ?南京錠?」
「最後違いますから!簀巻き?!アタイ簀巻きにされんの!?」
「つーーかメグ、縄もロープも同じだから。」
「いや、俺的に『縄』のイメージは運動会の綱引きの縄『ロープ』は黄色と黒の蜂カラーのなんだよね。」

カードを綺麗に切りながらそう言うメグ。
隣で『簀巻きにされるー』とか言ってドサクサに逃げようとするタケの腕を取って座らせる。

「びみょ〜」
「微妙とか言うの止めてください。」
「っけ・・・・お前ら何か嫌いだい!!」
「何ですって!アタイこんなにも大江君の事殺したいくらい愛してるのに!」
「怖っ!!」
「いっそ大江君のこと殺してホルマリン漬けにしたいのに!!」
「ってか何でホルマリン!?」
「愛の方向違いますから!危ないですから!!潤止めて!!」
「無理!!メグ目がマジっすよ、目イっちゃってるから!!」
「大江君・・・・・・」
「ぎゃーーーーーっ!!」

カードも配らず遊びだす二人の様子を横目に楽しみながら何気に窓の外に目を向ける。
窓際の自分の席。
良く見える中庭。
そこを歩くとある人物の姿。

「・・・・・・・・今日の勝負ドローでいいや!」
「えっマジで!?」
「潤?どうしたの?」
「俺、先帰るっ!」

喜色満面で反対にメグに抱き付いているタケと、その体勢のまま首を傾げるメグを残して教室を飛び出した。
カバンを背負いなおして階段を3段抜かしの危険行為で飛び降りる。
ニヤける顔を片手で擦るが治まらない。
アノ人がいた。
一人で、
必ず誰かがそばにいるのに今日はいない。
こんなチャンス滅多にない。
楽しみ。
スッゲー楽しみ!
ねぇ
どうやって苛めようか?
どうやって困らせようか?
どうやって遊ぼうか?
そんな考えが思考を支配する。
いつもの自分がなりを潜め、アノ人の前だけの自分が出てくる。
困った顔が愛しくて、
我慢するような顔が愛しくて、
切なそうな顔が好き

「先輩っ!!」

階段上の踊り場から顔を出して目の前を横切ろうとしたアノ人を呼び止める。
目の前でスッゴク驚いて固まったまま動かない先輩に、階段中段から飛びついた。

「危ないっ!!」

俺の行動に思考を覚醒させて、腕を広げて受け止めてくれる。
とすんと腕に収まって、顔を上げるとちょっと怒った顔。
珍しい表情に、ニヤリと笑っていきなり深いキスを仕掛けてやった。
廊下の往来。
曲がった角では運動部の幾人かの声。
数メートル先の教室では文化部の部活中の教室。
誰かが外に出てきてもおかしくない場所。
見つからない保障はされない場所。

「んんっ・・・!」

一方的なキス。
俺から下を奥へと絡ませる。
引こうとする頭を押さえつけて、首に片手を巻きつける。
煽るだけ煽って、もう後には引けないキス1つ。
ぴちゃりと水音も1つ。
離れがたいけれど、名残惜しいように舌を戻して濡れた唇と繋がった糸もひと舐め。

「ふ・・・・・・・」
「・・・・・一人で何してんの先輩?」

欲に濡れた薄い黄土色の瞳に視線を合わせ尋ねる。

「駄目じゃん一人でいちゃ・・・・・俺に遊ばれちゃうよ?」

瞳と同じ色のやわらかい少し長めの髪に隠れた耳に唇を近づけて、吐息とともに甘噛んでそのまま首筋にそって下に辿っていく。
鎖骨辺りで歯を立てて、舌を這わせて質問の答えを即すようにもう一度今度は強めに歯を立てた。

「っ・・・・・・・」
「ねぇ・・・・・何で?」
「み・・・しま・・・・」
「あぁ・・・・・それとも俺と遊んで欲しかった?」
「・・・・・・・」

ぐっと後ろ髪を引っ張ってムリヤリ上向かせる。
曝け出された喉元は、男にしておくにはもったいないほどの透けるような欧米人特有の白さ。
凹凸のある所に下から舐め上げて、顎にキスを1つ落としてから薄く開けらた唇にもう一度重ね合わせた。
今度は主導権を取り返すかのように舌を絡めとられた。

「んぅ・・・・・っふ・・・・」

有無を言わせない口付けの激しさに喉を鳴らして、
足りない酸素をとるように頭を引きながらそのキスに答える。
今だ腕の中の身体を強く抱き寄せられて、
宙に浮いた足を廊下に下ろされて壁に身体を押し付けられると、
身長差があるために真上を向くように顔を上げる。

「んんっ・・・・んぁ・・・・・」

背伸びはしてやらない。
その代わりにくんでくるセンパイ。
そのせいで髪が頬や額にあたってくすぐったい。
十分にキスを楽しんでから唇を離された。
先ほどの俺のように濡れた唇を舌で舐めとられる。

「三嶋・・・・・・」
「違・・・・う・・・でしょ・・・・?」
「潤也、時間・・・・あるのか?」

目元に浮かんだ涙を舐めながら聞いてくる。
それに曖昧な笑みで返す。

「潤也・・・・・コレで終わり?」
「どうだろうね・・・・・終わりでも良いし、終わらなくても良い。」

俺にはまだ我慢できる範囲。
先輩は無理だろうね。
黄土色の瞳が先ほどよりいっそう欲に濡れて揺れている。

「好きだよ、センパイ?」

その困った顔。

「だから・・・・」

欲に濡れた瞳。

「今日は、」

俺を欲して止まない身体。

「終わり。」

収まりきらない欲求を持て余しても強要できないセンパイ。

「またね・・・・・・?」

するりと壁に囲われた腕の中から逃げて、落ちたカバンを拾い上げる。

「あぁ・・・・・・今回は俺に次の時間に会うまでお預けね?」
「潤也っ!」
「今のお遊び相手としたのが分かったら・・・・・言わなくても分かるよね?」

首だけをセンパイに向けたまま一言おいて、笑みも1つ残して、肩越しに手を振って、

「バイバイ、葵!」

そこで久し振りに恋人の名前を読んだ。
呼び止めようとした手が届く前に廊下を駆け出す。




ニヤけた顔が治まらない。



ねぇ



どうやって苛めようか?

どうやって困らせようか?

どうやって遊ぼうか?