■ ほめてのびる子













「しゅう、これ、なに?」
「これはコップだよ。」
「これは?」
「これは椅子。」
「じゃぁこれは?これは、なに?」

そう言って俺の後をちょこちょこついて歩く小さな男の子に質問されるがまま答えていく。
目にするモノ目にするモノが不思議で仕方ない様子。
大きく赤い瞳がキラキラ輝いている。

「アルラ、そろそろご主人様を起こしてきてくれるか?」
「くあいす?」
「ク・ラ・リ・ス。」
「く、らりす。」
「そう、起こせる?」
「はい!」

俺の言葉に手を上げて駆け出す小さな男の子。
それに笑みを零して、散らかった本を片付ける。
昨日と同じ自分の行動、どんなに片付けても一瞬後にはどうやってそうなったのか本と紙とペンが転がる。
はぁっと息をついて、開いたままの本を手にした瞬間、奥の部屋で悲鳴が聞こえる。

「駄目だったか・・・・」

予想してた事に、もう一度溜息が零れた。
抱えていた本をいったん机に下ろし、声が聞こえた部屋に入ってみると・・・・・アルラの主人であり、この塔の主人でもあるクラリスがベッドから落ちてもまだ寝ていた。
アルラを下敷きにして。

「しゅっ、おも、です!」
「はいはい、ほらおいで。」

げしっと寝汚いクラリスの頭を蹴りつけ転がし、アルラの身体を助け上げた。
赤い瞳に涙をうけべている。

「ぼく、しゅうの、いいつけできませんでした。」
「うん、次回からは下敷きにならないように起こしてみようね?」
「はい。」
「よし、次はアノ散らかった本を集めておいてくれる?」
「はい!」
「良い子だね。」

真っ白い髪を一撫でしてアルラを部屋から出す。
その背中を見送ってから、未だ床に転がって眠る人物に目を向けた。
健やかな眠りがそこにある。

「クラリス・・・・いい加減起きろ。」
「zzzzz」
「クラリス、起きろって。」
「zzz・・・ん〜・・・・zz」

肩を揺すっても声を少し大きくしても起きない。
これもいつもの事、
でもな?
そろそろメンドイわけよ、この時間が。

「起きないんだ・・・そうか・・・・」

そう呟いて、アリス曰く【尾てい骨直下型】何とかって言われた声でもって、クラリスの耳元で囁いた・・・・意識して、ひどく掠れて甘い声で・・・・

「クラリス・・・・起きないと、もうヤらせてやんない。」
「っ!!」

びくっと身体を震わしたかと思うと、パチッと目が勢い良く開いた。さしずめ、俺の言った内容に反応したわけではなく、声に反応したようだ。
顔が赤い。

「しゅ・・・シュウ??」
「起きた?」
「なんなっ・・・??」

寝そべっていた床から起き上がり、顔を赤くして口元を抑えて俺を見る。
起きたからってやめてやんないで、スルリと首に腕を巻きつけて耳元に唇を寄せる。

「一回で起きてね?」
「っ!シュウ!」
「後ね、本を散らかさない。」
「ヤメっ!」
「分かった・・・・クラリス?」
「わっ分かったから!!」

わたわたと暴れるクラリス。
降参とばかりに、両手を掲げる。
よっし!
当分は起きるな!!
確信的に悟ってダメ押しとばかりに、耳にキスを贈る。

「シュウ!!」


ちゃっと、やってね?
やったらイイコトありますよ?



■ 名前 ■

洲 -シュウ-
クラリス
アルラ




一家です。
お父さんとお母さんと可愛い息子の図です。
嘘です。