子犬の舌
















無邪気さは時には小悪魔に見えてしまう時がある。
計算されたようで、
でも、そんな事はなから考えてない
てか、お前に計算なんて言葉ないんだろうな〜

無意識すぎて
天然過ぎて
考えなさすぎ!

百戦錬磨とか言われてるからこそ・・・・

対応できないことがある。






寮生が溢れかえる談話室の一角に、すわり心地の良いソファーが1つある。
特別なソファー。
指定席とも言える、そんな場所に座るのは、この学園人気を博する数人の人物。
生徒会長と副会長に3年の学年総代。
お近付きになりたい寮生の熱い視線を受けながらも、そんな視線に意識を向けることなく各々ダラリとした時間を過ごしている。

「・・・・暇」
「だな〜」
「暇ね〜」

先ほどから何回も繰り返されるセリフ。
三人にとっての大事な子が近くにいないための行動。
この場所にいれば構って構って構い倒すのに・・・・
暇さ加減もマックスになりかけた瞬間、お目当ての人物が現われた。
手に何やら持って、

「宮古センパ〜イ、千紘センパ〜イ!!」
「「哀流!」」

声がした方向に顔と身体を向ければ、空いた隙間に飛び込んでくる。
ニッコニコと満面の笑みを浮かべて、両隣の人物を見上げた。
そんな顔に今までのダルそうな顔が吹き飛んで、座る哀流を見下ろす。

「どこ行ってたんだい?」
「いや〜ちょいと学校抜け出してコンビニに!」
「まさか、一人でじゃねーだろうな〜?」
「俺と一緒です。」

もう一人が苦笑を浮かべて手を上げる。
2人は哀流を抱えて、眉間により始めたしわを解いた。

「迷惑かけたね、敦。」
「いいえ」
「あっちゃん何買ってきたの?」
「アイスとか色々・・・・・・絢音も食う?」

ガサゴソと袋を漁って取り出し、1つを差し出す。

「や〜んっありがと〜う!」

嬉しげに受け取って、カップを開けて食べ始める。
スプーンを咥えながら、何気に前を見ると・・・・

「いや〜相変わらずにま〜・・・・・・・・」
「砂吐きそう・・・・」
「駄目よあっちゃん!そんな事じゃ強い大人になれないわ!」
『こんな事でなってどーするよ?』

心の中で突っ込みいれつつプリンのふたを開ける。
目の前では、千紘の膝に前向きに抱えられた哀流が手にしたソフトクリームを宮古に食べさせているところだった。

「あーーーっ!宮古センパイ食いすぎ!!」
「ケチケチすんな」
「宮古・・・・口の端にクリーム付いてる」
「あ?」
「あ〜ホントだ〜」

千紘が笑いながら指摘して・・・・
と哀流が言った瞬間、宮古が固まった。
ついでに千紘も固まる。

「もったいな〜い!」

そう言って、口の端に付いたクリームだけではなく、唇までもペロリと舐め取る。
ビクッと宮古が身体を震わせば、その反動で千紘の目の前にあったアイスが顎にくっつく。

「冷たっ!」
「あ・・・・・・・ワリー・・・・・・・」
「あはは〜千紘センパイにまでくっ付いた〜」

と言って、またもや・・・・顎から頬近くまで舌を這わした。
2人は二度目のフリーズを経験したのだった。

「プリン食ってんのになぁ・・・・・・・・」
「アイスから甘さを感じないなんて、初めての経験だわ・・・・・・・・」

そう呟く被害者である。
それを運悪く(?)目にしてしまった一般の生徒は、嫉妬する感情を忘れてただただ固まってボー然としているだけであった・・・



ご愁傷様






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* 登場人物 *

絢音−アヤネ−
敦−アツシ−