マシマロキス













「晴斗は俺の事なんか好きじゃないんだ・・・・」

また始まった・・・・
はぁ
隣で、これ見よがしに大きく溜息を吐く。
目線を上げずに聞き返せば、

「・・・どうしてですか?」

顔を上げなかった俺の行動が、ちょっとお気に召さなかったようで・・・・・

「晴斗くんっ」
「・・・・はいはい」

大きめに名前を呼ばれて、仕方なく顔を上げた。
それにしても、
どうしてそんな事言うのだろうか、この人は?
何で俺が想っていないっていつも言うんだろう?

「それで、」どうしてそう思うんですか?
「だって・・・・!」
「はい」
「電話するのも俺からメールするのも俺からデートに誘うのも俺から教室に行くのも俺から・・・・それに・・・」
「それに?」
「キスだって俺か――」

力一杯不満を口にする先輩、
そんな不満を最後まで聞かずに、軽く触れるだけのキスを頬にする。
一瞬何が起こったか理解できなかったらしい目の前の人、深御先輩はボー然としたまま俺が触れたところを擦っている。
何度も何度もこすって・・・・
少し首を傾げた。

・・・・・面白いかも・・・・

「今・・・・?」
「はい?」
「えっと・・・・何、かな?」
「キスですけど・・・・イヤでしたか?」
「え?あ・・・いや〜・・・んぅ?」

イヤじゃないけど、今の何?
見たいな顔してる・・・・

面白いかも!

そう思って今だ固まっている深御先輩に、今度は唇に触れる。

「のわっ!」
「・・・・今の反応は傷つきますよ?」

今度は俺が驚く番、
身を乗り出した格好のまま固まって・・・・
ばっと椅子から立ち上がって逃げ出す先輩を、恨めしそうに見上げる。

自分からはドコでだって所かまわずしてくるくせに・・・・

「違っ・・・・!ちょっと待って落ちつくから!」
「・・・・どうぞ。」

俺の不機嫌にあたふたと手を振って誤りながら、
両手を組んで頭上を見上げる・・・・これが落ちつきポーズ・・・・

変なのー

そんな感想を述べた瞬間に・・・・ガバリと抱きつかれる。

重いしーー

「晴斗ぉぉぉっ!!」

耳元で泣き叫ぶ。
ちょっと迷惑、

「で、誰だけが思ってるんですって?」
「ごめん!もう言わない!」

ぎゅーーーーっと抱きつく力が増す。
すりすりと擦り寄ってくる大きな身体。
キレイな大人の顔して子犬みたいな反応。

こんな所のこの人が好き。



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* 登場人物 *

深御−フカミ−
晴斗−ハルト−