■ マシマロキス
「晴斗は俺の事なんか好きじゃないんだ・・・・」
また始まった・・・・
はぁ
隣で、これ見よがしに大きく溜息を吐く。
目線を上げずに聞き返せば、
「・・・どうしてですか?」
顔を上げなかった俺の行動が、ちょっとお気に召さなかったようで・・・・・
「晴斗くんっ」
「・・・・はいはい」
大きめに名前を呼ばれて、仕方なく顔を上げた。
それにしても、
どうしてそんな事言うのだろうか、この人は?
何で俺が想っていないっていつも言うんだろう?
「それで、」どうしてそう思うんですか?
「だって・・・・!」
「はい」
「電話するのも俺からメールするのも俺からデートに誘うのも俺から教室に行くのも俺から・・・・それに・・・」
「それに?」
「キスだって俺か――」
力一杯不満を口にする先輩、
そんな不満を最後まで聞かずに、軽く触れるだけのキスを頬にする。
一瞬何が起こったか理解できなかったらしい目の前の人、深御先輩はボー然としたまま俺が触れたところを擦っている。
何度も何度もこすって・・・・
少し首を傾げた。
・・・・・面白いかも・・・・
「今・・・・?」
「はい?」
「えっと・・・・何、かな?」
「キスですけど・・・・イヤでしたか?」
「え?あ・・・いや〜・・・んぅ?」
イヤじゃないけど、今の何?
見たいな顔してる・・・・
面白いかも!
そう思って今だ固まっている深御先輩に、今度は唇に触れる。
「のわっ!」
「・・・・今の反応は傷つきますよ?」
今度は俺が驚く番、
身を乗り出した格好のまま固まって・・・・
ばっと椅子から立ち上がって逃げ出す先輩を、恨めしそうに見上げる。
自分からはドコでだって所かまわずしてくるくせに・・・・
「違っ・・・・!ちょっと待って落ちつくから!」
「・・・・どうぞ。」
俺の不機嫌にあたふたと手を振って誤りながら、
両手を組んで頭上を見上げる・・・・これが落ちつきポーズ・・・・
変なのー
そんな感想を述べた瞬間に・・・・ガバリと抱きつかれる。
重いしーー
「晴斗ぉぉぉっ!!」
耳元で泣き叫ぶ。
ちょっと迷惑、
「で、誰だけが思ってるんですって?」
「ごめん!もう言わない!」
ぎゅーーーーっと抱きつく力が増す。
すりすりと擦り寄ってくる大きな身体。
キレイな大人の顔して子犬みたいな反応。
こんな所のこの人が好き。
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登場人物
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深御−フカミ−
晴斗−ハルト−