おまけ











「いやーーーー俺ってば結構、悪運強かったんですね!」

そう言って笑うのは病室のベッドの上の片山
所々に見える包帯は痛々しいのだが、
見た目に元気すぎて一度死に掛けたようにはまったく持って見えない

「違うね、俺の腕が神業だからに決まってるでしょ」

その横では始めて目にする白衣を着た久保田、
久保から聴診器を下げてる様は、
裏の世界で恐れられているような者には決して見えない

「・・・・・痛い・・・・ですか?」
「ま〜〜それなりに痛いけど、クソジジィの所に居た頃に比べれば、そうでもないよんv」
「・・・・・・・」

痛ましそうに見てくる夜人に片山は笑って手を振る、
今日はやっと集中治療室から出た片山の見舞いに来ているのだった
と、言ってもやはり住む世界が住む世界まだけに此処は通常の病院とはまったく違う、
とある久保田の知り合いの医学研究所ないにある病室だ、

「ま、片山のお陰で色々と実験的手術をさせて貰えたからね助かったよ」
「・・・・・・・」
「コレで未来の患者さんの命がいくつ救えることか!」
「久保田さん・・・・・アンタ、俺の身体で何したんですか・・・・・!!?」

久保田の言葉にさすがに青褪める片山、
いつもの飄々とした雰囲気がなく焦りに満ちていた、
対する久保田はきょとりとした後に・・・・・酷く楽しそうな笑みが浮かぶ

「ちなみにね、俺だけじゃないからね・・・・・・君の事を切り刻んだの」
「切り刻むとか言う表現・・・・・止めてもらえませんかね・・・・・」
「ヤダ」

あっさり笑顔で言い捨てられて、
片山はベッドに突っ伏しその横の夜人はオロオロと慌て久保田はケラケラと笑った
その様子を見詰めながらいつの間に来たのか蓮水が立っていた

「で、済んだのか?」
「あぁ・・・・・・日岐が残した遺言どおりにな、」

あの日、
蓮水に届けられた氷企の遺言には、

『一、日岐浩三が個人に所有する全財産は、日岐夜人に相続す、
二、日岐浩三亡き後、7代目氷企を継ぐのは石勿高光に任す、
三、日岐夜人に意思がある場合、日岐夜人が成人を迎えてから8代目とす、
四、その際には後継人として威道組・威道浮津に任す
五、もし上記の者が何らかの形で死んだ場合、全権を蓮水京介に任せるとする』

その文字が書かれていたそうだ

「それを何らかの形で見たあの男がその遺言の通りにならないようにしたわけだ」
「ま、遺言の効力は絶対だからな・・・・あの子を使って、その権利を手に入れようとしたんだろ」
「・・・・・・・っは」

嘲うかのように小さく息を吐いて、
目の前で笑う夜人に目を移す

「それで、木尾田の裏にいたのは内田だ、あの子の父親を殺させるが為に動かしたようだな」
「・・・・・・馬鹿馬鹿しい上にめんどくさい事をしやがる」
「まぁな・・・・・」

蓮水は小さく笑って口に煙草を咥えた
火をつけようとした瞬間にその煙草が口元から消えた

「スイマセンがお客様、ここは前面的に禁煙となっておりますゆえにお煙草をお吸いになる場合はこの窓から飛び降りて下の喫煙ブースにお越し下さい」

満面笑顔に青筋を立てて久保田がそう言った
ちなみに此処は5階
その言葉に軽く肩を竦めて威道に笑みをよこした

「相変わらず怖い人だな」
「あんなんでも可愛いところはあるんだぞ?」
「・・・・・・天変地異か何か?」
「ははっ・・・・・違う、お前も見ただろ、前にお前のその怪我の治療をした男」
「ぁ?・・・・・・あぁ・・・・そう言えば何か言いかけていたな」

あの時の細身の男の顔を思い出す、
ただの医者にしか見えなかったがアレが何だというのだろうか?

「あれは・・・・・あの久保田と高校時代から付き合ってる男だよ、」
「・・・・・・・何?」
「しかも、あの男の言うこと全てに和泉は面白いくらいに従順だ」
「・・・・・・・・・・・・・・」
「面白いぞ〜」
「人の影口は聞こえないように言うのが常識だぞ、こら」

くつくつと笑いを零す蓮水の背後の壁にどすっと何かが突き刺さった

「・・・・・・・・」
「・・・・・・・・」

横目に見ると、
コンクリートの壁に突き刺さるボールペン
ソレを確認してからもう一度、
視線を久保田に向けると手には数本のペンが握られ笑う姿

「・・・・・・・」
「・・・・・・・」

死んだな・・・・・そう覚悟した時に、
後ろで叫ぶ声が聞こえた瞬間、
目の前の久保田が悪戯が見つかったような顔をして逃げて行く姿を見てしまった
隣で、勝ち誇ったような蓮水の視線を感じたが
威道は疲れたような息を吐いて
近寄ってきた夜人の髪を撫でたのだった



ほんとのおわり!!