く ら げ












あの居た堪れない空気の中
寝てしまった自分の神経の図太さに拍手


嘘です
違います
あの後・・・・・・あの後、
口に出して言えない事をたっぷりとされて半ば失神で眠りに落ちました

もーーホント
勘弁して!
泣きながら訴えても俺に跨る男、
西園は濡れた瞳で俺を見下ろして
無常にも受け入れてくれることはなく黙って俺を攻め立てた
て、言っても
俺の出るモンが出なくなるまでであって
って言うかそれすらも初めてだけど
決して最後の線を越えたわけではない
いや、
これもある意味片足突っ込んでるって言うか片足が向こう側に行った状態だけど
身体はまた綺麗です
まー三十路前の男にどーこーする筈がないと思いますが、
あれも充分どーこーだった気もするけれど記憶から抹消します
できないけど抹消します

『あっ・・・・・・ぅっ・・・・・!』
『声出した方が楽だよ、メイジ?』

うわわわっ
声が記憶の中の声がーーーー!!
蘇るぅぅ!!
しかも鮮明に!
クリアに!!

西園の見てはいけない一面を見てしまった気がした
この人の人間性を見た・・・・
むしろ見せ付けられた気がする

斉藤や菅の言う
逆らえない何か
囚われたら
狙われたら
逃げられない何かの力
その効力の片鱗に触れた瞬間だった気がする

『声・・・・聞かせろ』

いつものようなふわふわとした声ではなく
威力のある男の声で、
耳に吹き込まれれば
身体は弛緩するよりも硬直し
恐怖に似た振るえと共に身体を支配していく
それは肉食獣に咽仏に後少しで歯を立てられる寸前のような感覚

『この俺に聞かせろ』

殺気にも似たものを空気に纏わせ
視線に含ませ
声にも滴らせ
俺を上から
身体全体と
意識と
心を
脅して
従わせる

『俺だけに聞かせていろ』

強く強く
俺を縛り付けていった

抹消できないほどの強い記憶
目を瞑っても
耳を閉じても
それは身体に染み付いて
簡単には抜けてはくれない
恐怖と同じだ

ぼーっとしながら和室の敷かれた布団の上で頭を抱える
襖の隙間から零れる光は強く
朝と言うよりも
そろそろ昼前となる時間帯だと知れる
外の音は聞こえず
眠り続けていた
軽く残る倦怠感が
それを納得させられる

「・・・・・・・・・はぁ・・・・」

乱れた浴衣のすそを直して辺りを見渡す
昨日の場所で
無理矢理脱がされて散らかされたスーツやシャツが畳まれずにそのままだ
そこに西園は存在せず
良かったような、
何故だか物足りないような気分にさせられた

「さい、あく・・・・・・」

気分も自分も
この置かれた状況も
逃げられないことも
逃げたいと思ってないことも
総てにおいての適応する言葉
今一度、
同じ言葉をため息と共に吐き出せば

「おはよう、良く眠れた?」
「・・・・・・・・」

開けられた戸の向こう側でにっこりと極上の笑みを浮かべたご機嫌の西園の姿
ネクタイは軽く結われた状態ながらも、
しっかりとシャツを着込んでいる
今日は昨日より堅気とは思えないような色合いで決められていた
黒のスラックスに赤いシャツって・・・・
どこのホストだよ
思わず呆れたように見上げれば、
その後ろに誰かが立っている事に気づいた

「おいで」

手を引かれた立たされ
昨日の夜、
飲み散らかされたものは綺麗に片付けられ
テーブルも無かった
そこにあったのは、
いや、
いたのは
黒い髪をきっちり後ろに流して縛った背の高い男
俺が部屋から出てくると、
あらぬ方向を見ていた視線が向けられた
そのままジッと見詰めてくる
その強い視線に怯んで一歩後ずさると

「・・・・・・へ〜・・・・コレが?」
「気に入ってもやれないよ」
「残念」

何の会話なのか、
むしろコレ扱いに一瞬だけカチンとくるものの、
表情を変えずにその視線を見返した
交わること数秒、
ふっと笑みを零す

「いい根性シテやがるな」
「ホントにね」
「でも・・・・・・どー見ても堅気にしか見えねーが?」
「純粋培養のサラリーマン」
「・・・・・はぁ?」

西園の言葉に背の高い男が間抜けな声を上げる
ちなみに俺も心の中で同じように声をあげた
純粋培養?
誰が?
俺が??
サラリーマンは合ってるけど、
純粋でも、ましてや培養されたサラリーマンでもないぞ!?
・・・・・・・って言うか、
サラリーマンが培養されるってのもイヤだな

「・・・・・・本気か?」
「何、今更やめるって?」
「やめるも何も双方納得しての事か?」
「まさか、俺がそう決めたからするだけだ」
「・・・・・・・・」

その言葉に、
男は眉間に皺を寄せて西園に視線を向けた

「やりたくない?」
「・・・・・・」
「良いよ別にやらなくても、宮の爺が出戻ってからでも」
「・・・・・・親父、いつ戻ってくるかわかんねーぞ?」
「そういえばドコ行った?」
「さぁ?どっかの女に懸想して逃避行だ」

男は肩を竦める
それに西園が可笑しそうに笑った

「元気だね〜・・・・・初美さんは何て?」
「な〜〜んも、いつもの事だとしか思ってねーよ」
「出来た人だね」
「あれで俺と15しか離れてねーってのも驚異的だな」

何の、
さっきから何の話しをしているんだ?
分からない名前と、
話しの流れについていけずに見ていた

「今度の相手はいくつ?」
「聞いた話しによると20前だとか?」
「孫じゃないか」
「御年75を過ぎるジジーには思えねー精力だ」
「見習いたいものだね」
「そ〜かぁ?お袋がまだ14ん時に俺を孕ませてんだぜ?50のジジーがよ」

・・・・・・・・何!?
思わず聞き捨てなら無い単語に、
視線を外していたのを男に戻す
その戻った視線が男にかち合った

「初美ってのは今年40になる俺の母親」

男の見た目から察するに、
二十代半ばから後半
有り得ないっ

「・・・・・・・」
「軽い犯罪だよな?」

軽くないだろ!?
思いっきり犯罪だろ!?
目を見開いて声に出さずに思っていれば、
男はニヤリと笑った

「この世界じゃ何の不思議もねーぜ堅気のニィちゃん?」
「コイツの親父はその世界じゃ有名だからねぇ」
「底知れぬ精力とテクで若い女から結構イッタ女までより取り見取り」
「羨ましいね〜〜」
「そこだけは、ホントにな」

何だこの会話!?
何だこの世界!?

「それで・・・・・雲隠れしている宮の爺の代わりとしてきたお前に、やって欲しい事ができるわけ?」
「オイオイ、この仕事について5年だけど俺の腕を見くびんな」
「それは違う方向でだろ?」
「甘いな、今の世じゃ洋モンだけじゃーやってけねぇんだよ、」
「へ〜」
「和モンの方は親父ンとこで修行したからな」
「あぁ・・・・・・だから雲隠れ」

何を納得したのか、
西園が何度も頷く

そんな事よりも
先ほどから気になる単語
『和』とか『洋』ってのは何なのだろうか?
その前に何の世界の人間なのか、
何の世界で有名なのか、
全然分からない

「酒は?」
「飲みすぎてないよ、10時間は軽く過ぎた」
「風呂入っておけよ、当分入れねーから」
「大丈夫、寝てるときに済ませておいたから」

当分、風呂に入れない?
何故?
って言うか気づかなかったのか・・・・・俺っ

「柄は?」
「そうだね・・・・・・」

西園がようやく俺に視線を向けた
ふっと小さく笑い
腕を伸ばしたかと思うと視界がくるりと反転する

「!?」
「この肌に何が合うだろうね・・・・・・」

目の前にはシーツの白と畳
背中には西園の重さ
ついて行けない状況に軽く呆然としながら浴衣の襟を引かれて、
背中全体が晒けさせられる

「アンタには何がついてるんだっけか?」
「俺には黒い龍と赤い蝶」

龍?
蝶?
待て・・・・・それって、

「ちょっと・・・・ちょっと待ってください、何するつもりですか!?」
「ん、前に言ったじゃない?」
「言った・・・・・って、前に?」
「そう・・・・・・この背中にお絵描きしようって、さ」

スルスルと指先が背骨に沿って腰まで降りていく
ゆるく触れる指先にくすぐったさと、
昨日の違和感が残って震えた

「黒い虎と赤い蝶」
「・・・・・・・い、いや・・・・だっ」

そんな、
何で
何で俺がっ

「ダメだよメイジ・・・・・俺が決めたんだから」
「そん、なっ・・・・・いや、だ!」
「イヤは聞けない・・・・・宮」
「へいへい」

ふっと重みが消えたかと思うとそれよりもはるかに重い体重が腰に落ちる
押さえるかのように力を加えてきて、
息苦しさを感じながらも起き上がろうと力を入れる

「どけっ」
「もうこうなったら諦めな、ニィちゃん・・・・・せめても影彫りにしてやるから」
「彫る、にはかわらないじゃない、か!」
「ん〜・・・・まぁねぇ」

曖昧のように相槌を打ちながら、
すっと消毒が鼻についた
次には背中全体に冷たいものが這った

「や・・・・め!」
「暴れるなって・・・・・下絵に失敗したら見られねーぜ?」
「余計だ!」
「はいはい・・・・配置は?」
「腰の中間辺りから右わき腹に蝶、左肩にかかるように虎」

無常な西園の声が頭上から聞こえ
目の前に座った
立たせようと踏ん張っていた腕を払われて肩から押さえつけられる

「良い色してるよ、映えるだろうな・・・・・この肌に赤い蝶は」

すっすっと冷たい柔らかいものが肌を撫でていき、
何かを描いていた
何か
何かじゃない、
西園が言っていた・・・・虎だの蝶、なのだろう

いやだ、
イヤだ!

「い、やっだ・・・・・!」
「口にタオル入れておけ、力入れ過ぎて奥歯噛み砕く場合がある」
「やっめ・・・・っろ!」
「はい、メイジあ〜〜ん」
「っふぐ!?」

有無を言わさずに突っ込まれた布が
気道をふさぐとこギリギリで思わず息を詰めた

「一気に筋彫りやっちまうぞ、その方が楽だからな」

意味の分からない言葉で、
けれどその言葉にもう逃れらないのだと分かる
分かりたくないのに
ここまで来て
逃げられる可能性など、
むしろこの西園と出逢って
西園がそうと決めたら
それは変わる事の無いもので
俺が抗おうが何しようが
無駄になるのだ

「・・・・・・・」

ゆるゆると、
目の前にある足から上へと視線を向けると
俺を見下ろしていた瞳とぶつかった
優しく見下ろすその顔が、
今この状況に落とした人物とは思えないほど優しすぎて
そして楽しげで、

見詰め合ったまま
強烈な痛みが、
いや、
激痛が俺を襲った

「ふっ・・・・ぅぐ・・・・!!!」

ズズ・・・・ズズっと肌を切り裂くというよりも、
切れない何かで肌を傷つけるような痛み
歯に力を入れて、
目の前の西園の足を掴んだ

「綺麗に仕上がるよ、メイジの肌は綺麗だから」

そう
痛みの合間に声が聞こえ
返すこともなく

いつまでも続くような拷問に近かった









+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++

ついに!
ついにこのネタに取り掛かってしまった・・・・・!!
もー知識取り入れるのに時間かかった
よって至らなかったり
むしろ作っちゃった部分がありますが、
目を瞑ってください
スイマセン
難しいねっ・・・・・・・!!


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