く ら げ































白い上等のシャツを羽織り、
一つ一つボタンを留めていく
差し出されたネイビーの下地に白い格子の模様の入ったネクタイを軽く締める
ジャケットはボタンは留めずに袖を通しただけにした

「できたな、」
「えぇ」

一連の動作を間近で見ていた斉藤が俺の終わりに声をかける
頷いてその顔を見上げると、
ふっと腕が伸び

「ねじれてるぞ」
「・・・・・」

後ろの襟足に指が滑りなおされる
近づいた至近距離の瞳が俺を見据えていた
ふとかげり、
目を眇めると軽く唇に何かが触れる

「、」

欲を感じさせない挨拶のように触れる唇
かさついた唇を濡れた斉藤の舌で一撫でされた

「・・・・・」
「・・・・・」

目は見合わせたまま斉藤の行動を見ていると、
また何事も無かったように離れていく
トン、
と歪んだネクタイの結び目を叩かれる

「飯は食うか?」
「いえ」
「言えば用意するぞ」
「いいえ、朝は食べない主義です」
「そうか」

そう頷いてからきびすを返し、
襖を開けた
部屋の中の明るさに慣れた目が痛みを覚えてよりいっそう眇める

「・・・・・今、何時ですか?」

後に続いた背中に問いかけると腕が上がる

「10時を過ぎた頃だ」
「・・・・そうですか、」

今から会社に行こうにも完全なる遅刻だ
あの口煩い上司になんやかんやと言われるぐらいなら休んでしまう方が楽だ
次の日が怖いけれど、

「サイトウさん」
「何だ」
「俺の携帯どこですか?」

会社に連絡を入れようと思い、
自分のではない真新しいスーツを探らなくとも自分の携帯は見つからない
きっと目の前の人物かアノ人が持っているだろうと思い聞くと、

「どこにかけるつもりだ?」
「会社ですよ」
「・・・・・・」

遅くなっても休むと連絡入れれば明日の小言は三分の一ぐらいは減るだろうと予測する
あまり変わらないだろうとは思うけれど

「しなくても大丈夫だ」
「・・・・・なぜですか?」

玄関先で靴を履き替えながら言われた言葉に、
一瞬の間を空けて再度問いかける
店の者に見送られながら外へと出た斉藤の背中を見詰める
続いて俺も出ると、
門前に止められた黒い車の前で

「行く必要が無いからだ」
「・・・・」

がちゃりと人の手によって開けられた車体の中へ滑り込むように乗る
続くはずの俺はその前で足を止めた
中で足を組みながら前を見詰める斉藤を見つめる
答えは返ってこない

「乗れ」
「・・・・・・」
「後続車の邪魔になる、早く乗れ」
「・・・・・アナタ方が、人を気にするのですか?」
「時と場合でな」

くっと笑われた声に少し苛立ち
乗らずにもう一度先ほどと同じ質問を繰り返した

「なぜですか?」
「・・・・・・」
「なぜ、する必要が無いんですか?」

繰り返すも返ってくるのは無言
前を見据えたままに斉藤は口を開かなかった
俺の隣に立ってドアを開けている男が視線で早く乗れと即してくるが、
同じように俺も一切を無視する

「斉藤さん」
「・・・・いいから、乗れ」
「嫌です」
「乗ったら答えてやる・・・・・前田」
「はい」

俺ではない名前を口にすると、
ドアを開け待っていた男が俺の背中に回って押した

「失礼します」
「っ」

ドンと押され危うく頭をぶつけそうになるのを押さえ込まれて回避される
状態を組めた瞬間を狙って腰を押されると、
そのまま前のめりに倒れるように車の中へと入れられた
バタンと閉められると、
運転席に俺の背中を押した男が乗り込んでくる
程なくして車は動き出した

「・・・・それで、」

もうこうなったら大人しくするしかなく、
居住まいを正しながら横に座る斉藤を横目に睨む

「理由を教えてください」
「あぁ・・・・・そうだな、」

足を組み替えながら、
何がおかしいのか笑いながらこう答えてくれた

「お前の会社にお前の辞表を出したんだ」
「・・・・・・ぇ」
「本日付で一身上の都合により退社いたします・・・・てな、」

そう言い終えてまたもくつくつと肩を揺らした

退社・・・・?
一身上の都合により、本日付で・・・・だと?
そんなこと、
そんなこと俺はっ

「書いた記憶なんてない」
「お前が気を失ってるときに書いたからな」
「会社を辞めるつもりもないっ」
「そうか、」

そうか?だと・・・・!
何でそんな一言で終わらせられる!?
俺の、
俺の個人的な問題をどうして!?

「誰が・・・・そんなっ」
「アノ人が、ご自分の手で書いたんだ」
「勝手にそ・・・・・・・は?」

思わず文句を止めて聞き返してしまった
何?
誰?
アノ人?
アノ人って・・・・・アノ人が!?
そんな、

「書ける・・・・・の、ですか?」

思わず状況を忘れてそんなことを口走ってしまった
ソレくらい驚いた
あの何でもかんでも人任せなアノ人が、
自分の手で?

「有り得ない」
「同感だ、でもアノ人が書いた」

ソレはもう楽しそうに書いたそうな、
その時の状況でも思い出したのか大きく揺れる肩に
よほど可笑しかったのだろう

「それはもう、ペンを片手に紙と睨み合っていたぞ」
「・・・・・・」
「文面はどうとか言いながらな、それはそれは珍しいほどの真剣な顔で書いていた」
「それを・・・・」
「そう、今日の朝一番に会社に届けたよ」

誰が?とは愚問なのだろうか・・・・・
やはり返ってきたのは

「アノ人がな、お前の上司に直接手渡したそうだ」
「・・・・・それは、」

とても不憫な
そうとしか言いようが無い
爽やかな朝の時間にアノ人と面向かうとは

「菅が笑を堪えるのが大変だったと言っていた・・・・・なぁ」
「・・・・はぁ」

俺がもし同じ立場でもそうだったかもしれない、
アノ嫌味な上司が顔を青くさせている姿が目に浮かんで・・・・・
思わず笑みが浮かんでしまった

「・・・・・そうですか、」
「そうだ、だから必要が無い」

だからかける必要も無い
明日の心配もいらない
悩まずにすむ言い訳
それらを思って

「・・・・・そうですか、」

何故だか
とても、
もうどうでもよくなってしまっていた

「・・・・・・」

シートから離していた背中を
そこに預けて力を抜いた
































+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++

へいっ
かなり久しぶりだぜい(汗)

や・・・・やく、よ・・・んかげつ?ぶりでしょうか、ね(大汗)????
とtれも、
とてもとてもお待たせしてしまってスイマセン!
しかも、
せっかくの更新なのになんだが話が進まなくってスイマセン!
しかもっ
斉藤さんと明治がまたちゅーーしてるし(えぇ)
投げやりな明治君です
あーもういいよ、
何でもいいよ、
抵抗すんのも文句言うのも面倒ってな感じです・・・・つか、文面で書けってのねこんな事はっ

でも、
そんなシーンを書くのは楽しかったです
大人の割り切りみたいな、
雰囲気が出てればいいっす・・・・・!!
力不足ですけどね!