□ 可愛い君









日の当たるサンルームに赤い髪の麗しい人物が白い陶器のカップを傾けていた
ゆらりと湯気の立つ中身を見つめながら
一つため息
憂いのその表情は見る者を感嘆の息をつかせるのだった
しかし、
当のご本人の思考はと言うと・・・・・

「あの浮気男・・・・・今度はどんな手を使って懲らしめてやろうかな・・・・・」

と何とも物騒なことをその脳裏に描いているのであった
赤い髪の麗しの人物は
レッド・ファーボニック・ルックスクラット
この屋敷をおさめる男の大事な大事な奥方である

カップをソーサーに置いて背を預けながら天井を見上げた
見上げる先はきっとそこにどこかの未亡人やらお若いお嬢さんを連れ込んでいるであろう自分の夫がいる部屋
目ぼしい部屋は知っている
むしろそこしか使わない
今日も今日とて気が向いてこの家に帰ってきたレッドは誰にも帰りを告げる事無くこのサンルームのこの椅子に座って、
自分で用意したお茶を傾けているのである
実を言うとレッドはほとんど家に寄り付かない放蕩嫁とか言われているのだが、
実際はそうでもないのだ
ただ誰にも帰りを告げずにこの場所にいるのである
そして何事も無かったようにまた旅に出てしまうのだ

ただ今回は旅先で面倒ごとに巻き込まれややお疲れ気味
少しここに留まってみようかな、
そう考えて帰ってきたのだ

「どうしようっかな・・・・・・」

足を組み細い指をテーブルの上でトントンと鳴らす

「おや、レッド様」
「!」

小さく息をついた瞬間
背後に人の気配
慌てて振り返ってみるとそこには執事長のティーダが立っていた

「お帰りなさいませ、いつお戻りに?」
「あ、あぁ・・・・つい先ほど」
「そうでございますか・・・・・お呼びいたしましょうか?」
「いや、まだ良い」

ちょこっと首を横に傾げさせ柔らかく微笑むティーダ
こんな人畜無害を装ってはいるがそうとうの腹黒だと知っているレッドは内心ドキドキしながら笑みを返す

「お茶のおかわりお注ぎいたしましょうか?」
「ありがとう」

ポットを手にそう問いかけられ頷く
こぽこぽと赤い液体が白いカップに注がれた
それを目で追って

「ジェッドは?」
「はい、今日はアーベイ家の末のお嬢様とお会いになっております」
「・・・・・そうか、」

一切隠しもせずに口にするティーダに呆れ半分おかしさ半分に笑って、
テーブルの上に肘をついた
それを咎めずにティーダは笑う

「何も仰らないのですね?」
「・・・・何を?」
「旦那様のしている事をです」
「あぁ・・・・そうだな、言っても仕方ないとは思ってるけど」

問いかけられた言葉に苦笑を浮かべて
視線を上へと向けた
いつもならこの部屋に来て数時間たてば自分の気配を嗅ぎ付けて降りてくるはずなのに
今日はそれが無い
きっとお楽しみの真っ最中なのだろう
まぁ気配を極力抑えているのもあるけれど、
そんな行為を黙認しているとは言えさすがにそのしている行為を見たいとは思わない
むしろ見たくない

「貴方様が呼べば一瞬にしてすっ飛んできますよ?」
「っふ・・・・だろうね、けど・・・・・」
「けど?」
「黙認しているかとは言え、実際にそういう行為を認めたくないというのもあるのだよ」

そう黙認と言うよりは見てみないふり
意味は似ているのかもしれないが自分にとっては少し違う

「あの男は私のものだよ、そして私はあの男のものだ」

それは変わりえない事実
あの男が私のものであったからとは言え自由にできると言うワケではない
なぜなら私自身があの男のものだから
何をしても許されるわけでもない
何かを強要できるわけでもない

「結局はアレはアレ、私は私なのだから言っても仕方ないのさ」
「そうでもないと思えますが・・・・・・ねぇ」
「まぁ・・・・あの男に私が本気で止めろと言えば止めるだろうな、」
「だったら言えばヨロシイのでは?」

言おうと思ったことが無いわけではない
何度も思っていることのほうが多い
そりゃ誰だって自分の恋人ましてや夫であるはずの男が、
自分達の家に愛人を連れ込むのをよしとするはずが無いだろう

「でも・・・・・そうしたら私に自由は無くなる」

あの腕の中に閉じ込められ
自由は決して無くなる
右も左も
暗闇も光も
朝も昼も
何も分からずにあの腕の中ですごすことになる

「私はそれを望まないし・・・・アレだってそれは望んではいない」

キレイな籠
扉の開いた籠
いつでも飛び立ち
いつでもその籠に帰ってくる
その迎えた腕の中で時々じゃれ付き
また空を求めて飛び去る

「それが良いと・・・・・その方が良いと思ったから、そうしている」

私がいない寂しさをそこらへんに飛び回る蝶で気を紛らわす
捕まえては弄び
飽きたら次の蝶へ
そして私が帰ったらそんな蝶には目もくれなくなる

「あぁ・・・・・そうか・・・・・」
「?」

そうか
何故こんなにもイラつくのか分かった

「私が帰ったのにアレは私に気づいていないからだ」

籠に戻ってきたのに
主人の下へ帰ってきたのに
いまだに気晴らしの蝶に現を抜かしているから
だからイラつくのか
そう腑に落ちると自然と笑いがこみ上げてきた

「どうやら私は思ったよりもアレに心を奪われているようだ」
「旦那様は想像以上に貴方にご執心ですよ」
「ははっ・・・・・私が考えてる以上にか?」
「それ以上、計り知れないくらいに」

怖いな、
そう冗談にして肩をすくめる
しかしティーダの言ってることは本当のことだろう
目が笑っていない
それに身に染みてもいる

「そろそろアレに構ってもらおうか」
「そうなさいませ、ココは私めが片付けておきます」
「ありがとう」

椅子から立ち上がるとティーダは柔らかく笑った
それに礼を言って部屋を後にする
もう気配を抑えることはせずに自分の存在をこの屋敷に張り巡らせる







「さぁ・・・・・・私と何して遊ぶ?」




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期間限定で出てきた『可愛い君』のバイオレンス・夫婦ことジェイクウッド&レッド夫妻のお話
お話し?
違うね・・・・・レッドとティーダさんの会話って感じですね、
あれ〜オカシイな・・・・ホントちゃんと旦那様が出てきてちょこっとシリアスになるはずだったのに!
微妙なせつな系に、
そして何が言いたいのか少してかかなり微妙で分かり辛いですね、
スイマセン!!
オカシイ・・・・・!!
ま、いっか
近いうちにまた書きたいですねー
むしろダニウェル×アンリが書きたいです!