■ 少年のロマン













少年のロマンとは??
むしろ男のロマンとは??







「やっぱ・・・・あれでしょう!!」

そんな具合で握り拳を作りながら打ち震える久坂。
何がアレなのか?
その先は頭の中で妄想が暴走し、ニヤケたまま言葉は続かなかった。
その姿を仰ぎ見る、黒田と一条と三嶋と真館。
ちょっと異様なメンバーである。

「で?結局さ〜久坂は何が言いたいの?」

的確な黒田の突っ込みに周りが頷く。
それで漸く妄想することに気が済んだのか、ニッカリ笑いながら椅子に座る。

「別に、コレといって何か言いたいって訳じゃないんだけどさ〜十人十色な意見も聞いてみたいなと、参考にしたいなと思いまして!!」
「参考にしてどうすんのさっこの変態!!」

きゃーーいやーーフケツーーとか言いながら叫ぶ三嶋。

「不潔とは失礼千万な!!だって聞きたいじゃない!!」
「・・・・で、久坂と言うところの【少年のロマン・男のロマン】って?」

頬杖付いて、おざなりに聞く真館。
横で、付き合ってられないという態度で、黒田は文庫本を広げている。
一条は無言で聞いているのか聞いていないのか・・・・そんな感じだ。

「良くぞ聞いてくれたマチコ!!俺のロマン!それは――」
「やっぱ変態じゃん!!」
「まだ言ってねーよ!!」
「きゃーーーー変態がココにいま〜〜す!お巡りさ〜〜〜ん!!」
「勝手に呼ばないでーー!!」

きゃーきゃー騒ぐ三嶋に飛びついて口を塞ごうとするが、
のらりくらいと避けられて変態を10回も連呼される久坂であった。

「・・・・・黒田のロマンって何?」
「・・・・・・・」

収まりつかなくなってる二人を無視して真館が黒田に問いかける。
それに無言で返しはしたが、ピクリと片眉が動いた。
何だか地雷を踏んでしまったような雰囲気・・・・・

「く・・・黒田君・・・・??」
「俺のロマン・・・・・って聞いてるのかな、マチコ?」
「えっと〜・・・・・言いたくないのなら良いかな〜・・・なんて?」
「いや言え黒トッポ!俺は聞きたい!」
「俺も聞きたい!久坂の変態じみたロマンなんかよりもお前のが好ましい!!」
「どういう意味よ!?」
「意味なんて必要ないわ!!」
「きゃーーーイジメ!?イジメなのね!?」
「教えてあげよう。」

突っ込みもなしに流される。
久坂心で泣き、三嶋ほくそ笑む。

「俺のロマン・・・・寧ろこうであって欲しいのは・・・・強要しない人で、華奢で、お淑やかで、か弱くて、清楚で、可憐で、出しゃばらないで、我侭じゃない人だ!!」
「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」

ってソレのどこがロマン??
4人はそう思った。

「俺が優位に立てるということだ!!」
「あ〜えっと・・・・黒トッポ??」
「どどど・・・どうした?」
「黒田何か・・・・あったのか?」

ちょっと引き気味にそう問いかけると、
キっと睨まれながら

「別に!何もない!!俺の好みを言ったまでだ!!」
「いや・・・好みは・・・聞いてないんですけど・・・・」
「どうして俺がっ・・・・俺が受ける立場なんだ・・・・・!?」

我を忘れたかのように、
心の中に仕舞い込んでいたものを勢いあまって滑らす。

「「「「・・・・・・・・・・・・えっ!?」」」」
「・・・・・あ」

爆弾発言投下。
一条でさへ思わずといった感じで聞き返してしまった。
言った本人は、
口を押さえて少々の冷や汗を流しながら目を泳がす。

「黒田・・・??」
「黒トッポ・・・・??」
「今の・・・って、どういう意味?」
「・・・・・・黙秘権を執行させていただきます。」

宣誓するかのように右手を挙げ、左手は口を押さえる。

「ズルっ!!」
「言い逃げってズルイと思います!!」
「きっ気になって眠れない!」
「アタイのゆで卵肌が荒れちゃうじゃない!」
「絶対今日気になって眠れない!5分は眠れない!」
「それは眠れないって言わねーから!このノビ太君め!!」

手鏡を覗き込む三嶋の横で、
眠れないを連呼する真館の首を絞める久坂。
一条は無言でじっと黒田を見つめた。
そんな熱い目で見詰められても言えません!!
と言うように首を振ってそれ以上は喋らなかった。

「くっそ・・・・こうなったら!三嶋っお前のロマンって何だ!?」
「俺かよ!?」
「きゃーー潤のロマン!?聞きたい!言って!」

急に話しを振られて動揺するかと思われたが・・・・
本人は一瞬考え込んだかと思うとニヤリと厭らしい笑みを浮かべた。

「うわっ・・・・三嶋のその顔エロっぽい・・・!」
「潤ちゃんは淑女じゃなかったの!?」
「っふ・・・何を言うかなメグたん?俺のモットーは【昼は淑女、夜は娼婦】だよ?」
「「【夜は娼婦】!?女性の憧れ【夜は娼婦】!」」
「いや、そんな憧れは持たないと思う。」
「と言うか・・・・【男のロマン】に近い・・・・」
「そのとおりだ一条!!男心が分かってるじゃないか!」

ぼそりと呟いた一条の言葉に、久坂がうんうんと大きく頷く。

「して、男心をモットーにしている三嶋たんにとってのロマンとは、何ぞや!?」
「俺のロマン!【跪かせる】ことだ!」

どうだーーー!と言わんばかりに胸を張ってどうどう宣言。

「うっわ(2回目)・・・・言っちゃったよこの人・・・・・」
「【跪かせる】・・・・・って・・・・何か・・・・響き違くない?ロマンだけど・・・ロマンじゃないような!」
「【言いなり】も良いよね?」
「ぎゃっ!」
「潤ちゃんっブレイク!何か違うっ言ってる事なんか違うから!!」
「え〜ロマンじゃん?俺の言いなりにさせるってのが良くねー?」

言ってることを否定させられて不満げな三嶋。

「三嶋たんって・・・そんなキャラだったけか・・・・??」
「ところで、後学のために聞きたいのですが・・・・【言いなり】って何を言いなりにさせるの?」
「・・・・・あら〜んメグたんったら!聞きたいの?」

よりいっそう久坂言うところのエロい顔を深くして、見た者をドキドキさせるような笑みを浮かべる。
幼馴染の見慣れない顔に素で頬を染める真館。経験値が10上がった!
禁欲生活を微妙に強いられている久坂ので微妙な所にクリティカルヒット!50のダメージ!

「・・・・・相手の切羽詰った顔って・・・・・そそられるもんなのよ?」
「先生っ!!先生と呼ばしてください!!」
「苦しゅうないぞ、久坂!!」

咽び泣いて手を握る久坂に、高笑いをして超ご機嫌な三嶋。
黙秘権実行中の黒田は密かに心の中で思うこと1つ。

『こいつ・・・・・俺と立場が同類だな・・・・・』

「アタイの知らない潤たんがいた!・・・・・お父さんっ潤たんが大人になっちゃったよ!」
「とっくの昔にね?」

独り言を呟いたのにそう釘を刺す。

「いやーーーーー!!タケちゃ〜〜ん潤たんがーーーーー!!」

そう言って駆けて教室を出て行く。

「マチコは敵を目前にして逃亡。」
「俺って敵かよ!」
「むしろ中ボス。」
「ラスボス系じゃねーの?」
「違います。ラスボス系は仁科会長系列の男です。」

思い浮かばれる顔にそうそうなるメンバーが残された4人の頭に並ぶ。

「俺ごときじゃ敵うメンバーじゃないんですけど?」
「対抗すら出来ません。」
「・・・・その中にアノ人がいるのがムカつく・・・・・!」
「「アノ人?アノ人って??」」
「黙秘権!!」

良い所で口を閉ざす。

「あ〜ところで一条ちゃん。君の【少年のロマン・男のロマン】とは?」

今まで聞き役に徹していた一条にそう問いかける。
ふっと・・・・遠くへ意識を飛ばした後に、
口元に微妙な笑みを浮かべて。

「【少年のロマン】だったら・・・・初デートでキス。」
「きゃっ!一条ちゃんたら!!」
「顔に似合わず可愛いこと言うなって!」

乙女ごっこのように、
手を両頬に当ててきゃーっと黄色い悲鳴を上げる。
しかし次の瞬間には・・・・

「【男のロマン】だったら・・・・・・泣いておねだり。」
「この俗物めがーーーーーー!!おいらの純情を返せーーーー!!」
「一条って結構ムッツリさんだったのね・・・・・」



人は見かけによらないのだった。