■ 現実逃避、承ります











人には受け入れられる事と、受け入れられない事がある。



寧ろ、受け入れられる人と受け付けない人。
もしくは、理解できるかできないかの問題だ。
何故に今そのような事を言っているかと言うと・・・・・
現実問題、有り得そうでありえない事が現在進行形で目の前で起こっているからに他ならない。


黒田が・・・・・黒田が・・・・・泣いているのだ!!
いや、人間生きているのだから泣いてたっておかしくない!
黒田だって人間だし、高校生になったばかりのまだ子供でもある。
しかし!しかしだが黒田が泣くだなんて、そんな・・・片瀬先生が真面目に授業をするよりありえない!!

目の前でボロボロと涙を流す黒田。
一種、異様な光景。
何でもかんでも笑って流す根性と、平常と異常の境目を彷徨うような1年C組の連中ですら引いている。
これもある意味、異様な光景・・・・

「くっ黒田・・・・??」
「えっく・・・・っく・・・・」
『ひぃっ(恐怖)!』

思わず、その嗚咽に身体が震えた(超失礼)
そんなことは気付かずに泣き続ける黒田・・・・・一体、俺にどーしろと言うのだろう?
抱いて慰めなくてはいけないのか!?
それだけはカンベンさせてください!

何でこんな事に・・・・
いつものように4時限目の授業を終えて昼休みに入り、それとなく他愛もない会話をして食事を済ませたはずだ。
俺は読みかけの本を出して、久坂はどこかに駆けて行き消えて、
仲原はいつものごとく指を鳴らして校舎裏に消え・・・・
そして黒田は・・・・誰かに呼び出されて、教室を出た。
出て10分もしないうちに戻って来て、無言で目の前に座ったかと思うといきなり泣き出したのだ。
何があったかも分からないのに、慰めようもない。
聞いても嗚咽しか返ってこない。
そして、今に至ること数分経過中だ。

「・・・・・・・」
「っく・・・・っひ・・・・・」
「・・・・・・・・・・・」
「えっ・・・・く・・・ぇう・・・・」
「・・・・・・・・・っ!」

駄目だ!!俺には駄目だ!!誰かっ誰でも良いから助けてくれ!
そう思って周りを見渡すと、一斉に全員が目を逸らした。
・・・・・・・・・っ何てヤツラだ!!
無理もないかもしれないが、だからと言って目を逸らすこともないかと思うんだが、そこのところどうなんだろう!?
何でこういう時に限って久坂も仲原も蜂屋もいないんだ!?
新手の嫌がらせか!?
イジメか!?
イジメなのか!?
一人パニクったところで問題が解決しない。
むしろあらぬ方向へ行きそうだ・・・・・落ちつけ俺、落ちつくんだ和泉!
勇気をふり絞れ!!
お前はやればできる子だろう!?

「くくく・・・・黒田?泣いてちゃ・・・何も解からないぞ?」
「・・・・・・・っく・・・・」
「って言うか・・・男がみだりに泣くもんじゃない・・・と、思う。」

むしろ黒田は泣かないで欲しい・・・・・キャラ的に!

「何があっったんだ?」
「・・・・が・・・・」
「え?」
「・・・って・・・」
「黒田・・・・聞こえない、はっきり言って?」
「・・・・・・・」

そこでいったん言葉を切って、涙にくれた顔を上げてこちらを見つめた。
顔が良い奴は得だ。
だって・・・・涙で顔がぐしゃぐしゃになろうが、それはそれで良い顔なのだから。
現に黒田の泣き顔も・・・・・黒田に似合わない最大の言葉で言うなら、
可愛いと言えてしまうのだから。
その真っ赤になった目と瞼に涙の粒をつけて、情けない表情を作る。

「・・・・・・・和希が・・・・・っ」

その表情に少しだけ・・・不本意ながらほんの少しだけドキドキしながら
黒田の言った名前を反芻する。
かずき?
・・・・かずき・・・・・
あぁ蜂屋ね!
確か・・・・蜂屋の下の名前って和希だったな。

「蜂屋が・・・・・・何?」
「・・・・・・・」
「黒田・・・・??」
「和希が・・・・俺に・・・・・・・・・・って・・・言うんだ。」

は?蜂屋が何を言うって?

「ゴメン・・・聞こえない、何て言ったの?」
「・・・・・・・絶交だって・・・・!」
「・・・・・・・」
「俺とはっ・・・・絶交だって、もう口聞いてやんないって!」
「・・・・・・・・」
「遊んでくんないってぇ・・・・・・・うぇ〜!!」

そこで黒田は治まったと思っていた涙が勢いつけて溢れ出させたかと思うと、机に突っ伏して泣き出したのだった・・・・・・・
ごめん・・・・・俺が泣きたい!!

「和希が〜〜〜〜っっ・・・・俺の事嫌いって・・・・嫌いって・・・・・!」
「・・・・・・はっ・・・・・あははっはっ・・・・・」

そこでプツンと何かが切れた俺。
気がついたのは、昼休みも終わり、久坂たちが戻って来てから少したった頃。
虚ろな目をして乾いた笑いをこぼす俺と、
泣きに泣いて机に突っ伏す黒田の異様な光景にさすがの仲原も動揺を隠せなかったようだったらしい。
付き合いの長い久坂は慣れたものらしく、蜂屋と仲直りさせていた。
何でも、一年にいっぺん必ず黒田と蜂屋の大喧嘩があり。
反乱を起こした蜂屋の言葉に黒田が泣くというのがある事を後からになって聞いた。









そいう事は早く言って!!