■ 一方的な愛











昼休みの教室で昼を食べている。
何故だかこのクラスの連中はドコへ行くともせずに、この教室の中で食べる者が多いのでいつも騒がしい。
そんな騒がしい教室で、無口な一条といたら・・・・

「一緒しても?」

クラスメートである黒田が食えない笑みを浮かべて立っていた。
この食えない笑みを浮かべた時の黒田とあまり係わりを持ちたくない俺は、
嫌な予感を覚えつつもたかだかお昼を食うだけの事なので頷く。

「・・・・・・・・・・・・・・・・どうぞ。」

俺の返事に一言礼を述べて、誰かのイスを引っ張り寄せて座り弁当を広げ食べ始める。
その間、他愛無い会話が続いた。
次の授業の事や数学の問題で躓いた箇所の意見、英語の訳についてなど無難かつ色気もそっけもない会話。
相変わらず一条は租借と頷きを繰り返すのみだった。
なんて、気を許していたのが間違いのようである、昼もそろそろ終わりに近づくと言う時に、
このクラスの委員長がフラリとやってきた。
この時点で気付いて逃げるべきだったのであるが、如何せん俺は食事のスピードが人よりかなり遅いのである。

「や〜黒田君!!今回のテストの結果は見たかい!?」
「あ、やぁ委員長・・・・まだ、見てないよ。張り出されてないよね?」

弁当の包みの紐を結びながら黒田は笑顔で応じる。

「ついさっき張り出されてたんだがね、いや〜なかなかの点数だったよ!今回も僕の負けだった!」
「そうなの、かな?でも、努力の賜物だよ。」
「そんなご謙遜を!毎回負けてばっかりの僕にも少し余裕をさせて欲しいくらいさ!」
「そんな・・・それは委員長に失礼だろう?やっぱ委員長の実力で僕を抜かないと、意味がないよ。」

言葉の語尾などは優しく爽やかなのに、言葉のニュアンスが痛い、結構痛い・・・・
しかも、気持ちの悪いくらいの笑顔つきだ・・・・その反面、委員長・仁科は笑みの表情に青筋が浮いている。
はっきり言って・・・・居心地が悪い・・・・頼むから余所でやってほしかった!
そんな心の意見も虚しく、黒田はどうやら止めにかかるようだった。

「あのさ・・・・委員長、前から気になっていたんだけど・・・・」
「〜〜〜〜〜〜何だねっ!!?」

ちょっと困ったような、言い辛そうな表情で目を泳がせ、怒りを抑えることを止めた委員長に視線を向けなおしてから・・・・

「委員長って・・・・・・・・もしかして、俺に気があるのかな・・・・・」
「っっっっ何だって!?!?」

思っても見なかったその言葉に、裏返る声。

「ごめんね・・・委員長、その気持ちすっごく嬉しいんだけどさ。」
「・・・・・・・・!」
「・・・俺には、もう心に決めた人がいるからさ・・・・委員長の気持ちはホントに嬉しいんだけど、諦めてくれないかな・・・・俺のことは。」
「@#^%△+”×:?○〜〜〜!!!!」

委員長ってば・・・顔を真っ赤にさせたり真っ青にさせたりしながら、言葉にならない声を上げて卒倒しそうだった。
傍から見ていて、もの凄く気の毒だ・・・・・・
何て紙パックのストローを咥えながら傍観していたら、

「ちなみに、その想い人って言うのは、久保田君ね。」
「ぶはっ!!!」

漫画みたいに珈琲牛乳を噴出して、ばっと黒田の顔見る。
酷く・・・・楽しそうな笑みをしている。
って言うか人を巻き込むな!!と言う意思をこめてにらむと、
呼んでもいないのに事態を最悪な方向へ持ってこうとする奴が飛び込んできた・・・・・

「あいや〜待たれーーーーーい!!」

俺たちの横を横切っていた罪もない級友をドーンと吹き飛ばし、
急ブレーキを踏んだ車のような音を上履きで立てながら久坂が現れた。

「久保ちゃんの心はこの久坂のもんじゃーーー!!」
「んなわけあるかーーーーー!!」

いつにも増して人の事を自分の所有権呼ばわり男に、したくもない突込みを入れる。
しかし、慣れっこ・・・
と言うよりこの状況を楽しむつもりでいる黒田は腕をゆっくり組んで睨み上げる久坂を薄っすらとした笑みを浮かべながら、

「ほほぅ・・・そうなると、俺と久坂はライバル同士になるな・・・・負けないぞ。」
「へん!この久保田マニアに敵うわけなかろうが小童めが!!」
「ちょっ久坂!!何がマニアだ!?何がライバルだ!!」

俺のほうがマニアだとか言い合っている2人に声を荒げるが、とり合おうとはしない。
むしろ、俺の声が届いていないかのようだった。

「って聞けー!!」

地団太を踏むがやっぱ聞いてもらえない。
お互い睨み合ってる(振りにも見える)久坂の肩を掴んだ瞬間、耳を疑うような言葉が脳みそを直撃してきた。

「俺なんかな、俺なんかはな!毎日、久保ちゃんの後を追って家にちゃんと着いたかどうか、最後まで見守ってるんだぞ!!」

どうだ凄いだろう、的発言。

「「そりゃストーカーだ!!」」
「久坂・・・・・さすがに、それはいただけない・・・・・・」

さすがの委員長も俺と声をハモらせ怒鳴り、そっち方向で攻めてきたか?と言う呆れ顔で黒田が珍しくも嗜める言葉をつぶやいた。





身の危険を感じた昼休み・・・・