■ 続・種も仕掛けも無い










久坂は相当落ち込んでいた。
前回の久坂テンチョー・ショーは不評に終わったが、
その後急遽始まった仲原久保田ショーは大盛況に終わったからである。

机の上に体育座りをしながら真剣に考えていた。
誰もいない教室の真ん中で。
一種異様な光景・・・・下手したら学園七不思議の要因になりそうな。
しかし、本人はそれど頃ではなく一体ドコに非があったのか考えているのだから・・・・
だから背後に迫った不穏な人物たちの気配に気付けずにいた。

「・・・・はぁ・・・・・・」

考え始めたから何度となくついた溜息。

「ソコの迷える子犬ちゃんv」

ポンと肩を叩きながらかけられた声。
久坂にしたら永遠に関わりにあいたくない人物の声だ。
振り返って違うことを祈りながら確かめたが・・・・

「っげ!!」
「おやおや〜そんな声出されるなんて侵害だな〜く・さ・か君vv」
「そそそそっそ相馬先輩!!」

綺麗な顔に不釣合いな厭らしい笑みで己を見つめる相馬葵。
肩に置かれた手からジワジワと寒気と悪寒が生まれる。

「此処で逢ったが百年目・・・・・君と僕にとっては素敵に似合う言葉だね?」
「うひっ!!」
「考え直してくれたかな?僕に落ちるって??」
「考え直しません!落ちません!!」
「いやいや、一回で決め付けることはない。人間一度は色々なことに挑戦しなければ、ね?」
「時と場合と物事によると思うんでスケ・・・って!何してるんですか!?」
「・・・・・説明する?」
「い〜〜〜〜や〜〜〜〜〜〜(涙)!!」

机の上に押し倒される久坂。
助けを求めるために上げた声は相馬の手によって塞がれる。
喰われる!?
って思った瞬間・・・・・・

「はい、葵〜そこまで〜〜〜」
「えぇーーーー!!まだコレからでしょうが!!」
「おあずけです。今日はソレが目的ではありません。」
「・・・・久坂大丈夫か?」

そう言いながら現れたのは、クラスメートの仁科委員長とその兄、仁科生徒会長に副会長の早瀬先輩。
もうお綺麗集団としか言いようのない煌びやかな顔の持ち主たちだ。
目に眩しい。

「いいんちょっ命の恩人!!」

仁科の腰に抱きつく。が、すぐに離される。

「勝手に人のモノに触らない、OK??」
「おおおおおっおっげ(汗)」

顔は何時ものように優しく笑っているのに目だけは人を殺せそうなほどの殺気を漲らせてそう問いかけられる。
頷くしかない。
首に食い込んだ指を外されて、漸く息を吸った。

「さて、ものは相談だ久坂君。」
「げふっ・・・・・何すか??」

咽こみながら仁科会長の問いかけに答える。

「君に頼みたいことがあるんだ。」

にっこりと綺麗に早瀬先輩に微笑まれながら、
そんな言葉を貰い。

「・・・・スマン・・・・久坂。」

仁科にはホントに申し訳なさそうに謝られた。

「・・・・・・・・・・・・・・」

何だか本能的に逃げなくてはと脳が警鐘を鳴らす。
マズイ・・・マズイマズイマズイぞ!!
何だか相当マズイ状況だぞ!!
ガタンと勢いよく机から飛び降りて逃げようと試みたが、
予想された動きらしく相馬先輩にしっかりと抱きこまれた。

「う〜〜ん・・・・思ったより良い抱き心地だ!!」
「ぎゃーーーーーーー!離せーーーーってか離してーーーーーーー!!」
「葵、絶対に離すなよ?」
「勿論よ!俺にかかったら可愛い子犬ちゃんは・・・・・くくくく」
「ぎゃーーーーーー(怯)っ!!」
「ににに兄ちゃっ・・・!?」

俺の本気の怯えの叫びにさすがの委員長も心配になってきたのか、
ニヤニヤ笑っている兄を見上げる。

「あぁ・・・・なっちゃんは心配らないよ、大丈夫そんな酷いことするわけじゃないから。」
「でもっ・・・・」
「そうそう、七海君は傍観しておいで。俺がやりたくて仕方なかったことをするまでだから・・・・・」

おのれ!!
今回は会長の陰謀でも変態ナルシストの陰謀でもなく副会長の陰謀だったか!
ぬかった(涙)!!
銀フレームの瞳の奥ですうっと深くなる笑みが余りにもキレイすぎて、
ぞくぞくとした悪寒にも似た戦慄が走る。

「さて・・・・葵、あれに!」
「イエッサーー!」
「なななんなんなにするんすか!?・・・てかなんてトコに入れようとしてるんですか!?」

見た事があるような箱が目の前に・・・・と言うか、
その箱に身体を入れられる。
てか・・・これって!?

「何でコレが此処に!?」
「コレは俺の私物だよ、子犬ちゃんvv勝手に持ち出しちゃ駄目じゃないか?」
「アンタの私物かよ!?」

見た事があると思ったら、ソレはつい最近利用したマジック道具。
しかも、溜息の要因となった切断マジックに使われる箱だった。
体育倉庫に眠っていたのを持ってきたのだが・・・・
まさかナルシストの物だったとは迂闊だった。
知っていたなら絶対に近寄らなかったのに!!

「で、ソレを俺が知ったからには子犬ちゃんに接触しなくちゃね?」
「で、なっちゃんがソレを誰が使って何をしたか教えてくれて・・・・」
「で、俺がやりたいと言ったら葵が承諾してくれてね?」

三人三様、別の種類の美形たちがにっこりと笑んだ。

「「「今に至るわけだよ久坂君(子犬ちゃん)??」」」
「ゴメンね・・・・久坂・・・・・」

今って・・・・今って・・・・・今に至るからって何だってのよ!!!
何の説明にもなってないよ!!
意味分かんない!!

「・・・・・勘弁してください・・・・・ホントに・・・・・・(涙)」
「ならん!!」
「その涙もそそるね!!」
「さ〜〜〜ってと、準備もそろったところで!!」

そんな早瀬先輩の声とともに現れた三日月刀。
アンタはアラブの人ですか!?

「では、【円の切断ショー!血が流れたってお愛想よ?】の始まり始まり〜〜!!」

はっ!??!!?

「それってお愛想で済まされないと思います(汗)!!」

訴えたところで何か変わるわけでもなかったが、せめても主張させて欲しかった・・・・
さよなら、お父さんお母さん・・・・
って、俺お母さんいなかった・・・・妹よ・・・
そして、愛しの久保ちゃん・・・・
俺が死んでも強く生きてね?
ってか、久保ちゃんそんなこと言わなくても強く生きてるか・・・
ソレはソレで悲しいけど・・・・・

「覚悟は良いか!?」
「何か思い残すことはないか!?」
「遺書書いとこうか!?」
「でも時間ないからソレは省略ね!!」
「ってか、そんなのアンタら決めることじゃないっしょ!!」

って、突っ込みいれた瞬間・・・三日月刀を振り上げる早瀬先輩。

「せーーーの!!」

「っぎゃーーーーーーーーーーー!!」








ズバン!!










その後、夜中の見周りに来た警備員が見たものは・・・・血溜まりの海の中に横たわる一人の男子生徒だった。
横には血のダイイングメッセージで【桃】と【○】と【あお】と残されていた。







次の日、理事長室の前に正座させられている生徒会長と副会長と書記と久坂の姿があったとか・・・・・