■ 日常風景









俺、久保田 和泉(くぼた いずみ)が高校生になって2ヶ月が過ぎた。
中学の時の担任に薦められるがまま受験をしようとした高校には入らず、
滑り止めで受けいたこの【私立 葉山学院】の高等部1年C組のクラスにて現国の授業を受けている。
何故に受けなかったかと言うと・・・本命の高校受験の前日に、42℃という信じられないほどの高熱を出して死にはぐり、
救急車で運ばれると言うベタ且つ何だかよくある話しのような事をしてしまったのである。
病院のベットの上で気付いた時には遅く、試験日を数日過ぎていたのだった。
それで悲観したか?と言う事はなく(むしろ担任が悲観はしていたが)、もって生まれた楽観的な性格のおかげか、
それとも本命の高校に必死こいて入りたかったと言う意思もなく、
二次試験もメンドーだったので何校か受けていた私立で受付期間が過ぎていなかったこの高校に入学したと言うわけである。

『ま・・・・悪くはないトコだから良いんだけどね・・・・』

先生の声を耳に入れながら窓の外を見上げる。
自由(すぎる)な校風が割に合って良く、空気が居心地良い。
そんな事を、初夏に近づいた日差しを浴びながら考えていたら・・・・・



「キャーーーーーーーーーーーーーっ!!!」


「「「「「っっっ!?!??!」」」」」

絹を引き裂くような甲高い悲鳴が教室全体に響き渡った。
・・・・・・・・・男子校のはずなのに・・・・
驚いて声がした方に全員が振り向く。
自分も後ろを振り返ろうとしたところで、背中にドスンと重みがかかった。

「んがっ!!」
「聞いて久保ちゃん!片瀬っちが・・・・片瀬っちが・・・・!!オイラに素っ裸の腹踊りを強制してきて、好きな人の前でしか玉の肌を見せられないので出来ません!って断ったらね、片瀬っち・・・オイラにお嫁に行けないような事してきたのーーーーーー!!」

わ〜〜んと泣き声を上げて、人の制服の肩に顔を埋めて喚く。
そんな事を言うものだから・・・現国の杉本老師が、心臓マヒでもおこしたかのように白目を剥いてピクピク痙攣し始めてしまった。
ちなみに、クラスメートも呆気にとられてコチラを見ているモノもいれば、ニヤニヤした笑みを浮かべたモノもいる(コレが大半)

そして背中に張り付いている奴は、肩に顔を埋めたまま何かポソリと呟いた。

「夢で・・・・・・ね」

俺だけに聞こえるように耳元で楽しそうに呟く確信犯・・・・・




穏やかなはずの高校生活が・・・・・
穏やかなはずに日常が・・・・




この【久坂 壱春】と、それを取り巻くあくの強い連中によって





破壊されていく・・・・・





コレが日常。