■ 理解できないモノと第一接近遭遇した場合の対処法






















目の前で滝兄は言った。

「これから俺とお前で天下を獲ろうではないか?」
「は?」
「って言うか快気祝いとしてお前に日本をくれてやろうかと思う。」
「・・・・・え、いらない・・・・・」
「じゃーアメリカ?」
「だから、いらないって・・・・」
「んだよーホントは俺が貰おうと思ってたユーラシア大陸が良いのか?お前はドコの国が好きだ?」
「え?・・・あぁスウェーデン・・・とか?」
「フリーセックスの町だな?汚らわしい!」
「いやっ意味が違うだろう!!」
「ちなみに俺はスイスが好きだ。中立国だし?」
「一番似合わなそうですね・・・・」
「寧ろ俺らしいと言え。」
「・・・・・・・・」
「隠し口座には何十億ドルという・・・・・」
「え!」
「欲しいのか?欲しいならココに印鑑押せ。」
「え、やだ!」
「何を〜〜〜〜!お前は保険金目当てか!?」
「違うし!」
「財産目当てか!?」
「違くてっい・ら・な・い・の!」
「我侭言うなこのボケ!!」
「わっ我侭じゃないやい!」
「うっせーボケ!お前なんか太陽黒点に左遷してやる!!」

そう逆ギレしたかと思うと、滝兄は俺を投げ飛ばした。
ひゅーーーーっと宇宙空間を飛ぶ俺。
どすん!
と黒点に落とされたかと思うと・・・・今度は、生徒会会長様が何故だか燕尾服にシルクハットで立っていた。

「げっ!」
「やー広瀬君。君に贈り物があるんだが受け取ってもらえるかな?そうか受け取ってくれるか、じゃ〜差し上げよう!」
「いや、まだ何・・・・ってオーーーーーーーイ!!」

差し上げようとか言ったかと思うと、岸本先輩が被っていたシルクハットを逆さまにして、中から小さな滝弟を溢れさせていた。
きゃいきゃいと騒がしい滝弟
むしろ、ぴよぴよと小煩い滝弟
わらわらわらわと小さな滝が俺の上を埋め尽くしていく・・・・・・・






っく・・・・く・・・・苦しい!!







「んーーー・・・・ん〜・・・・ぬあっ!」

あまりの息苦しさに目を開けてみれば、目の前に滝兄・諫早の顔。
余りにも近い!!

「おっは〜〜」
「お・・・・は・・・・・」

両手でグッパー

てか・・・・てかですね?

「何を・・・・してらっさるの、でしょうか?」
「七緒ちゃんを起こしてご飯を食べようと思って?」
「で、この仕打ち・・・と?」
「目、覚めたっしょ?」

この仕打ち、
諫早の身体が俺の上にキッチリはみ出さずに乗っている。
全体重をかけて・・・・・・

魘されるわけだよ!!
重いし!!

「で・・・・どいてくんない?」
「ん〜〜〜」
「ん〜でなくて!」
「ん〜〜」
「・・・・滝兄よ・・・・」
「い・さ・は・や」

もう、いや・・・・このマイペース男!!
顔に似合わないよ!
てか弟天使だよ!!

悪魔な兄は、降りる様子もなくじーーーーーーっと俺の顔を凝視続ける・・・・・
人様の胸の上に両肘立てて、顎乗っけて。

だから重いんだって!!

「・・・何・・・・」
「あのさ〜」
「?」
「・・・・・眼鏡って伊達?」
「?・・・・いや?」
「ふ〜〜ん・・・・コンタクトしねーの?」
「しない」

だって俺、先端恐怖症なモンでしてね、自分の指だって目ん玉に近づけらんないですから。
弱点、その1
オフレコでお願いします。

「・・・・・もったいねー・・・」
「はぁ?」
「あーーでも、俺だけでも良いか〜」
「・・・・・・」

何を一人で呟いているのやら・・・・
しかも、人の顔見ながら!

「外したら全然見えねーの?」
「そんなことは、ない・・・かな」
「ふ〜ん・・・・無くても困らない?」
「まぁ授業の時ぐらいしか必要は無い」

普段はね、
でも俺の顔?てか存在が派手らしいので、かけて地味度UPさせたいのよ。
穏便に静か〜〜に暮らして生きたいので。

「そう・・・・・」
「で、ソレが何?」
「別に」
「別にって・・・・滝兄よ・・・・」
「それイヤだって言ってんじゃん」

俺の呼び名に眉間にしわが寄る
そんな顔も愛らしいのだから役得ですよね?
言うこと聞いちゃうもん。
俺って美人に昔から弱いし?
性格ブスだったらぶん殴ってるけど、
滝兄の場合はブスって言うより・・・・ひん曲がってるってのが表現方法だし?
それを上回る可愛い子なんで、俺許しちゃう。

「どいて、諫早・・・・飯、食いに行くんだろ?」
「おぅ」

俺が名前を口にすると、素直にどく。
う〜〜ん・・・・可愛い・・・・
可愛いって癒されるよな〜〜

とか何とか思いながら着替えを済まして、顔洗って歯磨き終わって外に出ると竹林と井岡も外に出てきた。

「おっは〜七緒っちゃ〜〜ん!いさ〜!」
「おっは、」
「おは」
「おはよう広瀬、諫早。」
「うぃ〜」
「おはよう、井岡・・・・・あれ、滝は?」
「先に行ってるってっさ〜〜!あー俺、腹減った!!」

そう言って四人でエスカレーターを降りていく。
エスカレーターを・・・・・
てか!!
エスカレーターですよ!!
寮の中にエスカレーター・・・・・エレベーターも勿論、完備されてますけど!!
昨日、あまりの内装の豪華さに気を取られて突っ込むの忘れてましたが。
寮にエスカレーター・・・・

そんな事を手すりにも垂れながらブツブツ呟いていたら一段下にいた諫早が振り返った。

「エスカレーター如きで酔ったのか?」
「酔ってません・・・・滅入ってはいますが・・・・」
「ふ〜〜ん・・・・・・で、俺さ〜部屋出る時から気になってたんだけど」
「・・・・・・何?」
「お前、カバンは??」
「・・・・・・・・・・・」

は?カバン??

言われて諫早、そのまた先の下にいた井岡と竹林を見る。
ちゃっかりカバンを背負っている。

え?
えぇぇぇっ!!?!?

「戻んないの!?」
「戻るかよ、バカ。」
「七緒っちゃ〜〜ん常識よ〜!」
「・・・・一々4階まで上がるのメンドイしな・・・・・」
「ってか諫早!先に出る時に言えよ!!」
「そりゃ失敬。」

にやりと意地悪く笑った。
くっそーーーー!!
業とだ!絶対に業とだーーーーー!!

2階まで来たところで、俺は上りのエスカレーターに飛び乗る。
下に向かって動く階段には、苦笑いの井岡と爆笑の竹林、悪どくニヤニヤ笑ってる諫早が手を振ってフェードアウト。

ムカつく!!

だーーーーーっとノロい動きにイラついて駆け上って、右の長い廊下を駆けてった。
ポケットからカードキーを出して、入る。
入り口に置いてあったポーターの黒のショルダーを肩にかけてキーをロックして、走る俺。
青春!
じゃなくって!
こんな時は、まどろっこしいエスカレータではなく階段を二段飛ばしで下りる。
中学の時に習得した手すり越えをギャラリー無しで飛んで着地。

「俺ってスゲー」

得意の自画自賛。
だって誉めてくれる人見当たんないし?

ちぇっ

とか思ったら人の気配。
この時間帯なら寝坊じゃなかったらサボりだろう。
ひょっこりと廊下の端から向こうを覗いて見る。



瞬間冷凍



もしくは



瞬間硬直



2〜3メートル先で繰り広げられる熱いベーゼのショータイム
待って!待って下さいっ!!
男子校!男子校ですよ〜〜〜!!
しかも男子寮で〜〜〜す〜〜〜よ〜〜〜〜〜〜〜(涙)!!
女人禁制!
のっと・うーまん(壊)!

あわわわわわっ!

その場で立ち尽くして見ていたら(不可抗力の怖いもの見たさ)、キスされてる方って言うの?
小っちゃい方が、俺に気付いたようで目線だけをちらりとよこして来た。
そのとたん、ゾワゾワと背筋を這い上がる得体の知れない何か。

「!!」

その人は目だけで、薄っすらと笑ってキスを深くしていた。





で、逃げる俺!






に゛ゃーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ(暴走)!!