王様の部屋、王様の時間、そんな王様とは如何してなれようか



















場所は変わって





とある校舎のある階のある部屋の一室。
ドアは周りのものより重厚に作られ、その上には黒いプレートに金の達筆な文字で【生徒会室】書かれている。
そう、ここは珀薇の生徒のTOPが集まる部屋。
ここの生徒会役員は、人気も然ることながら成績は勿論、容姿も並外れていなければ選ばれない最上級と言われてもおかしくない人材の集まりである。
長くなったが、まとめるとイイ男集団なのだ。

「・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・」

そんな珀薇のTOPを担う生徒会長、岸本 斎−きしもと いつき−は白皙の美麗な面に不似合いなしわを寄せて、目の前の男を睨んでいた。

「・・・・・・・・」
「・・・・・・・・俺を睨んだところで、何も変わりはしないぜ?」
「・・・・・・・・」

睨まれ続ける男、生徒会副会長の樟賀 京−くすが きょう−は走らせていたペンを止めて、そのまま顎を乗せて疲れたように気をついた。
疲れていてもその美貌は失われることなく、色眼鏡のフィルター越しに見れば
哀愁に満ちた樟賀先輩・・・・素敵・・・
何て声が聞こえてきそうである。
が、部屋にいるのは幼馴染であるからそんな感情も色眼鏡も存在はしない。
その代わりと言っては何だが先程から、友人の斎から無言の圧力をかけられているのである。
まったくもって傍迷惑なことだった。

「・・・・・・・・」
「・・・・・・・・斎〜そんなに嫌なんだったら直接本人に言えよぉ?」
「・・・・・・・・」
「お〜〜い・・・・さすがの俺も怒る前に泣くぞ?」
「・・・・・・・・俺がとやかく言ってアレが聞くとでも思ってるのか?」
「う〜ん・・・・努力の問題かな?」

やっと言葉を発したと思ったら責めるような口調。
好い加減にして欲しい。

「努力?こんなにも努力を惜しまない俺に努力の問題?」
「あーあースイマセンね、斎は良くやってますよ〜」
「ムカつくっ」
「俺の方がムカつくっての・・・・・」

この温和な筈の生徒会長殿の不機嫌な理由の元に視線を移した。
その先には、座り心地の素晴らしく良さそうな黒いソファーに仰向けになって寝こけている男が一人。
体感気温の低さと空気の重さにも係わらず、ひどく気持ちよさげにくーくーといびきをかいていた。
大きなはずのソファーからは長い手足が伸びて落ちている。

「・・・・・・・・・」
「だからっ俺を睨むなっての!アンジーに言え!」
「この怒りの矛先がアンジーに向けられても本人が寝てちゃ何の意味もないだろう!」
「知るかっんなこと!!」
「だからっお前に向けてやってんだ!」
「いらんわっそんなモン!!」

ぎゃーーーっと怒りに任せて斎が叫べば、我慢の限界だった京も負けじとぎゃーーーっと叫ぶ。
ここからはイイ男が台無しの、子供の口喧嘩。
あー言えばこう言う、そう言ったら揚げ足とって責める・・・・
まったくもって低次元だった。


そんな時、


「・・・・・うるせーぞお前ら〜・・・・・」

急に低い声と共にソファーに転がっている男が起き上がった。
眉間にしわを寄せながら、長めの前髪をかき上げる。

名を、榛原 杏滋−はいばら あんじ−である。

親しい間ではアンジーと愛称で呼ばれている・・・・
愛称こそ可愛らしい女の子を想像しそうだが、この男の容姿とてもではないがそんじゃそこらの色男も敵わない美形っぷりなのである。
意図しなくとも振りまかれる色気、低く心地の良い声、切れ長の鋭い瞳、薄く男らしい唇と・・・・どこも比の無い容姿なのだ。

「誰のせいでこんな事になってると思ってんだよアンジー・・・・・」

京が溜息を盛大について呟く。

「あ〜・・・・・・知るかよんなこと」
「お前の他になんだって言うんだっ!」
「・・・・・・・・何だ、斎・・・・アレの日か?」
「〜〜〜〜っ俺は正真正銘の男だバカっ!!」

火に油を注いだ発言に、爆発音を響かせるように斎が叫ぶ。
注いだ本人は、暢気にくあ〜〜〜っと大きな口を開けて欠伸をひとつ。
突き刺す氷点下の視線もなんのその、またもや寝る体勢に入ろうと、背伸びをしてころんと寝っ転がった。

「っ!寝るなっココで寝るんじゃないアンジー!」

斎が慌てて杏滋のいる元へ駆け寄って、寝かせないように肩を引っ張った。

「やだ、眠い・・・・」
「やっヤダじゃない!」
「えーー何だよ、矢田亜●子けっこう可愛いじゃねーか」
「誰も今、そんな話ししてないだろうが!」
「あ〜そっか・・・斎は菜々子撫子が好きなんだよな〜」

色気がなりを潜めて、ふにゃりと崩れる表情。

「アンジー・・・・寝ぼけてるな・・・・」
「寝るなアンジーーー!!」
「眠いですよぉ・・・・」

斎の揺さぶりにも意に返さず、揺すられるがままふにゃふにゃと眠りの世界に落ちていこうとする。
目を開けてれば獰猛で傲慢なライオンのような男も、目を閉じ眠りの世界に片足を突っ込めばちょっと情けなさが目立つ可愛い顔となる。

「お前が可愛かろうが俺の苛々が治まるものか!」
「むにゃむにゃ」
「アンジーーーーーー!!」
「む〜〜」
「キモイわっボケ!起きろっ起きるんだアンジー!死ぬぞ寝たら死ぬんだぞ!」

雪山ではないのでありえません

「えへら」
「ぬがーーーーーーーーーーーーーっ!!」



落ちつけよ斎・・・・・



と、心の中で呟く京であった・・・・
もう係わりに合って八つ当たりされるくらいなら、このまま杏滋を売る。
今まさに、斎の欠陥がブチ切れた瞬間、外で笑いが破裂した。
まさに、文字通りの爆笑である。

「・・・・・・?」
「??」
「・・・・・・?」

ぴたりと手を止めた斎、
思わず振り返る京、
薄っすらと目を開けた杏滋





未だに笑いは外で響く