■ 手に水の入ったバケツを持って立たされる体罰がある時代は何時までなのか??







































* ご好評(は?)により、先発は巳継視点 *





俺は、今物凄い疑問に駆られている。
どうして、こんな状況なのか?

ただ今俺は、とある教室の前にいる。
隣には、中をこそこそ伺っている怪しい人物。
お友達になったばかりの広瀬七緒君。
前とちょっと違うのは、モサダサ系かと思ったら諫早たちにも劣らない可愛い顔の持ち主だったことと、結構なヤンチャさんだってことだけ。
いや、結構どころかかなりのヤンチャさんだ。
今から行おうとしていることを、喜々として計画しているのだから。
ちょー楽しそう・・・・
で、そんな七緒っちに付き合って俺はココにいるのですが・・・・
そんでもって本題なんですが、

「七緒さん七緒さん」
「何、ちょっと今いい所なんだから!」
「いい所ってあーた・・・・・・女湯覗いてるような言い方しないでくださいます?」
「はいはい、で、何?」
「はい・・・・・・・あのですね、何で俺はこんな事になってるんですかね?」

こんな事、
すなわち・・・・・両手にたっぷり水の入ったバケツを2個づつ持っています!
ものごっつーーーー重いです!!

「もしかして、七緒さん!水も滴る美少年見せるとか言っておいて実は俺イジメ!?」
「・・・・・・まっさかー」
「ちょっと何その間!?」
「細かいことは気にしているとハゲるぜ?」
「ハゲてねーよ!」

近頃抜け毛に気を使ってるんですから!
って、そこーーーー!!
本気にしない!!
まだまだ俺は現役ぴっちぴちのうら若き高校男児ですぞ!!
頭見せてみろとか言わないで!!

「で、何?」
「だから、何で俺・・・・廊下にバケツ持って立ってるのかな?」
「水が必要だから?」
「まーそうなんでしょうけど、見ようによってはノビ太くんじゃないですか?」

そう、一昔前の体罰。
って言うか遅刻忘れ物したら、
『廊下に立っとれーーーー!!』
って先生の怒鳴り声がするんだよね?
そんでもって、廊下に立ちながら両手には水の入ったバケツ持つんだよね??

「えータケは見た目からしてノビ太くんでは有り得ないでしょう?」
「こんな色男なノビ太くんは存在しないってことは分かってますよ?でも、この両手を見ますと・・・・・」

完璧なる、廊下に立たされてます!
だよね!?
すれ違うモノ共が好奇の目で見てますモン!!
笑ってるんですけど!!
指差してるんですけど!!
ちょっ・・・・・・・恥かしいんですけど!!

「七緒さん七緒さん、下ろしてもいいですかね??」
「ダメ」
「だ、ダメって・・・・・・そろそろ俺の腕も限界MAXなんですが・・・・・!」
「ダメったらダメ!」
「イジメだ・・・・・・!俺は広瀬七緒にイジメにあっています!!」

そう叫んでも誰も信じてもらえない・・・・
あれでしょ、俺がよく職員室に呼ばれて怒られているの見てるから、また怒られてやんのーー!
的に思ってるんでしょう!?
違うのに!!

確実に両手に20Kg近い重さが掛かっています。
腕が抜けそうです。
下ろします。
誰が何と言おうと!
俺は下ろします!!
むしろ落とします!!

カウントダーーーーーン!!

5・・・4・・・・・3・・・・・2・・・・・・1

「タケ!!」
「はい!!」

手を離そうと思ったら名を呼ばれて思わず掴み直しちゃったじゃ!!
ばか!俺のバカ!!
意気地なし!!
根性無し!!

涙ながらに自分を罵って、七緒さんにお応えする。

「何すか・・・・・・・七緒さん・・・・」
「ついに来たぜ、絶好のチャンス!!」
「え?」
「下ろしていいぞ!そして見ておれ!!」
「えぇ!?」



そんな七緒さんの声に振り返ったら――――――――












ざばしゃ〜〜〜〜ん!!












「・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・」




沈黙


重い重い沈黙・・・・・





教室にいる全員がドアに目を向けて固まっている。
そんな中、俺はタケに持たせていたバケツを放った・・・・・
ガランガランっっと大きな音を立てて足元に転がる。

「ふっ・・・・ふふっ・・・・・!!」

笑う俺、
固まるタケ、
水も滴る美少年になった落合少年プラス、クラスメート数人。

そう!
今まさに俺は復讐者として成功を収めたのだ!!

「っ!!」
「いや〜〜さっきはどうもーーー元気?」

にっこり笑って落合少年を見る。
髪から水を滴らせながら、呆然と俺に目を向けた。

「覚えてる?覚えてるよね?さっき君に水をかけられら広瀬七緒と言うものなんだけど?」

えへっと笑いかけたら漸く理解したのか、落合少年の他にも数人が『あ!』って言う顔をして、一歩下がる。
その途端にざわつき始める教室内。
廊下でも何があったんだ?
と言うように、覗き込む野次馬がいた。

「いや〜やっぱ君可愛いな〜〜そんな性格じゃなかったらお友達になってたvv」
「・・・・・・」

ずり下がった落合少年に一歩間を詰める。
先ほどど違って少しは気を大きく持っているのか、俺をキッと睨んできた。

全然、怖いなんてないですけどー

「でもね、喧嘩売られて笑って許して見逃しできるほど心広くないんだよね?」
「・・・・・・・・」
「むしろ、えらい狭いんですわー・・・・・タケ、バケツ」
「あ、はい・・・・・」

事の成り行きを目をシパシパさせながら見ているタケに手を差し出すと、水のたっぷり入ったバケツを渡される。
ずしっと重くなって、両手に抱えながら落合少年に近づく。

「で、俺のモットーは『目には目を、歯に歯を』って言葉なんだよね?ちなみに、5倍返し!!」
「だっ・・・そんな!」
「問答無用!!」

大きく振りかぶってーーーーーー
そ〜〜〜れっ!!!





バッシャン!!





「うっわ!」
「もいっちょーーーーー!」

バケツリレーの要領で渡ってきたもう一個を間を置かずに手にして!!

そ〜〜〜〜っりゃ!!




ザバシャン!!





「やっめ!」
「止めてあげませ〜〜〜〜ん!ゴメンって謝ってもゆるしてあげませ〜〜〜ん!!」
「なっ!!!」
「誰を敵に回したか・・・・・思い知ってもらおうではないか、雑魚がっ(黒笑)!!!!!」

ほいっと手にしたバケツを後ろに放って、腰に手を当てて!!
肩幅まで足を広げて!!
ビシッと突き出す人差し指!!

「俺を怒らせたことを思い知れ!!」
「!!」
「そして、泣け!!叫べ!!!喚くんだーーーーーーっはっはっはっはっは!!!」

反り返って笑う、俺。
豪快に、
心持、痛快に!!

そんな俺を見たタケが後ろでポツリと・・・・・・

「ヒール(悪役)だ・・・・・ヒールがいる!!」

あわあわと焦りながら俺の背中を見詰めた。
目の前の落合少年は、もうびしょびしょでヘタリ込んでいる。
教室内にいた奴らは呆然と成り行きを見守り、野次馬は目を見開いて驚いている。







「正義は勝つ!!」




「どんな正義感だ、大馬鹿者め」




勝ち誇った俺の優越感に、呆れたような冷たい声が背後から聞こえた。
それと同時に後頭部に痛烈な一発がお見舞いされた。




え?
待ってこの声って!?