■ 意気揚々な出だしも、いつの間にか前途多難だったりしちゃうのです

























俺の名は広瀬 七緒-ひろせ ななお-



ちょいと危険な香りのする男である。
無論、香りだけでは済まされないのは係わった奴なら知っているであろう。
そんな俺は、更生を誓って山奥の言い方を変えれば閑静なる地に聳え立つ全寮制男子校にやって来たわけだ!
付け加えるならちょっとした金持ち学校!

そして真面目になろう俺!

優しくなろう俺!

暴力反対だ俺!!





それを心に誓った・・・・・





わけだが!

















そんなこんなで俺はそれから一週間後に珀薇学院の校内に立っていたわけである!
道に迷って!

「どこだよっココ!?」

右を見ても左を見ても目的地である職員室らしきドアも表札も見えない!
ってか広すぎだボケ!
どんだけ広いんやっちゅーーーねん!
思わず関西弁になるっつーの!

「マジかよーードコだよーー初っ端から遅刻ってどうよ?むしろこの歳で迷子ってどうよ?」

そんな俺の嘆きに誰も応えてはくれなかった・・・・・当たり前!!
その場にガクリと膝を着いた瞬間、背中を誰かに蹴られた。

どっ

「った!!」
「うっわ!」

後に踏み潰された、身体全体を使って。
そしてパラパラと音を立てて何かが周りに散らばる・・・・・ん?紙?プリント?
てか・・・・どいては下されませんでしょうかね?

「あの〜〜?」
「いたたったった・・・・・あ、スイマセン!」
「いや・・・・こちらこそ。」

俺がこんな所に蹲ってのの字を書いてたのが悪いので、謝れてもどーしようもなければアナタも謝る必要はないのですわ。
上に乗っていた奴が慌てて俺から降りていく。

「ごめんなさい・・・・ホントに・・・・」
「いやこんな所で蹲ってた俺の方が悪いから・・・・・てか拾うの手伝うよ。」
「あ・・・・スイマセン、ありがとうございます。」

ぺこぺこと頭を下げながら散らばる髪を拾う奴に倣って俺も拾うと、そいつは顔を上げて笑った。
てか、一言良いですか?
何この顔の可愛さ!?
え、ココ男子高っすよね!?
何で女の子みたいな顔の奴がいるの!?
はっきり言おう、そんじゃそこらにいる顔を売りにするアイドルも裸足で逃げ出せ!な、美少女っぷりである!
いや、男に美少女ってのもなんだけど、それが当てハマっちゃうんだから不思議だ!
思わずポケラっと見とれていたら、そいつが首を傾げる。

「え・・・っと、見ない顔ですけど・・・・先輩でしたか?」
「あ・・・いや・・・・そのネクタイの色からしてタメだとは思う。」

目の前のしている奴のネクタイは緑を基調にシルバー、黒、赤のチェックである。
自分と同じ色だ。
ちなみに2年が赤を基調に黒、黄、茶のチェック。3年が黒を基調に白、赤、青のチェック・・・らしい。
パンフレットに書いてあった・・・・間違ってなければ。

「あ、そうなんだ!転入してきたの?」
「いや〜違う・・・・諸事情による出遅れ。」
「そっか・・・・・あ、僕は滝 知隼−たき ちはや−よろしくね?」
「広瀬七緒、こちらこそヨロシク・・・・ところで、篠塚君・・・・職員室はドコだろうか?」

拾い集め終わったプリントを手渡しながら滝に聞くと、にっこりと天使の笑みが返ってきた。
穢れた俺には眩しすぎるぜ・・・・・っ!!

「案内するね、ちょうど僕もこのプリントを置きに行かなきゃなんなかったし。」
「それは好都合でっす。」

2人一緒に廊下を歩いた。
俺が歩いてきた方向へと向かって・・・・
なんだよ・・・・通り過ぎてんのかよ、ちょっとショック・・・・・

「えっと・・・・差し支えなかったらでいいんだけど・・・・諸事情でって何かあったの?」
「ん?・・・・あぁ・・・・」
「あ、気を悪くしたらごめん!」
「いやいやいや、悪くしてはないですよ?ちょっとはしゃぎすぎて大怪我おって入院してただけ。」
「そうなんだ〜」
「こう卒業を間近に控えて緊張の糸が切れて凧みたいに飛んでったって感じ。」
「蛸?」
「いや、蛸じゃなくて凧ね凧。」

おりゃ〜あんな軟体動物ではないですよ?
ん?てか、蛸って動物か?
いや、動物じゃないだろう!

「ふ〜ん・・・・・そっか〜」
「そうですわ」
「あ、それにしても広瀬君の髪って変わった色してるね?染めてるの?」

急な話題転換ですな〜
まぁ・・・・・
事実は染めてます・・・・が!

「いや、地毛・・・・・とは、ちょっと違うけど、薬の副作用でこんな色なんだ。」

と言う事にしています。
アノ後、楓やら睦月と言い訳を考えたのさ!

「ぁ・・・・また、俺・・・・ごめん」
「ん?何で謝るんだ?」
「だって・・・・・身体的なこと言ってるし・・・・」
「気にしてないよ?だって病気的にはほぼ完治してるし、今では普通だし。」
「・・・・・・・」

しょぼんと俯いてしまった滝。
およよよ?

「滝・・・・・ってうわっ何で泣いてんの!?」

下から覗き込めば、あとちょっとで涙が零れますよ!的な目に溜まってます!
うわわわっわっ!!
真面目に生きていこうと決めた傍から泣かしてどないすんねんっ俺!!

「たたたった滝〜なな泣くなっ泣かないでくれっほりゃ〜〜おじちゃん面白い顔できまちゅよ〜〜(壊)」

仲間を爆笑の渦に陥れて酸欠で死にそうになった取って置きの技を披露しちゃいますよ!
焦ってますよ俺!
俺が赤ちゃん言葉ですよ!
ってか・・・・
泣いたカラスが何とやらって言葉知ってます?
泣いてた子がいつの間にか笑ってた、ってアレの例え。
今まさにその実用例が、
廊下の真ん中で人目を憚らず大爆笑ですよ?




何だよ〜そんなに変なのか?


俺の顔ってそんなに面白いのか!?