をした王様















































吹雪のその言葉を受けて、
もう今年は終わろうとする時期が来た
真冬、
今年は異常気象なんかじゃないのかと言うほどの寒さで、
有り得そうで有り得ない時期に雪がちらついたりした
12月の初め
俺は飽きもせず今日も、
昨日とは違う奴の部屋で軽い運動を終わらせた所だった

「はぁ・・・・ぁん・・・・・はぁ・・・・はぁ・・・・・」

組み敷いた
白い身体が絶頂の為に赤く色づいて薄い胸を激しく上下させている

「せん・・・・ぱい・・・・」
「ん?」
「あの、えっと・・・・・・好き、です」
「そう?」

落ちたな
顔に勝ち誇ったような笑みを浮かべて、
何人目か数えるのも億劫なほど落ちた相手のそんな言葉を聞く、
でも答えはただの一度も口にはしていなかった
用は済んだとばかりに、
そいつから離れて服を着始める

「あの、泊まって行かないんですか?」
「俺って繊細だから枕替わると寝れないんだ」
「・・・・・そう、ですか」
「あぁ・・・・・じゃ〜な、」

部屋着として気に入ってる襟口の開いたセーターをシャツの上から着こんで振り向きもせずに部屋を出た
背中に次はいつ会えるのかと言う声を扉を閉めることによって聞こえないことにした、
廊下に出ると、
まだ遅くは無い時間、
それなりの生徒が行きかっている
俺の姿を見て声を掛ける奴らに適当に返して自分の部屋へと向かう

ん〜〜〜・・・・さすがに一週間ぶっ続けだとヤリ疲れたな、
年かな?
あり得ねーか、うん。
歩きながら腕を上げてダルイ身体を伸ばす、

「放してください、」
「だったらうんと言えよっ」
「どうして言わないといけないのですか、無理です」
「無理、だって!?」
「はい、何度も言いますが無理なものは無理です、好い加減諦めてくれませんか?」

誰かが言い争う声が聞こえた
一人は興奮で声が裏返ったような音で押さえたように怒鳴り
もう一人の声はそれに反して静かだ

「ちっくしょ!」
「ちょっ放してください!!」
「良いから来いっ」
「っやめ!」

おっとーー
穏やかじゃなくなったな、
曲がりなりにも生徒会長だっつー厄介な肩書き持ってるわけだし、
いっちょ働いておきますか、
で、可愛い子だったら俺が貰っておこう
うん、そうしよう

一人納得して声のするほうに曲がると、
大柄な男が華奢な男を抱えるように無理矢理に引き摺っている

「放してっ」
「来いって!」
「はい、はい、はい、そこら辺にしておこうね、君」
「!!!?」
「おっと、聞いたことがあると思ったら柔道部の戸田山くんではないか〜」
「北原っ」

びくっとあからさまに身体を震わせて華奢な男を投げるように放す、
ふらふらと壁に当たってずり下がるのを横目に見ながら
顔を青くして此方を見る戸田山に、
笑みを向ける

「なかった事にしてやる、だから早く消えろ」
「っ・・・・・」
「2度も言わせるな、早く消え」
「っち」

語尾に重なるように舌打ちをして戸田山は早歩きで去って行った
その背中が消えるのを確かめてから、
廊下にへたり込んでいる華奢な男の前に腰を落とす

「で、お前は大丈夫か?」
「・・・・・・・・・・・」

俯いている顔を見るために声を掛けながら顎に手を掛けると、
軽く払われる

お、珍しい反応

「立てるか、立てねーんなら手伝おうか?」
「・・・・・・結構です、助けていただいてありがとうございます」

差し出した手には触れては来ずに、
壁に手をついてゆっくり立ち上がる
ソレを座ったまま見上げると、
黒い髪の間に光るフレーム
そのガラスの奥の目は翳って見えなかった

「お前一年だよな?」
「・・・・・・はい、」
「名前は?」
「失礼します」

俺の問いは無視されて、
壁に手を付いたまま歩き出した
その腕を立ち上がりながら捕らえると
軽い破裂音に似た音が響く

「触らないで、もらえますか?」
「・・・・・・・」

殴られたのだと気付くのに少しの時間を要したが、
左頬が熱くなるにつれそれを自覚した

あれ、俺もしかして殴られた?

初めての経験に、
怒るより何より目を見開く

「なぁ・・・・・お前、俺の事知ってるだろ?」
「そんな事より、その手を放してください」
「いいから答えろよ」
「放してください、もう一度叩かれたいですか?」
「あのな〜だから、俺の質問に答え」

最後まで言わせずにもう一度、
同じ所が熱くなる

「放して、ください。貴方の下らない噂は耳を閉じても入ってきますよ、北原生徒会長」
「・・・・・・・・・」

静かに落ち着いた声、
今までに俺に向けられた事がないような感情のない声

「2度も殴った・・・・・か?」
「痛覚がないんですか?放してくださいと言ってるのに放してくださらない貴方が悪いんですよ」
「・・・・・・殴られた」
「好い加減に僕の言ってること理解してくださらないと、もう一度叩きます」

今度の声は冷たく怒りが込められている、
呆然と手が上るのをスローモーションのように避けることも止めることもなく見詰めていると、

「李いっちゃん!!」

誰かの名前を呼ぶ、
声のした方から足音がしてドスンと何かが目の前の華奢な男に飛び掛る

「李いっちゃん心配したよ!急にいなくなっちゃうんだもん!!」
「水鳥・・・・・・うん、またあの人にね」
「っかーーー好い加減にしろってのな〜しつこい男はいやだね!」
「まったくだね、」
「そんじゃま〜そんなバイ菌を落としにお風呂入りに行こっか!」
「うん」

俺の存在など軽く無視されて、
急に現れた華奢な男と同じ背丈の男が朗らかに笑いながら横を通り過ぎる
何だか滅多にない展開の流れに意識を飛ばしたが、
手の届かない所まで離れた瞬間にハッと気付いて

「お、おい!」
「さ〜てと、ニューヨークタイムズ!」
「入浴タイムね」
「そんなふうに言う時もあるらしい!」
「いや、そんな時はないよ」
「って、オイそこのチビども!!」
「あらやだ、誰に向かってチビとか言ってんでしょ?僕ってば都合の悪いことと興味がない人物の声って聞こえないんだ」
「同感だよ」
「やった!李いっちゃんさすが僕たち親友だよね!」
「そうだね」

無視だ!
完璧に俺は無視されてる!!
しかも、宣言されながらだ!!

「お前ら2人だ!」
「そこの自意識過剰な生徒会長様、僕たちにはちゃんとした名前がるので名前で呼んでください」
「だったら、呼んでやるから教えろ」
「呼んでもらわなくても結構ですので、教えません」
「同感だね!!」
「!!」

なん、何だと!?

「さ〜〜ってと、混まないうちに行こうか!」
「そうだね」

2人はお互いしか見てなくて、
俺はそんな二人の世界の外で入り込める隙間もないほどで、
呆然と見送るだけだが、
何だか知らんが条件反射か反射神経か、
咄嗟に華奢な男の腕をもう一度掴んでいた
で、
またもや軽い破裂音

「!!」
「ナイスショッ〜ト」
「何度も言わせないで下さい、僕に触らないで」

そう良い残して今度こそ二人は消えた
後に残ったのは俺と、
いつの間にそこにいたのか吹雪と和で、

「吹雪・・・・・・俺、歩きながら寝てんのかな?」
「いえ、たぶん今のは信じられませんが現実にたった今起こった真実です」
「えぇぇぇぇぇっ!う、嘘だよだって今っ千晶が、あの千晶がだよ!千晶が殴られたんだぞ!?」
「えぇそのようです」
「千晶が、あの千晶が殴られてた・・・・しかも三回!?」
「えぇ三回も」
「ってお前ら最初っから見てやがってたのか!?」

何度も信じたくもない事実をしつこく繰り返す和とソレを確実に肯定する吹雪の2人が、
俺の怒鳴り声に、

「うん」「はい」

と、異口同音で頷きやがった
このやろう!!
他人事だと思いやがって!!

「で、一体そんなことが起こるに当たっての経緯はなんなのですか?」
「お前ーもしかして無理矢理コトに及ぼうとしたんじゃねーだろうなぁ?」
「バッカんなわけねーだろ!その反対だ!」
「反対〜?って、無理矢理ヤラれそうになったのかお前が!?」

和が見当はずれなことを口にして一人驚いている、
何で無理矢理ヤラレてんのが俺なのに、
俺が殴られんだよ、意味ワカンネーなぁ

「ちげーって、アイツが襲われそうになってんのを助けたんだよ!」
「おや、千晶にしては珍しい行動ですね」
「うっせー珍しいは余計だ」
「で、ソレで何故3度も殴られる羽目に?
「さ〜な、大丈夫かって聞いて、ふらつくから支えるために触れたら殴られたんだ」
「ありゃま」
「それはお気の毒に」

心配の欠片も含まれていない声でそんな事を言って、
俺に肩をすくめる2人に
俺は、
先ほどの華奢男に興味を抱き始めた