■ 美味しくご飯を食べましょう










とある高級中華店のVIPルームに
数人の黒いスーツに身を包んだ男と、
そんな中に何故いるのか謎の程の愛らしい少年に近い青年と、
黒地にに白や赤い蝶が描かれた着物を着た派手な美人と、
不機嫌丸出しと分かるほどの眉間に深いしわを刻んだ威圧感たっぷりの男、

円形の大きなテーブルを囲んで、
それはそれは派手に煩く騒がしく食事をしていた

「ちょい待ちっソレ俺んやで!!」
「食べたもの勝ちだろ?」
「うっま・・・・・!!俺っ・・・・こんな美味いモン初めて食った・・・・・!!」
「一生食べられないと思いますので、今のウチに堪能しておくと良いですね〜」
「・・・・片山さん・・・・・笑ってドギツイこと言わんといてくださいっ」
「そうですか?あ、夜人さん、ちゃんと食べていますか?」
「はいっすっごく美味しいです・・・・ね、浮津さん?」
「・・・・・・・・・」
「・・・・・浮津、さん?」
「ちょっと〜〜アンタ少しは心を広く持ちなさいよっいつまで拗ねてるつもり!?」
「うるさい・・・・・」

深くなる一方の眉間のしわ、
豪勢かつ食欲をそそるような美味しそうな料理には一切手を付けずに、席についてからずっと吸っている煙草と酒だけを口に運んでいる
置かれてる灰皿から吸殻が落ちそうな勢いだ、
そんな態度の浮津と呼ばれた男、
こんな頑固で拗ねた子供のようではあるが、
実を言うと、ある世界では知らぬ者がいないと言うほど名の知れた人物である
名を、威道 浮津 -いどう うぎつ-

総組員数一万に届く巨大組織、双頭会-そうとうかい-
【氷企組】傘下、最強と謳われる威道組組長なのである

そんな不貞腐れた威道を窘めてるのは、
彼の昔からの知人である、三春名 瑞穂 -みはるな みずほ-

その険悪な雰囲気の間に挟まれてオロオロとしているのは、
日岐 夜人 -ひき ないと-
誰からも恐れられ畏怖される存在でしかなかった威道のたった一人の恋人である

「浮津さん・・・・・食べないんですか?」
「食べてるよ」

今までの不機嫌を吹っ飛ばす勢いで、
夜人には優しげな笑みを見せる

「・・・・・・・・・」
「嘘おっしゃい!お皿も箸も汚れてないでしょうが!!」
「・・・・好い加減にその口閉じないと、ぶっ殺すぞ瑞穂・・・・・」
「はっヤレルもんならヤッテみなさい!!」

ガタタっと派手な音を立てて立ち上がる二人に大きな瞳をさらに見開いて夜人は見上げた
一触即発

「日頃からアンタには色々と言いたかったのよね・・・・」
「俺も同じだ・・・・気が合うじゃネーかよ」
「アンタと気が合うなんて反吐が出るけどね!」
「俺こそお前がそんな高等な思考を持ってるとは思わなかったがな・・・・このカマ野郎!」
「カマでも野郎でもないわよっニューハーフと仰いっ低能ヤクザ!!」

服をお互い掴んで殴りあう一歩手前、
夜人に到ってはあまりの迫力に開いた口が塞がらず・・・しまいには目に涙まで浮かび始めている、
それに気付かず罵り合ってる二人に、

「ソレくらいにしたらどうですか・・・・組長、瑞穂さん。夜人さんが怖がってらっしゃいますよ」

にこやかに飽く迄にこやかに笑い、
声は氷点下の冷たさでもって2人を嗜めた
声の持ち主の名を片山、威道の右腕である
この職業に似合わぬ柔和な雰囲気を持つが内情は浮津とそれほど変わらない

「夜人さんがせっかく楽しみにしていた食事会なのに、潰すおつもりですか?」
「「・・・・・・・・・・」」

そう言われてしまえばこれ以上騒ぐことなどできるはずもなく渋々と言った感じに席に座る
ソレを満足そうに頷き見てから皿に盛り付けた料理を口へと運ぶ
そんな片山の恐れをなす行動に黙って見ていた他の者がブルリと身体を震わせ、
必要以上に怒らせないようにしようと再確認したのであった

「あの・・・・・浮津さん、こ、コレ・・・・おいしいですよ?」
「・・・・・」

不機嫌の最骨頂の威道にビクビクしながらも夜人は、
皿に料理を盛って渡してきた、
片山の言うとおりこの食事の場を楽しみにしていたのは知っていた
最近あまりの忙しさに家に帰ることがなく夜人に寂しくさせていたことも、

「スマンな、夜人」
「いえ、僕は・・・・こうやって一緒にいられるだけで嬉しいので」

心の底からそう思う言葉とともに嬉しそうな笑みが浮かんだ
先ほどまでの大人気ない行動に内心頭をかきながら目の前に差し出された皿を受け取り口へと運ぶ

「・・・・美味いな・・・・」
「良かったっ」

ぱぁっと晴れるような笑みが広がり
自分も料理を口にする
それからは先ほどの険悪な雰囲気は掻き消え和やかに話す声と笑い声が上ってた

しかし、
とある異変に気付いたのはドア側に座っていた南と言う名の男である
ふと顔を上げると小さく威道の方へ視線を向けてから席を立ちドアへと近づいた
その姿を目の前の愛らしく笑う夜人に向けながらも視界の端に入れる
少しだけ開けたドアからすり抜けるように出て行ったのを見、
次には片山にも視線を向ける、
心得たかのように何も言わず席を立ちドアの近くに置いてある数脚の椅子に座りながら煙草を取り出して吸い出した
動いた片山に一瞬首を傾げて視線を向ける夜人
それに手に持った煙草を掲げて見せる

「煙草、ですか?」
「はい、組長と違って私は礼儀を弁えていますから」
「・・・・・・どういう意味だ・・・・」
「言ったまでの意味ですよ?」

せっかく直った機嫌が嗜めた人物が壊そうとするのを瑞穂は呆れて見、
夜人は苦笑を浮かべた

「ったく・・・・テメーは自由すぎだ」
「お褒めに預かり光栄です」
「誉めてねーだろうが」
「そうですか?」

しらじらしく返す片山の態度に疲れたように溜息をつくと、
小さく笑っていた夜人の腕を引き自分の膝の上へと乗せた

「浮津さん?」
「何でもない」
「??」

椅子に浅く座り、その膝の上に跨ぐように座らせた夜人の腰を撫でるように抱いた
年相応以下の腰の細さと軽さ
時が止まったままのような少年のような顔立ちに
小さく息を漏らす

「瑞穂、奥へ行けるか?」
「・・・・・・・また?」
「招かざる客だ、俺にそんな言葉を言っても意味がないぞ」
「あ〜ぁ・・・・・・まったくゆっくり食事も出来ないなんて・・・・・イヤんなっちゃうわ」
「俺が言いてぇよ」
「はいはい・・・・・・夜ちゃん、瑞穂のおネェさんと奥に行きましょ?」

一際これみよがしに大きく溜息をつくと、
テーブルに手を着いて立ち上がった

「え?でも・・・・」
「大丈夫だ、ココの支配人がお前の厨房を案内するそうだ」
「ホント、ですか?」
「あぁ・・・・ほら来た、」

頷いてから音もなく別のドアから姿を現した支配人が優雅に一礼をし、
穏やかな笑みに似合った声

「お久し振りでございます威道様」
「あぁ・・・・・頼めるか?」
「勿論でございます。それではお客様、当店の門外不出の秘伝をお見せいたしましょう」
「はい!」

その誘いに夜人は頷いて、
瑞穂とともに部屋を出て行った
途端その部屋が威圧感に包まれる、威道の雰囲気が一変したのだ
そこに優しさの欠片もなく、
恐ろしいまでの冷たい瞳が伏せられ口にした煙草にいつの間に立っていたのか他の男が火を近づけた
大きく吸い込んでからゆっくり吐き出し

「片山、誰だと思う?」
「そうですね・・・・・長島の親父、と言ったところでしょうかね?」
「まだ諦めてねーのか・・・・・」
「しつこさで言ったら双頭会で右にいる者はいないのでは?」
「氷企の親父たちは何と?」
「目障りに飛び回る蝿、と言った感じですね」

くすくすと笑い、
終わりかかる煙草をもみ消し新しく口に咥えて差し出された火に近づける
隣に控えた坂上と言う名の男ににっこりと笑いかけ

「ね、坂上?」
「そうですね、少々やり過ぎた感はあるかと思われます・・・・蓮水の方でも動かれるのでは?」
「・・・・・・そうか、ならあっても邪魔だな」
「そうですね〜」

威道の言葉に楽しそうに片山が同意し、
坂上が頷いた所でドアが大きな音を立てて開いた
転げるように入ってきたのは、
丸い小柄な男で、
薄くなった頭部を汗で光らせながら荒い息とともに話し出す

「こ、っここれこれは威道じゃないか!ひ、ひっ久しい、な!!」
「・・・・・・・」

あからさまなその態度と言葉に冷笑を浮かべ、
長い足を組みかえる
長島組とは位置的には威道の上ではあるが力は歴然の差があった

「お久し振りですね、長島の親父・・・・・お変わりなく、お痩せにはなってないようで?」
「っ・・・・・はっは!!この年にもなると、そ、そう簡単にはな、ぁ!」
「そうでしょうね、随分と楽しいお遊びをなさってるようですしねぇ」
「・・・・・・何の事かね?あぁゴルフなら毎日し」
「聞いてますよ、薬・・・・・流してるそうじゃないですか」

語尾を攫うようにそう告げると、
長島と言う男が丸い身体をビクリと大げさなほどに振るわせた
赤らんだ顔が段々と青褪めていき、
走って来た時に出来たであろう汗の他に別の意味での汗も浮かんでいた

「な、何のっ」
「知らないとでもお思いですか?」
「・・・・・・・」
「南の方に出回ってるそうじゃないですか・・・・それも若い間で、」
「!!!」

双頭会での薬の扱いはご法度である
それも組み同士、組員同心ならいざ知らず一般に流す事は固く禁じられていることだった

「まだ海を越えただけに留まれば目を瞑られたのに、カタギに流しては【氷企】も【蓮水】も黙ってはいないそうですよ?」
「そ、あ、い、や・・・・ちっちが!!」
「言い訳は聞きつけらんねーんだよ」

それまでの言葉遣いとともにまとう空気も一変し、
ゆっくり立ち上がると、
ガタガタと震える足を隠しもせずに、
恐怖の浮かんだ目で転がり込んだまま床に膝をついた格好で威道を見上げる

「知ってるよな・・・・・・禁を犯したものの末路がどうなるのかを・・・・・だてにアンタも甚振ってきたわけじゃねぇだろがよ、あぁ??」

見上げてくるその顔に今まで吸っていた煙草の火を瞼に押し付ける
とたん耳を劈くような怒声にも似た悲鳴が喚きあがる
仰け反るように後ろに倒れた男が、
そのまま瞼を押さえて転げまわった

「うるせぇな・・・・片山」

声の大きさに眉を顰めて
未だ暢気に椅子に座って煙草をふかす男に声を掛けると、
冷たくにこやかな笑みを浮かべながら立ち、テーブルに置いてあった布巾を数枚
喚き散らす男の口に無理矢理、喉奥まで押し込んだ

「ふっぐぅ・・・・っぐうぅ!!?」
「これくらいで喚くな、まだまだ・・・・だろ?」

詰め込まれた布を革靴の底で押し込むように押さえつけながら
慈悲も何もない氷のような言葉を、
何の感慨も感情もなくただ淡々と声に乗せる
それから数十分間、
それを見慣れた者でさえ目を閉じたくなるような拷問が続いた





抱えるように運び出された男が出て行った反対側のドアから
ちょうど良く夜人たちが戻ってきた

「おかえり、夜人」
「はい、ただ今帰りました浮津さん」

肩肘を突いて煙草を吹かしながら優しく微笑む浮津に駆け寄って出て行く前にそうしたように膝に抱きかかえられる
点けたばかりの煙草を消して、
その細い腰に手を添える

「楽しかったか?」
「はい、凄かったです!それに味見もさせて頂きました」
「へ〜〜私も行きたかったですね、ソレ」
「美味しかったですよ?」
「う、羨ましいっ・・・・・てか俺、食いかけやったやん・・・・・・・食ったろ!!」

夜人の報告に浮津は目を細めて聞き、
片山は本当に残念そうな表情を浮かべながらあれやこれやと聞いて、
南は冷めてしまった料理を噛むのも惜しいかのようにかき込んでいた
その隣で坂上が呆れたように見ていた

「しっかし・・・・アンタのその見ていると腹立つ顔、どうにかならないの?」
「そう言う貴様の聞いてるだけで耳が腐るような声と喋りをどうにかしてから出直して来い」
「・・・・・・う、うぎつさ・・・?!」

またもや始まりそうな雰囲気のやり取りに、
夜人は威道を見上げた

「その前に汚らわしいと同等意のお前のその存在を夜人に近づけるな、夜人が病気にでもなったらどうする?」
「っは・・・・・アンタがそうやって手を触れさせた所から夜ちゃんに変な病気が移るかもしれないのよ、殺菌消毒を全身と言わず脳も口も身体の中をも満たしてから出直してらっしゃいよ?そのほうが良いわ、きっと、いえ、絶対に、ね?夜ちゃんのためにも人類の為に勿論アタシのためにもね?」
「さすがカマ野郎、無駄に口が回るな、そのまま喋り続けて声を嗄れさせて死ね、世界の為に宇宙の為に以前に俺の為に」



くるくる回るような罵り合いに、
彼の側近、そしてさすがの夜人もこう思った



『どっちもどっちだ』



と、
この言い合いが終わるのに相当の時間を要し、
止めるのすらも放棄した片山が睡魔に負けて舟を漕いだ頃であった




おわる




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はい、取り合えず謝らせてください!!
こんなんで本気で本気でスイマセン!!!!全然確実に不発に終わりました『溺愛ヤクザ』です!!
間違いです、フライングです!!駄作中の駄作でお目汚しも良いところです!!
書こうとすれば書こうとするほど、
一周年記念に程遠いモノになってしまうんですっ・・・・・・早い話し超絶痛い話し!!です(涙)
そう・・・・だから少し、残酷?とまでもいかないけれどもそう言った場面を入れてしまいました。
本当に考えていた話しはこれ以上の表現を使っています・・・・
お祝い事には向かなすぎて、泣きそうになりました(凹)

そしてそこはかとなく影響を受けている文章がちらほら・・・・!!
押さえろ自分っやれば出来る子でしょ!!
ゴメンなさい、ゴメンなさい、ごめんなさい!!
よって、
一周年記念はこれだけで終わらせない事に決定。
いくつか出展しました!
数で勝負っ(オイ)!!

このお話しは、
その書こうと思っている痛い話しのその後です。
できるだけ近い内に形にしたい作品です
頑張ります・・・・・!!

お付き合い、
ありがとうございました!
こんなサイトですが、一周年を迎えることが出来ました
コレもサイトにいらしてくださった皆々様のお陰です・・・・・感謝の言葉も間に合いません、

本当に本当にありがとうございます、
これからも末永くお付き合いできるように頑張って行く次第であります、

不甲斐なきモノですか、
どうぞヨロシクしてやって下さい、

では



2006/03/20