■ 飛び立つまでの序章
















「・・・・・うおーーーー」

目の前には見知らぬものばかり

「っひょーーーっ」

映るのは目新しいものばかり

「っきょ・・・・あだっ」
「少し静かになさい」
「・・・・痛いんですけど、」
「そうですか、」

そうですかって・・・・そうですかって!!
殴っておいてそうですかって、

「どんだけーーーいった!」
「品性を失われる言動は慎むがよろし」
「暴力は慎んだ方がよくては、」
「ある程度のそれはアナタには、アナタには必要かと」
「え、何で『アナタ』二度言いしたんですか!?」

聞き返しても、
外を眺めるニトさんは返事はしてくれませんでした
近頃のニトさん冷たいです

「あの優しいニトさんを返して!!」
「あの心穏やかだった自分の心をアナタに返して欲しいものです」
「・・・・・・・」

痛ーーーい!
ニトさんの言葉に突き刺さりましたんですけど!!
ニトさんの心はどうやら僕のせいで荒んでしまったらしい
そう言えば、

「くそエドにも言われたな、」

あまり構いすぎるな、って
後になって俺に回ってくるとか言ってたけど何の意味があったのだろうか?
つかその後に脳天を突くような痛みが走り抜けてそれどころじゃなかったし?

「くそエドっ子め・・・・エドっ子・・・・・」

江戸っ子!?
ぎゃふっ

「ヤベ・・・・ウケるんですけど!!」

ぶふふって
含み笑い通り越して息噴出したら、

「・・・・僕、何もしてない!」

ぴしってでこぴんした!
ニトさんデコピンした!!

「笑い方が下品です」
「言葉の暴力です!」

別にどんな笑い方だってヨロシクね!?
いや、ヨロシクってよろしくされるんじゃなくって、
いいんじゃね?みたいなノリでね!

「・・・・海苔?」

いや、違うな
つか、何だっけ?
今まで自分の考えてたことを忘れてしまった
・・・・ま、
いっかー

「ところでニトさん」
「何ですかアリス様」
「あとどれくらいで着くんでっしゃろか?」

かれこれ、
この車じゃないけど、
馬車でもない(だっ馬が引いてるんじゃないし、むしろ何もないし)乗り物にかれこれ揺られる事・・・・・2日目?
なんですけどー
どゆこと?

「もーーーいい加減疲れました!」
「私もです、」

はぁっと小さな溜息一つ
事の起こりはアレです
お茶の時間に届けられた僕に送られた一枚の手紙と、
ニトさんに届けられた一枚の手紙
僕の手紙には、
リズからの色々な気遣いやらその日あったことやら
江戸っ子なんとかと、
楽しい事が書かれていて読みながら笑ってました
しかし、
その隣でニトさんは何度も何度も溜息をついてらっしゃってて

『どしたんでしょか?』

余りにも激しく溜息をつくから問いかければ、
ちらりと僕に視線を向けてから一際大きくため息

『・・・・何さ?』
『いえ・・・・・』

また溜息をついてから僕にとっては思ってもない言葉が

『・・・・・・アリス様』
『おうよ、』
『午後よりこの城を出ます』
『・・・・・・・・あい?』

フォークを咥えながら首を傾げた
城を出ます?
家出か?
思わず僕がそう思っても仕方が無い言葉だったと思う
口に出して言えば殴られたのは言うまでも無い
で、
今に至る
しかも2日目だ

「リズは何で呼び寄せたのかな?」
「私にも分かりません」
「ふーーん、」

ニトさの手紙にはリズの行った場所に来るように、
と書かれていたらしい
理由は無かったつか書いてはなかったらしい
唐突だよリズ

「何かあったのかね?」
「そうですねぇ・・・・危険なかとがなければいいですけど」
「いや寧ろあったら呼ばないよね?」
「・・・・ですね、」

2人で色々と揺られながら何かあったのか話した
日が暮れていく
外の景色はいつの間にか赤みを帯びていて
ソレを見たニトさんが、

「遅くならないうちに街に着かなくてはなりませんね、」
「おおっと、ベッドで寝れる!?」
「はい、今日は」

やった!!
やった2日目にしてやっとベッド!!
昨日と一昨日は野営?って言うの?
むしろ野宿?
・・・・・あれを野宿とか言うのだろうか・・・・はて?
やった!とはしゃいでいたら外で何かしらの破裂音が聞こえた、

「ん?」
「・・・・・アリス様、窓から離れて」
「ぅえ?」

何があったのかと窓を覗こうと身を乗り出すと、
とんと押されて椅子に戻される

「ニトさん?」
「・・・・とてもマズイ状況になりました」
「マズイ、って何が」

外を見るニトさんの表情が険しさを増す
冗談言ってるようでもなければ、
冗談言ってもマズイような雰囲気
自然と僕も不安を覚える

「・・・・・・・、」

何も言わず外を見詰めていたニトさんんp目が一瞬だけ見開いて、
そして険しい表情が消え

「アリス様、」
「あい」
「襲撃にあっております」
「・・・・襲撃?」
「はい」

襲撃・・・・・襲撃って何で?
どうして?
先ほどから小さくだが外が騒がしい
しかしその騒がしさもだんだんと消えていく

「・・・・・ニトさ、」
「っし」

窓から離れてニト山河僕を瀬に庇った次の瞬間
この乗り物のドアが吹き飛んだ

「っ!!」
「アリス様!!」

だけじゃないこの乗り物ごと吹っ飛んでニトさんが覗いていた窓側に下に倒れた
僕を下敷きにしないように庇いながらがくりと落ちるようにそちらへ転がった
したたかに頭を打って目の前に星が散る

「いぃぃぃ・・・ちゃい!」
「アリス様っどこかお怪我はっ」
「ない・・・とは、思う頭は痛いけどっ」

打った頭を血がないかと触れられ
軽いたんこぶができてるだけらしい事に安堵したニトさんの表情が固まった

「ニト、さん?」

そしてどさりと僕に倒れこんだ

「ニトさんニトさんどうしたの!?」

肩を揺すっても声をかけてもピクリともしないニトさんに焦る
動かないっ
死んじゃった!?
死んじゃやだ!!

「ニトさんっニトさんってば!!」
「静かにしろ」
「っ!!」

聞いた事のない男の声に驚いてそちらに顔を向ける
天井になっていたドアからマスクで顔を覆った人がいた
しかも一人じゃない
暗くなり始めて見えにくくはなっていたけど
そこには他にも2人ほど僕を見ていた

「お前は、国王リージェイドより囲われている者か?」
「アンタ誰!?リズのこと知ってんの!?」

質問には答えずに大声を上げる
表情は見えなかったけれど、
顔を見合わせて頷きあってるようには見えた

「当たりだ」
「・・・・・行くぞ」
「来い」

男は降りてきてニトさんを蹴りどかすと僕の腕を掴んだ
なっ何ていうことすんのさ!!

「オイこらっニトさんに何てことすんのさっ」
「煩い、静かにしろ」
「いーーーやーーーー!!僕は静かにしろって言われてした試しが無いぞ!!」
「・・・・・そうか、」

って自慢にはならない事を言ったら男は僕の口を手で覆った
うおーーーー!!
微妙に鼻まで覆われて息苦しいんでけど!
死ぬかもしんないっ



そして、
僕は誰かも知らない
どこかも知らない
そんな人たちの
そんな場所に連れさられたのだった