□ 罰が降る国















あの時、
大きな落雷で地響きが響き
立っていられないほどの揺れの中に巻き込まれるように有梨須に腕を引かれた
常識では考えられない壁の暗く大きな穴に引っ張り込まれるように落ちて・・・・
そう倒れこむのかと思えば何処までも続く奈落の底のように落ちた
で、
落ちていると言う感覚が終わって、
と言うことは底が見えたという事で・・・・・・衝撃を受けると身構える
けれど思いのほかそれは来なく、
漸くそれに気付いて辺りを見渡せば見た事もない風景が広がっていた
と言うより何故ここにその景色があるのかと思うほどの景色


晴れ渡る澄み切った夜空


一瞬だけその美しさに見惚れる
しばらく呆然と見上げてはいたが横たわった体を起こした
慣れない感覚に鈍る頭を振って意識を覚醒させる

「ここは・・・・?」

もう一度ぐるりとゆっくり冴えてきた頭と目で辺りを見渡せば、
昔、修学旅行などで行った京都の有名な竹林のような場所を思い出させられる
気を失ってる間に自分は夢遊病のように歩き回っていたのだろうかと思うほど、
自分のいた国である場所とこれと言って変わりはないように思えた
けれど見上げた澄み切る夜空に広がる満天の星空は、
余りにも違う自分のいた国では滅多に見られない・・・・・・



いや、それ以上の星の輝きを見られた



こうしていられないと思いふらつきながら立ち上がって、
一緒に落ちてしまったであろう友人と後輩の姿を探す、
ものの・・・・やはり見当たらない
最後の風の衝撃で3人が3人違う方向へと飛ばされたのを見えた気がしたから

「洲・・・・有梨須・・・・無事でいれば良いが・・・・・」

洲はそこまで心配せずともやっていける気がするが・・・・・
気がすると言うか、
絶対に大丈夫だろう
悪運と頭の処理能力と順応性は見た目に反して想像を遥かに超える
しかし・・・・後輩の有梨須のちょっと可笑しな性格とトラブルしか生まない行動を思うと気が気でない
気が気ではない通り越して一瞬で穴が開きそうなほどだ
それに女の子

洲曰く、
在るべきものがない!

と言い切っているが、だからと言って生物学上も戸籍上もまごうことなき有梨須は女の子だ
何かがあってからでは取り返しが付かない
そう考えれば心境が顔に出ずともそれなりに焦ってくる
探しに行きたい衝動がこみ上げるが、
知らぬ場所では無闇に動けば迷う・・・・
そう考えて立ち上がったものの、
一歩も動けずにまた座り込んでこれからの事を迅速且つ最短のベストな道筋を考え始めた

「・・・・・・でも、」





ココはドコなのだろうか?
日本?
けれど、空気が違う
肌で感じる何かが違う
見た目と感覚の違いはなくとも違和感を感じる
違うと何かが訴える



ここは、

自分のいた世界とは違う
平穏で乱れた世界
モノが有り余るほど溢れかえるが、
何もない世界
空虚だらけの
モノで埋め尽くされた世界とは違う



そんな矛盾だらけの世界とはまったく別の場所





見上げる夜空


見下ろす月と星



俺を照らす



瞬く星と


輝く月




「教えてくれ・・・・・・ココはドコだ?」




答えを求めているわけではないけれど
ただ口に出すだけの意味しかないけれど
独り言のように呟けば、
月の光が一瞬だけ輝きを増す





「・・・・??」




そして、




聞こえた小さな囁き




そよいだ風に乗って





おかえり





俺はココへ帰ってきたのだろうか?