□ 罰が降る国
















紅い日の暮れと


月の蒼白い光だけの国




夜の帳の下りきる前の時間と





静けさに包まれるだけの時間











その国は





夜の神の守護を受ける





夜を愛した国










星と月が瞬くその時が





その時だけが





その国の平和を保ち続ける





月は沈むことなく







夕暮れの時を永遠に







星は輝きを失わない






微かな光の下








その国はあり続ける









もし、





もしも、





星が落ちる時




きっと月が





星を見放した時だけ





その星には





悲しみと





怒りと





憎しみと





燃えて消えることの無い














罪と罰を背負って










落ちてくる














「あ」

ひゅるりと、
目の前を過ぎ去る光
この国で不吉と云われる光の終わりを、
見上げた空に見た気がした
たった一瞬で過ぎ去る光の尾
儚い命のように
一瞬の輝きだけの
そんな微かでけれど強い光

「どうした?」

小さな呟きだったその声に問いかけられる
するりと肩に乗せられた手を辿って見上げれば、
穏やかで優しい兄の顔
問いかけてくる視線に表情が曇る僕は

「・・・・星が落ちたようです」

悲しみを乗せた小さな呟きに、
溜息のように兄も呟く

「・・・・・誰かの罪を背負ったのだろうな・・・・」
「そう、なのでしょうか・・・・・・」

この国の星の流れ
それは不吉
罪と罰を背負った穢れた星
けれど兄は、星に罪は無いと言う
あるのは、
その星に罪を押し付け落とすモノに
背負いきれない様々な罪と罰を
嘆き悲しんだモノが
理不尽な願いで
綺麗に瞬く星に押し付ける所為だと・・・・・そう言う

「アーウィン?」
「・・・・・・・」

何も言わずに遠く窓の外を見詰める
悲しみを背負った星を追って
その小さな光
流れ落ちた光
とても何か
いつも見ている星と何かが違うように思えた

「アーウィン・・・・どうした?」
「何か・・・・・胸騒ぎがします・・・・」

じっと見詰め続ける僕の視線の先を兄も追う
薄明かりの先
遠く淡く光の灯る所
位置からして北の神殿

「落ちたとなれば北の神殿・・・・かな?」
「・・・・・・」
「気になるか?」

再度問われた声に躊躇いがちに頷いた
酷く胸騒ぎのする夜
落ち着かない夜空と
いつもより明るい月と星
何がとははっきりと言えないけれど




星が落ちた




それは稀な事でもない





罪を背負うモノは多く
罪を背負い切れないモノも多い


穢された星は


罪を背負わされた星は


その苦痛と痛みと悲しみに耐え切れず


毎夜落ちてくる





そんな一つの星に
何かが気になった
毎夜落ちてくる幾億の星の中の一つ
あの星に
何の罪が背負われているのか
それとも、
何も背負わないのに
気まぐれのように落とされてしまった星なのかもしれない

「気になるのなら行こうか?」
「・・・・・良いのですか?」

兄の言葉に振り返って見上げる
その表情には笑みだけを乗せられて頷く

「構わないさ、気になるのだろう?あの星が」
「・・・・・・・はい」



罪を背負った星なのか





落ちるはずの無かった星なのか



それを確かめたくて