「たくっアリスはーーーーーーー!!」

足音荒くいつもの彼らしくない様子でズカズカ歩くアルガースト
目標があって歩いているわけでもないのに、照らし合わせたように足は探し人に向かっている
理屈では言い表せができないのが残念であるが、
このアルガーストにかかると有梨須がどんなに頑張って変にナイ頭を使って隠れようが、
数分で見つけてしまえる特技を持つ

特技なのか?
神業なのか?

と思う方もいるが、実際に有梨須を見付ける事は不可能に近い
って言うか不可能だ
それなのに、アルガーストは聞き込みもせずに見つけられる
そんなアルガーストはブツブツと愚痴を垂れ流し、
しまいには

「これはもう・・・・・シュウ殿に言いつけてやる・・・・」

大人気ない発言
もの凄く大人気ない

「こっぴどく説教してもらわなければ・・・・!!」

プラス人任せだったりする
しかしこれほど効果的なものはない事も明らかで
そんなコレから先の事をブツブツ呟きながら歩いていたアルガーストだが、
徐に立ち止まり険しい表情で辺りを窺う
何かに気付いたように、腰に挿した剣に手をかけて走り出した


「くそ!」


何か嫌な予感がする
胸騒ぎのような違和感
ザワザワとする背筋と心に焦りさえ感じてしまった
こういった感覚に間違いがあったことがない
天性の才能ではなく
それは今までの自分の人生で培ってきた能力
向かう先で何かがあった
いや・・・・今まさに何かが起こっている
それは予想だにしない事


違うとあって欲しいが・・・・・・


それでも


この不安と


予感が



確実に的中している


走るスピードを速め


向かう先へと





駆け出した










あぁ・・・・・・・




えっと、

着実に

確実に

マズイかも

相当に

マズイかもしれない

ぼんやりと他人事のように考える
先ほどの黒尽くめに
何かを言われた
何を言われた理解する前に
身体に衝撃を感じる
眉を顰めて
何かが上へとせり上がってくる
ゴポっと吐き出したモノを
手の平に乗せて確かめる

それは


赤い


鮮やかな







「うぁっちゃ〜・・・・・」
『ア・・・・リス?』

ニャガでさえ身動きが取れなかった事ようだ
呆然と僕を見上げてきた
何が起こったのかいまいち理解していないような顔
その表情に、
自分の置かれた状況も忘れて


笑ってしまった


そして、
その拍子に零れ落ちた
口の端をつたう一筋の血を目にして
茫然とした表情から愕然に変え・・・・・・

漸く何かに意識がたどり着く

次には、
辺りの空気を震わすほどの
怒りを作り出す


『・・・・・・・・・・・・・・・・・』


ゆらりとニャガの黒い肢体が揺らめいた
あり得ないほどの威圧感に、
目の前の男たちがビシリと固まる
ゆらりゆらりと揺れるニャガのその肢体に
マズイと感じて、
爆発する前に大声を上げていた


「ダメっ!!」


大声を上げたことによって零れ落ちていたものが余計に血を吐き出し苦しくなる
それまで感じてなかったはずの痛み、
激痛というより鈍痛が胸を突き刺し始めた
ずくずくと何かが胸の中を這い回るような感覚
ぐっとその胸を抑えて、
現在たもっているその肢体の変化を起こらせないように首に抱きつく
黒く光沢のある艶やかな毛並みに、
赤い血が零れ落ちる

「ニャ、ガ・・・・・ダメ、やくそ・・・く、した・・・でしょ?」

言葉が上手く吐き出せない
咽に引っかかるようなそんな感覚
器官にまで溢れる血の所為
けれど、無理やりでも声にしてニャガを落ちつかせた
怒りで瞳を歪めるニャガを

『離せ・・・・・殺してやる・・・・・』
「だ、メ・・・ニャガぁ・・・・!」
『お前に・・・・お前に・・・・こんなっ・・・・・!』

隙をつかれて対処できなかった不甲斐ない自分をも罵るニャガの声
そんなことは関係ないと全身で表すようにぐっと力を強めて抱きつくと、
後から後から止まる事を知らない血が口から落ちていく
それに気付いて、ニャガがペロリと血を舐め取った

「だいじょう、ぶ・・・だから」
『・・・・そうは見えない』
「でも、だい、じょうぶ」

その言葉どおりにホントは全然、大丈夫ではない
そう思うけど、
今そんな事を言ってはニャガが爆発する


それに、


今、


誰かが来る気がするから



たぶん、



きっと・・・・






「アリス!!」







ほら、


来た



「あ、る・・・・・」

険しい表情でこの場に飛び込んできたのは、


僕を守る人