□ 罰が降る国

















話しをしようか?



楽しいとは言えないけれど



お前と私とで、


少し話をしよう






唸るように

震わせるように

いたる所から声が響く



遠く

でも近く



壁を隔ててるように
でも
耳元で囁くように




お前はこの地へ来て幸せか?



『・・・・・・幸せ?』



お前はこの地へ来て後悔を感じるか?



『後悔・・・・ってそんな事、急に言われても・・・・・』



お前は何かを守るものはあるか?



『えぇ?』



お前は何かを守るための力はあるか?



『はぁ?』



何だよ答えられないのか?
情けない奴め



『いやいやいや答えも何もたった先ほど来たばかりの俺に、
そんな後悔も幸せも守るものも力も何もどーとか分からないじゃないか、
分かるはずないじゃないか』


ん?
・・・・・・・そうか?



『そうだろうが?
取り敢えず、今は危機的状況を脱して一緒に来たと思う友人を見つけなきゃならないし、
心配だから』



ほう?
友人とな?



『そう、俺の大事な大事な友達
強いけどでも強がってるだけの脆いアイツと、
明るいけど空元気の時もある壊れたアイツを見つけなきゃ』



・・・・・・お前には分かるのか?
あの子らの心の裡を
暗い心も、



『・・・・・分かるよ、
他の誰も気づかなくても俺は分かる
だって・・・・・ずっと見ているから』




見ている?
何を?
言葉では問いかけずにか?



『言葉はいらない、寧ろ邪魔だから』




そうか・・・・お前はやはり、



『・・・・・?』



なら教えてやろう、
お前の大事な友人とやらの女神の子と天空の申し子は大事無いよ?



『何だその、女神の子だとか申し子とか・・・・
一体誰のことだよ?』



お前の友人と言う子供のことだ
そして、
望まれし者の事
その存在があればすべての均衡が保たれる



『均衡?』



そう・・・・とても大事なことだよ、この世界が在り続けるにはね?
これからも在り続けるのにも



『・・・・・・・・で、アイツらがちゃんといるってのは本当か?』



本当だ
お前には嘘などつかないさ
それにあの子らも望まれてこの地に呼ばれたのだからね、



『呼ばれて?』



そう、もとよりこの地に在る存在
お前もこの地に在る者なのだからね



『俺も?』



そう、
お前は私の子、
私の唯一愛する子、



『・・・・・・・・アンタ誰だ?』




ワタシは、




ワタシの名は










そこで、ふと意識が浮上する
ぼんやりとした視界に見える範囲では部屋が暗いということだけ

ここは一体ドコなのだろう?

そんな事が頭に浮かぶが、
見た事もない部屋と言うより暗くて判断が出来ないそこでは考えるのも面倒になってくる
むしろ霞がかった思考では長くは考えていられない
動こうとしなくても鈍い痛みが体中に広がって行き、
力も入れることもままならず起き上がることも出来ない
ただ分かるのは、
と言うよりも考えなくとも理解できるのは自分が死ななかったことだけ
それが不思議でならないけれど、
死ななかったなら幸運だ
だって首から腹にかけて切り裂かれたのに生きていることが不思議だから
むしろ有り得ないだろう
途切れる意識の前に見た光景は
一言で言うなら赤
視界一面の赤の海
痛みを超えた麻痺感と激痛を同時に味わうあの変な感覚
はっきり言って腕は身体から千切れたと思っていた
けれど視線を辿る限りあるように思う
そう思うのだ、
そのせいなのか右腕に感覚がない
利き手ではないので不自由はしないだろうが、不便になるだろうな〜そんなくだらないことを思う

ココがドコで、
何で助かったのかとか、
何で生きているのかとか、
どうしてココで寝ているのかとか
誰が助けてくれたのかとか・・・・・
何で腕が動かないだとかは考えればキリがない
だからもう一度眠って目が覚めてからにしようと沈む意識の片隅で思った


たぶんきっと
まだまだ時間はある
暗いと言うことはまだ夜が明け切らぬのだろうから
朝に目覚められなくとも起きて明るくなったら辺りを見渡して状況察知だ



そして考えよう


これからの事、
しなくてはならない事、
考えなきゃいけない事、



でも・・・・

今はただ、



もう少しだけ




眠りにつきたい