■ 結婚行進曲は始まったばかり!
シェーター大陸に一つの話題が駆け巡った
それは?
首都・デライトの国王が結婚すると言う大事件・・・・もとい、祝い事。
シェーター大陸は、今まさにお祭り騒ぎである。
このデライトも大変な騒ぎようである。
「てか、騒ぎすぎ」
呆れたように、窓から城下を見下ろすのは洲。
眉間にしわを寄せて、苛々しているようだ。
「えーーー楽しいもん良いじゃ〜ん!!」
「限度があるだろうが限度が!結婚式は一ヵ月後だぞ!?」
「そうだな〜」
洲の言葉に、テーブルに身を伏せていた有梨須が起き上がる。
その隣で、天都が頬杖をつきながら苦笑を零した。
洲の言い分も分からなくもない、と言う感じだ。
「お祭り大好きーーーー!!」
「祭りじゃないアレは!」
「えーーー!?」
「祭りって言うか・・・・・・大宴会って感じだよね?」
「酔っ払いどもめがっ・・・・・」
冷気をあたりに漂わせた洲の気迫に、有梨須がビビッて天都に近寄る。
「どったの、洲センパイ?」
「あーーーさっきココに来る前にね、酔っ払いに絡まれて襲われはぐったの」
「うっわー・・・絡んだ人お気の毒ー」
「止めに入んなかったら・・・・・・考えただけでも恐ろしいね、うん」
こそこそと小さく話し合う二人にギッと睨みつけて、黙らせた。
今日の洲は、相当不機嫌である。
ビクビクとし合う、友人と後輩を黙って見詰めているかと思ったら・・・・・次の瞬間、晴れやかな笑みが浮かんだ。
「「っ!?」」
一瞬の変わりように得体の知れない悪寒が二人に走る。
そんな事お構い無しに、
「有梨須、妻と言う職業について色々と教えてやろうか?」
「ぅえ?」
「職業・・・・・・え、妻って職業か?」
「てんは黙ってろ、俺は今から入れ知・・・・・じゃなかった、大事な話しをするんだから」
今、入れ知恵って言おうとしただろう?
そんな言葉が天都の脳に浮かんでは消えた。
「聞きたいか、有梨須?」
「・・・・・聞いとかなきゃいけない事?」
「聞いといて損はないこと」
「ふ〜〜ん・・・・じゃー聞く!」
テーブルの下で足をバタバタしながら笑う有梨須に・・・・・洲は、ドス黒い笑みを心内で零した。
可愛い可愛い有梨須、
馬鹿でアホでバーサーカーでも、
可愛くて仕方ない後輩、
そんな有梨須を掻っ攫って行ったんだ、
少しくらい俺の鬱憤を受け取ってもらっても・・・・・
良いですよね、国王陛下?
その時、
その国王陛下ことリージェイドは異様な寒気を感じ取っていた。
「で、センパイ妻は何すれば良いの!?」
「そうだなーーー・・・・基本は家事だな」
「え、舵?」
「そーそー夫の行く先を、思うがままに操っ・・・・・って、まだお前には早い」
「洲・・・・お前、ノリ突っ込みも出来るようになったんだな?」
「煩い、その舵じゃなくて家の事と書いて家事だ!」
「ほーほー」
「炊事・掃除は勿論のこと夜なべで裁縫もできなくてはな!」
それって、マジ?
って顔に書きながら天都を見やる有梨須・・・・・
カワイーとか思いながらも、曖昧に頷いて。
「マジで!?」
「大マジだ、どうだ有梨須、お前にはできるのか?」
「うぅっ・・・・!」
「出来なかったら妻になれんぞ?」
「そう言えば有梨須、後期末のテストで家庭科22点じゃなかった?」
「げっ!」
「・・・・・・初耳だぞ・・・・何だその点数?」
「天ちゃんセンパイっどっからそのネタをっ・・・・!?」
一気に笑みが凍りついた洲に慌てる有梨須。
ココに来てから相当経つが・・・・そんな今更向こうの事をほじくり返されて怒られたくはない。
部長は、お母さんもお父さんも兼ねているのだから!
「だって俺の担任が言ってたし?」
「くおーーーーーっ柴田のババァ!」
「口と行儀が悪いぞ、有梨須!」
「痛っ!」
テーブルに足を乗っけて怒りを表す有梨須の後頭部に履いていた靴を取って殴る。
殴られた拍子に椅子から転げ落ちて、ぶつけた額を押さえながら振り返った。
「危ないじゃないっすか!」
「お前は何したって死なないから、心配すんな」
「でも痛いモンは痛い!」
「はいはい、ゴメンねー痛かったねー」
「ムッカつく・・・・・!」
「まーまー」
何時ものやり取りに笑いを零しながら飛びかかろうとする有梨須を羽交い絞めにする天都。
「で、本題に戻ろうよ、ね?」
「そうだった」
「うーーーー!」
「はい、有梨須も座る。」
ひょいっと軽く抱えられて、隣に座らされた。
ちょっと不機嫌気味になってる。
「まー家庭科が22点だろうが、12点だろうが今はもう関係ない」
「12点なんて取ったことナイやい!」
「数学で10点取ったのはどこの馬鹿だ?」
「あーーやっぱ、クランチェシカちゃんが淹れてくれた紅茶は上手いだすなー」
「話を逸らすな・・・・・・ま、良い・・・・この世界に来て点数は今さらだ、だから実践だ!」
まー今更は今更だが・・・・・
実践?
そこで、一瞬にして天都の顔が珍しくも青褪めて凍りついた。
心なしか、手が震えている。
「しししししししっ洲っ!」
「てんっ何も言うな!」
「でもっ!」
「心配しなくたって被害者は一人しか出ん!」
「だっけど・・・・・!」
慌てたような天都の声が何かを物語っている。
過去に何があったのか?
それは過去に受けた被害者にしか分からない、真実だ。
「実践?・・・洲センパイ実践って?」
「例えば・・・・・部屋を掃除するとか、皿洗いをするとか風呂掃除とか、ご飯を作るとかだ」
「おーー・・・・ん〜?」
「そうだな、部屋はキレイだな・・・・・昼は終わったし、夜までには時間がありすぎる・・・・」
辺りを見渡して、
完璧に整えられた部屋は塵一つだって落ちてはいない。
そうなると?
「茶菓子くらいは作っても良いのではないか?」
「な〜る!」
「きっととてつもなく国王陛下はお喜びになるぞ?」
「ホント!?リズ喜んでくれる!?」
「喜ぶ喜ぶ、涙流して打ち震えて喜んでくれる!」
「よっしゃ〜〜〜!有梨須、いっきま〜〜〜っす!!」
「行けっ!そして楽しい結果を待ってるぞ!」
超特急で部屋を駆けて出て行った有梨須を手を振って見送った。
出てすぐは沈黙が降りている。
「って言うか・・・・・」
「何だ?」
「一国の王の妻は、家事はせんだろう普通は?」
「ま、そこに行き着かない有梨須の脳は複雑怪奇だからなー」
そんな2人の会話。
一方、
出て行った国王の婚約者、有梨須はと言うと・・・・・・厨房に来ていた。
来て、そこの人たちを困惑の表情を浮かばせていた。
「アリス、様?」
「と言うわけだからっちょ〜〜〜っと貸してくれませんですか!?」
「いえ・・・あの、構いませんですけれど・・・・」
それって、ちょっとおかしくありません?
って言う言葉は、そこにいた全員の疑問だった。
どうして、一国の后が家事をしなくてはならないのだろう?
そんな疑問で一杯であるが、その人物がしたいと言うのでは止められるわけでなかった。
「じゃーーー僕にはお構いなく皆さんは、お仕事したってくださ〜い!」
「「・・・・・はぁ・・・・・」」
気の抜けた声を返して、
喜々として何かを始めたその後姿を見守った、城の者一同である・・・・・・
これから起こる災難も知らぬままに・・・・・・
よって約2時間後。
何かを作業していた有梨須がカタン・・・・と音を立てて、手にしたものを置いた。
「・・・・できた・・・・・・できたぞーーーーー!!」
手を振りかざしてガッツポーズ!
後ろ振り返って、作業を見守ってくたお方たちに満面の笑みを向けた。
そこには一同疲れきった顔をしている。
それもそうだろう、
家事が出来ない者の作業を、プロが見ていたのだ。
気が気ではない上に、怪我でもさせてしまったら一大事である。
悲鳴を上げそこないながらも、
手は出さずに手伝った厨房の人たち。
今日一日で、1週間分の披露を味わってしまった。
「よ、宜しゅうございましたわ・・・・・」
「えぇ・・・・ホントに・・・・」
口々に言葉を返すものの、
もう疲れきって笑う余裕すら皆無だった。
「皆っありがとねー!」
頭を下げて喜ぶ我らがお后様・・・・・
何もしなければ可愛らしい人なのに。
「で、お礼ですがー良かったら食べてください!」
そんな言葉を残して、
一人分にしては大量だったのはこのためのようである。
籠に山のようにあったカップケーキ(らしきもの)を半分以上置いて有梨須はそこを去った・・・・・・
数分後、
そこを偶然通ったニトリアスは、悲鳴を上げたのはまた別の話し。
るんたった〜るんたった〜〜〜
と、軽いステップで廊下を歩く有梨須、
「楽しそうね?」
「うっおリリカちゅわ〜〜〜〜ん!」
「久し振り」
「ホントだよーどこさ行ってたの!?」
「ちょっとね」
窓枠にちょこんと座った美少女が、にっこりと有梨須に笑いかけていた。
赤い瞳の死神こと、リリカである。
お約束のように手には黒い猫の人形が抱かれている。
「もーニャガも急にいなくなっちゃうしさー」
「呼ばれていたのよ、面倒でも行かなきゃね」
「そっか〜もう良いの?」
「えぇ・・・・・ニリニャシガルもそろそろ戻ってくるわよ」
「やった〜!」
ニリニャシガル(ちなみにコレも少し短くした名前だ)とは、有梨須曰くニャガの事である。
噛みそうだ!
と言う理由で、リリカ同様の考えだした愛称だ。
「ところで・・・・何を持ってるの?」
有梨須の手にしたものを覗き込みながら、そう問うと
洲に言われたことを教えてあげながら、手のモノを説明した。
一気に呆気に取られるリリカ、
目はまん丸だ。
「アリス・・・・・それって・・・・」
「・・・・・・ん?」
「明らかに変だろうが」
「あ!」
その声と共に現れた長身の男。
その隣には黒い狼がいた。
「ニャガーーーーー!!っと、ついでにクルクルじゃ〜ん!」
「・・・・どう言ってもその呼び名・・・止ねーんだな・・・・」
「もちよ!」
全身真っ黒い出で立ちで、髪だけが明るいブラウンの男。
クルクルと有梨須に名づけられて、眉間にしわをよせる。
「しかもよ・・・・お前のその手にしてるモン、すっげー嫌な感じする」
「何だとー!」
「見た目・・・・・そうでもないんだけどね・・・・」
リリカも同じように頷いた。
視線は有梨須の手元。
「食べてもいないくせに言いかがりだ!!」
「悪魔の感は当たるんだぞ?」
「外れかもしんないだろー!」
「いや、今回は100%予感は当たる、な?」
「・・・・・・」
リリカは曖昧に肩をすくめるが、ニャガはふるっと尻尾を振っただけだった。
「うーー!何だよ!そんなに言うなら食え!このヤロー!」
怒った有梨須は、ニャガの口にそのカップケーキを放り込んでその場を駆けて逃げ出した。
振り返ることなく走る背中に、
少女と男の何かしらの声を聞いたが知らぬまま角を曲がったのだった・・・・
そして、
その後ニャガはまたもずいぶんと姿を消したのは言う間でもない。
そんなこんなで、
やっとたどり着いた有梨須はと言うと・・・・・・
「と言うわけなんだよーーヒドイよね!?」
「・・・・そ、そうだな・・・・・」
リズの膝の上にいた。
今までの経緯を聞いたリージェイドは何をどう返して良いのやら・・・と言った面持ち。
嬉しいやら、何やらで苦笑しか浮かばない。
「私のためなのだろ?」
「もっちろんだよー!」
だったら一番最初に其れを口にしたかったな、そんな言葉を飲み込んで有梨須の髪を撫でる。
何もかも自分のためと言われたら嬉しいではないか。
「な〜んにも、出来ないからねー」
「そんな事はないよ」
「えーーー?あーー!」
「ん?」
「じゃ〜さ〜『アナタお帰りなさい、今日も疲れたでしょ?お風呂にする?ご飯にする?それとも、ア・タ・シ?』って聞いてあげようか?」
是非!
何て言葉が一瞬、出かかったが気力で飲み込んだ。
「あとはー・・・・・ん〜そう言えば『裸エプロンは男の浪漫だ!』って誰かが言ってたけど、誰だっけ?」
まさしく!
なんて言葉も、気力以上の根性で飲み込んだ。
多少咽ったが・・・・・
「大丈夫リズ?」
「大丈夫だ・・・・」
これからだって、いくらでもやってもらえるのだから!
焦るな俺!
そう言い聞かせて・・・・
「そんじゃまーどうぞ、おあがんなさい!」
「はい、いただきます」
予備知識のないリージェイド、
躊躇いもせずに、有梨須の手からカップケーキを頂いた。
頂いて租借した瞬間、
気が遠のいた。
「どうよ!?」
その声に、死の淵から勢いよく浮上。
それでも、動機息切れ眩暈は激しい・・・・・!!
「どっ・・・・・どうって・・・・・」
「美味しい?」
マズイとは言えない。
自分のために作ってくれた物に、そんなことは言えない!
しかも、可愛い有梨須の可愛い笑顔つきだ。
「・・・・・・・・・」
「リズ?」
「・・・・・・・う、」
「う?」
嘔吐感を必死に堪えながら、
「う、まい・・・・・・かな?」
「・・・・かな?」
「いや、うん・・・・・」
「・・・・??」
マズイとも言えなければ、上手いとも言えない。
「アリス・・・・・」
「何?」
「アリスは私の后になるんだ、よな?」
「そうだよ・・・・ね?」
「そうだ。それでだ、一国のこのデライトの后になるのなら家事なんてしなくて良いんだよ?」
微妙に話題をズラす男、リージェイド。
「・・・・・・・・・・・そうなの!?」
「そう、激しく、そう」
激しくそうって何だ自分?
心で突っ込みながら、遠のきそうな意識の中で笑う。
「そう言えば、そうかーそうだよね!?」
「そう、だから、もうしなくて良いよ?アリスは楽しく遊んでれば良いから、ね?」
暗にそれだけしていてくれ!!と、言わんばかりの強い口調。
楽しいこと大好きー
遊ぶの大好きー
な有梨須からしたら、嬉しいお申し出。
「分かったーーーー!!!」
「よか・・・・・た・・・・・」
そこで、リージェイド
一気に気絶してしまったとさ。
「有梨須の作ったもん食って普通でいられた奴って、俺見たことないしな」
「何で、あの材料で劇物作れるだろうな?」
「「不思議だ」」
そんな、2人の会話。
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55555Hit リクエストありがとーーーございました!!
『Alicesで、結婚前に洲によって余計な入れ知恵をされた有梨須のはた迷惑な出来事で、何やかんやでも幸せな』
と言うことでしたが・・・・・何か・・・・何か違う気がしませんか!?
凄い、勘違いした話しの気が!?
しかも無駄に長いし!!
すすすすっすっすスイマセン秋様!!
こんなんですが、宜しいですか!?
え、やっぱダメ!?
うん、私もそー思う・・・・・・本気、ゴメンなさない。
幸せなのか、リズ!?
それでも幸せを感じられるんかリズーーーー!!
ですよね・・・・
こんな、何かおかしいような気がするモノですが、受け取ってくれましたら幸いです・・・・
叩き返しても宜しいので・・・・!!
では、ありがとうございました!