■ D.Gray-man  クロス(師匠)×アレン



含み笑い




貴方が、
そう笑ったなら



僕は、
なすすべもなく降参しかない










「アレン、」
「は、何ですか師匠?」


ある晴れた穏やかな日
一日しなくてはならない仕事を漸く終えて、
一息ついたところで
赤い人が煙草を燻らせながら僕の名前を口にする

今日は珍しく
どこへも行かないなと思ったら
これほど邪魔なものはないと言う感じで
窓際に座って煙草を燻らすだけ

一体何がしたいのか、
何を考えているのか、
彼曰くのダメな弟子である僕では理解ができない

「暇だ、」
「・・・・・・・・・はぁ」

そうですか、
だからなんですか?
そう胡乱な視線で問えば師匠はこちらを見ようともしないで

「どうにかしろ、」

そんな事を言ってフーーーと煙を吐き出す
その時だけは此方を向いて、

「っ・・・・・げほっ」

思わず吸い込めば
苦い味が口の中に入り込んで煙を充満させてしまった
むせれば空気で師匠が笑ったのが分かる、

ホントっ
何がしたいんだよ!!

「態度がなってねーぞ、バカ弟子」
「げっほ・・・・だったら、それなりに尊敬できる態度とったらどうですかっ」

理不尽な物言いに思わず噛み付くと
深くなる嘲笑

マジ、
むかつく

「はっ・・・・くだらねー」
「・・・・・はいはい、」

一笑で僕の言葉を吹き消して
もう一度、
煙を吹きかけられるが今度こそ息を止めて阻止した
煙に沁みる目線で理不尽な塊を見上げれば
赤い瞳が僕を見下ろしていた

「だから、」
「・・・・・・」
「暇なんだよ、バカ弟子」
「それで・・・・僕に何を求めているんですか、」

結局、
先ほどの言葉に戻ってそう言われれば
そう返すことしかできない

貴方曰く
バカ弟子に何を求めているんですかね、

胡乱な視線を新たに作り直して見上げれば
赤い瞳を眇めて
馬鹿にしたような表情の口元が
ニヤリと歪む
ヤバイ、
そう思ったのも遅く
答えたのを後悔してもその言葉を吸い取ることなんて皆無で
心の中で自分を罵りながら次の言葉を待ったのだった、



*****






それから、
師匠の言った『暇だ』の暇の解決法はと言うと、

「僕の勝ちです、」

ぱたりと見せる手持ちのカード、
師匠のうち捨てられたカードはワンペアと言う話しにもならない組み合わせ
僕はと言うとストレート

「・・・・・」
「コレは頂きます、」

じゃらりとテーブルにあるコインを手前に引き寄せる
そう、
僕が考え抜いて出た『暇つぶし』の解消法は
賭けポーカーだった

「・・・・腕を磨いたようだな、」
「おかげさまで、生活費を稼がなくちゃいけませんからねー」
「ほーーご苦労なこった」
「えーご苦労をかけられていますよ、誰かさんの所為で」

カードを引き寄せてシャッフルする、
かしっかしっと、
言う音を立ててカードが混ざり
僕の目の前に5枚
師匠の目の前に5枚

「それはそれはヒデー奴だな」
「そう思います?僕も常日頃からそう思っていますよ」

口に咥えた煙草をそのままに笑う師匠に、
完成された僕の営業スマイル

あははは
何を白を切ってるか知りませんけど?
誰のことって、
貴方以外いるわけないじゃないですかー
この穀潰しがっ(怒)

「良いイカサマっぷりだな、」
「そうですか?そうでもないですよ?」
「この俺が5連敗だ」
「そんなー手加減なんて必要ないんですよ?」

爽やかに黒く笑ってそう言い返せば、
さすが師匠と言うべきか、
されど師匠と言うべきか、
返ってきた言葉が

「俺はそんなイカサマなんてしなくともさっきの10連勝は実力だ」
「・・・・・」
「だからガキにはこの程度で十分だ」

はっ
そりゃーよーござんした!!
顔は笑って、
心で歯軋りをする
それがポーカーだってモンでしょう?
顔に出しちゃいけないんですよ

「アレン、」
「何ですか、師匠」

カードを手にしようとした瞬間、
またも名を呼ばれる
視線をフと上げて見上げれば
いつものように何を考えているか分からない師匠の赤い瞳が僕を見詰めていた
その瞳を見詰め返すと

「今度は金じゃないものを賭けるぞ、」
「ついに文無しですか?」

そう思いながら手持ちのカードに視線を滑らせる
奇跡的にイカサマなしでの素晴らしいカード
スペードのフラッシュだ
このまま勝負に出ても良い感じ

「いや、腐るほどある」
「・・・・じゃー腐らせる前に生活費に回してください」
「俺の金はそんなことに使われるのを望んじゃいない」
「・・・・・・はいはい、」

相変わらずの物言いに、
もーそんな言葉しか返せない

「で、何を賭けようと言うのですか?」
「そうだな、」

師匠も手元のカードに目を走らせる
するりと動いた赤い瞳を見詰めれば
そのままに、

「一つの命令」
「・・・・・命令?」
「そうだ、」

カードを並び替えているのか、
位置が動いている
その指先を今度は見詰めて問い返せば

「相手に好きなことを望む」
「・・・・・何でも、ってことですよね?」
「そうだ、必ずその命令には絶対に服従だ」
「例えば師匠にその有り金全部よこせって言ったら?」

そう聞けば、
またもニヤリと歪む口の端

「勿論、お前が勝ったならばその要求は飲む」
「男に二言は?」
「ない」
「・・・・・・、」
「勿論、そう言うってことはお前も」
「ありません」

その話しノった!
いくらあるか分からないが師匠の隠し財産があれば僕が苦労して働かなくても良い!?
借金に追われることもナイ!?
心痛むイカサマポーカーさえもしなくていい!?

「次はソレにしましょう」
「言ったな、」
「はい」

深まる歪みに一抹の不安がなかった訳ではない、
しかし目の前のそれに目が眩んだのは言うまでもナイ

「師匠、交換は?」
「そうだな・・・・・2枚、」

裏返しで捨てられたカード
新たに師匠の手元に戻る2枚のカード

「それじゃー」
「はい、」

揃ったらしい師匠のカード
その言葉にゴクリとつばを飲み込む

「お前の望みは俺の隠し財産でいいな」
「勿論です、それ以外にありえません」

金です、
今は咽から手が出るほど金が欲しいのです
日々の生活に潤いを!!

「後悔はないな、」
「・・・・ありま、せん」

その言葉に改めて師匠の顔を見上げる
そこに、あるのは
今までにない・・・・・
意味ありげな含み笑い

「し、しょう?」
「お前が承諾したんだ、もー後戻りは出来ないぜ・・・・アレン」
「っ」

その言葉にある特殊な意味合いを乗せた師匠の言葉
むしろ僕の身体がビクついたのは、
その声にあった

「カードは飽きた」
「・・・・・・」
「次は俺はお前で暇を潰す」

かたりと音を立てて席を立つ師匠
蛇に睨まれた蛙の如く、
その動きを動かない体の精一杯の力を使って視線で追う
隣に立った
するりと指から下ろされた5枚のカード

「・・・・良いカードだな・・・だが、」
「・・・・・・うそ、だ」

ぱらりと落ちる師匠のカード
そこにあったのは、

「エースの・・・・」

4カード
驚愕の眼差しでそのカードを見詰める
そんな俺の顎を掬い上向かされる

「俺の勝ちだ」



そんな言葉と共に、
噛み付くようなキスが襲い掛かる




もー2度と師匠とカードなんてするもんか!!!




固く心に誓った



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ひっさしぶりに書いた師アレです!!
師アレですよっ奥さん!!←誰?
宅のアレンは微妙に黒い子ですよ奥さん!!←だから誰よ

シチュって言うかもー設定と言うか、
師匠と弟子ってのが素敵っ
明らかに身長差もあることですしっ
年の差もありそうだしっ
いいよなー・・・・
好きさー
でも、マイナー・・・・ですよねー(泣)

いいもんねー
好きだモンねー!!