おまえの物はおれの物、おれの物もおれの物。











「・・・・今日は何なんですか、」

繁華街の眠らない街を歩きながら、
目の前の足取り軽い男に声をかける
止まりも、
振り返りもせずに

「今日は潰れる日だって」

そう言えば、
ついに時間ほど前にも同じ質問をして同じ答えが返ってきている
その質問をしたそのまた二時間前にも同じ質問と同じ答え
ようは先ほどから同じことをしてをいるのだ

「潰れる日って・・・・」
「そう、潰れる日、言い方変えればメイジを潰す日」
「・・・・・」

俺を潰す日?
また変なこと言い出したよこの人は
掴み所とかの問題に
掴むところあんのか、この人
颯爽と前を歩く黒いコートの背中をため息混じりに見詰める

「おっしゃー次だー」
「はいはい、」

一言言っておくがそろそろ潰れそうなんですよね、
実はね
だって最初の一件目で菅がその場に捨てられたんだよねあと他数名
んで二件目では斉藤さんが降参ポーズをしたんだよね・・・珍しく
普段なら変わらない顔の色を赤くして
でも赤いはずの顔を今度は青くさせて口元に手をやって

『後は頼む・・・・・』

目線でそう語ってきた
どうしたんだろう斉藤さん・・・・
普段ならこの程度の二件目じゃ絶対に潰れないはずなのに
だからこの人のお供が俺だけだ
護衛もなしに街を練り歩くってどうなんだろうかと思うのだけれど
良いのかもしれないのか?
斉藤さんが見送ったぐらいだし?
どうせこの当たり【西園】のシマだし?
って言うか本家のあの方の息がかかった場所らしいし?
下手に何もないだろうと踏んでのことだと思う
じゃなきゃ俺だけって有り得ないモンねー

「次どこ入ろうか〜?」
「・・・・どこでもいいですよ、」
「だよね、強い酒あればどこだって良いよねー」
「・・・・・・」

強い酒じゃなくても良いですけどね、
むしろ強い酒がない所がいいんですけどね
アンタ一件目でウィスキーのボトル殆どロックで一本空けたじゃん・・・・!
つーか二件目ではウォッカを瓶飲みしてたじゃん・・・・!!

「軽くで、」
「ダメ、今日は潰す日」
「・・・・・」

でしたねー
今日は俺が潰れないといけないんでしたねー
きっとアルコール臭いであろう息で大きくため息を吐いた
ところで、

「あ、いい所思い出した」
「・・・・どこですか?」
「絶対中立の店」

なんじゃそりゃ?
思わず眉間に皺を寄せれば
ようやっとくるりとこちらに顔を見せた西園
その顔は普段となんら変わりはしない
見た目全然だ
全然アルコールんあんて飲んでませんって言う素面の顔
化けんもんだ・・・・

「そこでは、俺の名前なんて関係なんだよ」
「・・・・アンタの名前?」
「そう【西園】の肩書きなんてその店じゃ意味がない」

【西園】の肩書き抜かしたアンタはただの傍若無人しか残らないと思うのは俺だけだろうか?
いや誰でもそう思うな、
しかしそんな店ってどんな店だ?

「見た目も中身も普通の静かなバー」
「それが?」
「そこのマスターがウチの本家の組長のお兄様」
「・・・・・・」

そう言ってにやりと笑う
それって・・・・それって・・・・!

「怖いぞーー怒らさない限りは一切穏やかだけど、怒らせたなら・・・・」
「・・・・なら?」
「生きていても、そこにその自分が存在していても、存在を消されちゃうんだよね」
「・・・・・・」

ま、怒らせなかったらOK
そんな事を軽く笑っていった
それって笑って済ませられる!?

「はい、着いたーココです」
「・・・・・っえ」

するりとビルの地下へ降りていく階段の前でその下を指差す西園
仄かな明るさをともす看板には、

【蓮 - REN -】

と言う文字
ホントに一見にしたら落ち着いたモダンなイメージ
でも、
その話しを聞いちゃったなら何だか下に降りたくても足が進まないっ
それを感じ取って西園が腕を引いた
地下の店にしては深く降りていくと思うくらい階段を下りた
外の喧騒も届かなくなったところで
重厚な木の扉があらわれる
それをやけに軽く引いて

「こんばんわ、」
「・・・・お、久しぶりだな裄」
「お久し振りです、慶介さん」

中へ入ると落ち着いたジャズが邪魔せず響いている
薄暗くなる一歩手前に絞られた照明
入って右側にバーカウンター
こんな地下にしては結構広い
左側にはどこぞのクラブを思わせるような座席があった

「どこ座っていいですか?」
「どこでもどうぞ・・・・の前に、それ紹介しろよ」

辺りを見渡していると、
そんな声がしてまたも西園に腕を引かれて声の主の前に連れて行かれた
決して低くはないこの俺でも見上げる位置にある顔は、
落ち着いた大人のそれはもうイイオトコ
西園とも斉藤とも、
ましてやあの久保田さんとも違う種類の美形

「・・・・・・・・・」

なんつーか、
見てるだけなのにゾクゾクするっ
長めの髪が邪魔にならないように縛られていて
襟足にかかる神が少し跳ねていて白いシャツにかかっている
緩く浮かべられていた笑みのままに俺を見据えた

「聞いたぜ、一般人引っ張りこんだってな」
「誰ですかリークしたの」
「一人しかいねーだろ?」
「・・・・ですね、」

その黒い瞳が横に逸れて西園に向いたかと思うと
人の悪い笑みへと変わる
それを向けられた本人は軽く肩をすくめた

「で?」
「あーーーメイジ、」
「え?」

急に話しを振られて慌てて意識を取り戻せば
軽く腕を突かれる
え!?

「この人がここのマスターで、蓮水慶介さん」
「あ、桂木明治です」
「ヨロシク、明治」

コップを拭いていた手を差し出されて
握り返せば
軽く握られたはずなのに指先が手の甲を滑る

「っ」

びくっとしてし目の前の男の顔を見上げる
性質の悪い笑みでもって俺を見ていた
手を引こうにも軽く握られているはずなのに引けず目を見開けば
今度は後ろから身体ごと引っ張られた

「クセ、相変わらずですね」
「それが男だろ?」
「貴方も久保田さんも性質がすぎます」
「あれと一緒にするな、俺のほうがまだ可愛いだろが」
「どっちもどっちですね、」

苦虫を噛み潰したような顔と声でそう言うと
俺の背を押してカウンターから離れた

「スプリングバンクのボトル持って来てください」
「何年?」
「100プルーフ」
「はいはい」

聞かない銘柄に眉を寄せて
押されるがままに奥まった場所の黒いソファーに押し込まれた
つい立やら観葉植物やらが置かれて
それなりに隠れ家的ぽい
座り心地の良いそれに背を預けて一息ついた

「何頼んだんですか?」
「スコッチ」
「度数高そうですね・・・・」
「40?」

40度!?と驚けば
すっと目の前にそれが置かれて

「57℃です」
「だっけ?」
「はい」

慶介さんとと言う名の人ではない違う男がボトルや氷などを応えながら置いていくと
頭を下げて行った

「そんなの飲むんですか・・・・」
「美味いよ」
「美味いかもしれないですけど・・・・俺、けっこうキてます」
「じゃーコレ飲んだらクルね」

そんな嬉しそうに言わないで下さいよ
想像通りキますよ
きっとって言うか絶対
差し出されたロックの薄い琥珀色

「・・・・」

一口飲んで
確かに美味いとは思いました・・・・
が、咽にもろキていますっ
横を見れば
くっと飲み干して次にいっている男がいる

「・・・・・死んだな、俺」
「ん?」
「いえ、何でも・・・・」

ないです、
と心で答えてヤケをおこして同じく飲み干した
咽を焼く感覚
胸が燃える感覚
それを越す脳の酩酊感
それから先の意識は霞の中なのは言うまでもないだろう





気づけば同じボトルが目の前に2本空になって立っている
その隣には半分まで減った同じボトルよりはラベルの色が違う
手に持ったショットグラスが重いのか軽いのか
それが水なのか酒なのか、
馬鹿になった味覚と感覚の中
からりと揺らす

「潰れたメイジ?」

確信を得ているような、
分かっていて聞いてる声
同じのを同じ量だけむしろそれ以上に飲んでいるのに
隣の男の声も見た目もなんら同じ
飲む前と変わっていない

「言ってるじゃないか・・・・もう、けっこうキてるって」
「そうだっけ?」

するりと顎を指で掬われて
抵抗も何もなしに顔を上げる
目の前にはオレンジ色の照明にきらきら光る瞳が俺を見詰めている
その瞳を見詰め返して

「アンタの声が窓越しっぽい」
「んーキてるね、」

キてるって先ほどから言ってる
充分に潰れてるといってもいい
動きたくもナイ
考えたくもナイ
何もしたくナイ

「はは・・・・メイジの瞳がセックスしてる時の瞳みたいだ」
「・・・・・は?」
「すっげー濡れてる」

べろりとその眼球を水分を吸い取るように掬われて
驚いて目を閉じるように動かすも
緩慢な動きしかできない
閉じる前にもう舐め終わっていた

「舐めんな」
「しょっぱいねー・・・・やっぱ、酒の味すんのかと思った」

するわけナイ
あるはずナイ
いやこんだけ飲んだら有りそうだけど

「でも、」
「・・・・・・ぅん」
「口の中は俺と同じだ」

掬ったまま置かれた指先が顎を引いて
その口の中に大きくベロリと眼球を舐めた時のようにぐるりと動いた
そのときわざと掠めるように俺の弱い部分を舌先でなぞる

「っ」
「でもメイジの味も少し混じってるから・・・・甘い?」
「ン・・・・甘い、ワケ・・・な、」
「じゃー美味しい」

頭狂ってる
そう言おうとしたらぐっと咽奥まで舌が差し込まれて
息をつめる、
中を舐めつすくような動きに力の入らない身体が弛緩する
顎に唾液が零れた頃にようやく西園は離れた

「メイジはさ」
「っは・・・・・は、?」

指先で顎の雫を掬われて、
その指がまた濡れた俺の唇をなぞり
その動きに誘われるように自分も目の前の濡れた唇に指を伸ばす
自分のか西園か分からないほどの濡れたそれを指でなぞっていると
舌先がその指を舐める

「少し・・・・脇目見すぎ、」
「・・・・・そう、か・・・っ」

舐めていたかと思うと言葉を発して動いてズレた指が西園の口へと滑り、
くちっと吸われる
少し歯を立てられたところでまた舌先が指や爪などを撫でた

「さっきのもそうだし・・・・久保田さんにも構われすぎ」
「・・・・あれは、」

俺の所為じゃないんじゃ・・・・?と思うも
後に言葉は続かナイ
西園の舌先は指だけじゃ飽き足らず
その付け根までたどり着く

「あの人の周りにいる人間にもそうだ」
「・・・・・・」
「その身体に触れられすぎだ」

緩く手首を掴んで指の付け根をなぞりながら吸い舐めて歯を立てる
もう一歩の手は俺の足に爪を立てたり
その爪で足の付け根を撫でたりしながら動いている

「っ・・・・・あ、」
「この身体は・・・・さ、」
「あ・・・・ぅ」

卑猥にうごめく手に霞がかった思考はその快感を追っていく
ココがどこでどういった場所か忘れ去ってしまうほどに
握られた腕を反対に引いてその身体を近くに寄せる

「俺のモノだろ・・・・?」
「・・・・・っく、」

膝の上に乗りあがった西園の身体
よった首筋に鼻筋を摺り寄せて噛み付く

「っ・・・・・ねぇメイジ・・・・、」
「・・・・な、に」

噛み付いて・・・そして舐めて
その髪に隠れた耳朶に舌先伸ばす

「お前の身体はお前のモノ・・・・で、あって」
「・・・・ん、?」

ビクッと揺れた身体をよりいっそう引き寄せて身体を密着させて
同じくして耳に息を吹き込まれるように西園が囁く

「俺のモノだから・・・・覚えていろよ、」

ぐっと密着させていた身体を引き離されて
そのかわりによった顔
喋るだけで唇が微かに触れる距離で

深く揺れた瞳が俺を貫いた




++++++++++++++++++++++++++++++++++

こう言う攻受もヨロシクないですかね!?
と書いてて思いました・・・・!
攻めてるはずなのに感じさせられてると言うか!?
攻められているはずなのに攻めっぽくさせてるとか!?ねっっ

・・・・・ダメ?
ですよねー・・・・・・・スイマセン・・・・・!!
ウィスキーの銘柄を調べてしまった・・・・
調べていて飲んでみたいと思いました、はい



ではっ