■ はちみつベイベ













甘いマシュマロみたいな白い肌
ハチミツを溶かしたような飴色の髪
砂糖を溶かした甘ったるい紅茶色の瞳
苺みたいな赤い唇




君を形容詞する言葉はみな、食べ物に関係して
それらは甘い甘い味のする食べ物
君は甘い香りがして
舐めたら砂糖で出来てるみたいに甘そうで




その白い肌にキスを許される日はいつだろうか?

その赤い唇にキスを許される日はいつだろうか?

飴色の髪に指を絡ませられる日はいつだろうか?

その瞳に僕だけが映る日はいつの日だろうか?







「スイマセン・・・・・吐き気をもようしてしまったのでトイレに行って来ていいですか?」

規則正しく挙手をして意見を述べようとする黒田。
異様に目が据わっている。

「先生が許しても回りが許してくれません。」
「無差別殺人覚悟でこの教室を出たい!!」
「落ちつけ黒田・・・・・もう少しの辛抱だよ。」
「辛抱ならん!!」

制服の下に隠れた肌を掻き毟りながら席を立とうとする黒田の腕を掴んでムリヤリ座らせる久坂と久保田。
その横では三嶋が白目を剥いてドコか遠ぉぉい世界へ羽ばたいてしまったようである。
いくら揺すっても意識が戻ってこない。

ことの始まりは、久坂の『一条の好きな人ってハチでしょ?ハチのドコが良いわけ?』って聞いて、
三嶋が『お前が思ってる事を気が済むまで吐き出せい!』な〜〜んて言ってくれたものだから、近頃発覚した一条の性格【ムッツリ・危険・暴走】が大爆裂した。
鳥肌モノの発言がコレでもか!!と、何時もの無口はドコへやらと言った感じで喋り続けたのがついさっき。
三嶋が遠い世界へ飛んだわけを、黒田がヒステリックになったのも全て一条の発言のお陰である。

「ま・・・・・・人の恋心なんて、十人十色なわけですから・・・・・」
「そうだよな・・・・お前はストーカーだもんな?」
「久保ちゃん限定だけどね!!」
「限定してるからストーカーって言うんだ馬鹿。」

力一杯得意満面で言う久坂に頭を抱える被害者の久保田。
そんな5人の輪に話題沸騰中の蜂屋和希が近寄って来た・・・・・自分がどう思われているかなんて知らずに。

「あれ〜皆、帰んないで何やってんの??」
「「我慢大会。」」

ハモる久保田と黒田の一条以外の全員の心の声。
それに首を傾げる蜂屋。

「ふ〜〜ん・・・・・で、何を我慢んしてんの?」
「どれだけ、鳥肌を立てても席を立ってはいけない我慢。」
「心に沸いた殺人鬼の血を表に出さないかの我慢。」
「危うく黒スケは表に出る所でしたがね。」
「俺も修行が足りなかった・・・・」
「こんな事に修行してもどーにもなんないけどね。」

的確な久保田の突っ込み。
ちなみに三嶋は痙攣を起こしかけている・・・・・ちょっと別の意味で遠い世界へ行きかけている。

「三嶋たん!帰ってきて!!」
「・・・ビクっ・・・・ビクッ・・・・・!!」
「でも楽しんでるんだね〜」
「どこをどう見てそう思えるんだ和希・・・・??」
「え〜〜だって一条スゴイ楽しそうなんだもん。」
「「「・・・・・・・・・は?ドコが??」」」

蜂屋の言葉に一斉に一条の表情を見つめる・・・・
が、ドコもいつもと変わる事のない無表情さである。

「えぇ?見て分かんない?目が笑ってるよ?」
「久保ちゃん・・・・分かる?」
「全っ然!」
「和希・・・・ついに目がイカレたか?」
「イカレてないよ!それは巳咲の目でしょう?」
「・・・・良い度胸だ・・・・・」

蜂屋の失礼発言に、指を鳴らして立ち上がる黒田。
しかし、次の瞬間には凍ることになる。

「・・・・・俺は蜂屋にイカレてるよ・・・・・(ボソ)」
「え?何?何か言った一条?」

怖いもの知らずに聞き返す蜂屋。
他の3人は耳を塞いだ。

「俺は蜂屋が可愛くてイカレそうって言ったんだ。」
「えぇ!俺!?まさかそんな全然っ可愛くないって!!」
「いや・・・・可愛い・・・・凄く。」
「一条の目も巳咲並みにイカレちゃったんじゃないの??」

微妙に失礼発言。間違ってはいないが・・・・・
人を比較にされて怒りたいのは山々な黒田だが、今耳に突っ込んだ指を外したら絶対に死ねる自身があった。

「イカレてんの目じゃないよ。」
「え、どこ?」
「・・・・・蜂屋が可愛すぎて下半し―――」
「ぎゃーーーーーーーー三嶋たーーーーん(汗)!!!」

一条の危険発言の語尾と久坂の叫び声が重なった。
二人の世界に入る寸前だった一条と蜂屋が見たものは・・・・・・泡を吹き始めて虫の息の三嶋。
危篤どころか魂が抜けかけてる。

「ぎゃーーーー!!救急車〜〜〜!!」
「とっとりあえず伊塚先生のトコ行こうっ!!」
「保健室〜〜〜!!」
「三嶋しっかりしろ〜〜〜〜!!」
「死ぬな三嶋ーーーーー!!」
「・・・・・・つ・・・つ・・・積荷を燃やして・・・・・・・」
「「ナウ●カーーーーーーー!!?」」
「違うっナ●シカは言わないからそのセリフ!!」

微妙に大混乱を巻き起こしている4人はドタバタと教室を出て行った。
いきなり静かになる教室。

「何だったんだろうね・・・・今の?」
「さぁな・・・・・」
「三嶋・・・大丈夫かな?」
「問題ないんじゃないか、伊塚先生のトコ行けば・・・・」
「そうだよね。」

開けっ放しのドアを見続けている蜂屋に手を伸ばす。
細い飴色の髪を指に絡ませながら梳いた。

「ん、何?」
「・・・・俺の髪質とは違うなと思って・・・・・」
「あぁ一条の髪って黒くて硬いもんね〜」
「・・・・蜂屋の髪って綺麗だな、柔らかくて。」
「そう?でもこの髪質ってまとまり悪くって邪魔になるし、色薄いと結構言われたりするんだよ、今は言われなくなったけど。」

するすると零れていく髪を追って首筋にも指を這わす。
くすぐったさに首を竦めて笑った。

「白いな・・・・」
「焼けにくい肌なんだ。」
「触っても・・・・良いか?」
「何言ってんの、もう触ってるじゃん?」
「違くて・・・・・」

そう言葉を切ると、おもむろに立ち上がって蜂屋に覆いかぶさるように見下ろした。
きょとんとした顔で、見上げる。
まったく危機感を持っていない蜂屋に心うちで苦笑を零し、けれどそのチャンスを逃す筈も無く・・・・・

「一条?」
「触れて良いか、蜂屋?」
「・・・・・どうしたの?」
「蜂屋・・・・・答えて、触れても良いか?」
「・・・・・・・・」

首筋に這わされていた指が顎へと滑り頬を包まれる。
親指が唇を撫でる。

「蜂屋・・・・・・」

何時もの無表情さの顔に、薄っすらと柔らかい笑みが浮かぶ。
その笑みが鼻が触れ合うほど近づいた。
呼ばれる自分の名前で息が唇に触れる。
何も言えずに、蜂屋はジッとその顔を見上げた。

「・・・・・・・」

どうしてだか分からぬまま、蜂屋は本能でゆっくりと目を閉じていく。
一条の唇が触れる寸前・・・・・・

「じゅ〜〜〜〜〜〜んた〜〜〜〜〜ん!!」
「か〜〜〜え〜〜〜〜ろ〜〜〜〜〜〜!!」


飛び込むようにして、大江と真館が駆け込んで来た。

「「・・・・・・・・・・・」」

その触れ合う寸前の位置で目だけを二人に向ける一条と蜂屋。
固まったのはデバガメされた二人ではなく、デバガメしてしまった二人。

「・・・・・・・・・・・・・あ〜〜・・・・っと・・・・・あの・・・・・(汗)」
「えっと・・・・・ウチの潤たん見ませんでしでしでし・・・・たか??」
「・・・・・・・」
「三嶋なら保健室に運ばれてったよ。」
「え?」
「・・・・・すいませんした〜〜〜〜〜〜〜(焦)!!」

処理能力がパンクして動けずにいた真館を抱え保健室に運ばれた幼馴染の事情をすばやく察知して大江がドアを勢いよく閉めて出て行った。
またもや静かになる教室。
先ほどの雰囲気はかき消されていた。

「皆、元気だね〜?」
「・・・・・そうだな・・・・・」
「帰ろっか?」
「・・・・・・あぁ・・・・・」

ちょっと落胆気味の一条。
ノロノロと立ち上がって、一足先にドアを開けて廊下にいた蜂屋に近づく。

「あ!ねぇ一条、さっきのだけどね。」
「?」
「別に良いよ?承諾しなくても。」
「・・・・・・・」

ソレだけを言うと、『先に言ってるね』と言葉を残してタタッと駆け出して行く。
残された一条は言われた言葉を飲み込めず、
その場に立ち止まる・・・・・・・数秒後にはニヤリと口元を歪めて教室を出て行った。





その白い肌にキスを許される日はいつだろうか?

その赤い唇にキスを許される日はいつだろうか?

飴色の髪に指を絡ませられる日はいつだろうか?

その瞳に僕だけが映る日はいつの日だろうか?




君に触れられる日は近いのかもしれない。




ちなみに、
この手の話しを一条に振るのは控えよう!!と、心に固く誓う被害者たちだった・・・・・・






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【一条×蜂屋】です。
ハナコ様、リクエストありがとうございます(礼)!!
ご希望に応えられたかがとてつもなく疑問ですが!宜しかったら受け取ってください!投げ返しても可です(焦)
何か当初のキャラと別人になりつつある一条君です・・・・・ムッツリどころか・・・・・危ない人!?って感じです。
もしかしたら久坂以上になっちゃったり・・・・!?
主役の座が危ないぞ久坂(は?)!!
では読んでくださってありがとうございます。
宜しければ感想なんぞ貰えましたらなななんて・・・・・(ごにょごにょ)
ハナコ様は煮るなり焼くなり痛めつける(?)なり好きにしてやってください★